気の向くままに junne

不本意な時代の流れに迎合せず、
都合に合わせて阿らない生き方を善しとし
その様な人生を追及しています

4月29日(‘76) 再び会って

2023年05月13日 | 日記・エッセイ・コラム
昨日午前中の早い時間に泉屋に着いた。午前中に石垣へ渡り、昨日連絡を取っておいた牧野京子に会う。去年八重山を涙を呑んで去る時、ノリ子と共に「おとひめ丸」に乗る私を見送りに来てくれた、アルバトロス四人娘の一人である。少々太り気味で肌はトースト色。どちらかと言うと美形ではない(ゴメンネ)けれど、人間的にはとても可愛い、純情な娘だ。そして宮平観光ホテルでアルバイトをしている、やはり元アルバトロス四人娘の有田貴代美に会いに二人で行った。
暫くして二人と別れた後、偶然平田と会い、石垣一周(西廻り)のドライブに出掛けた。僅か七ヵ月余りしか経っていないせいか実感が湧かなかったが、石垣島最北端の平野で足を止めた時は、
『やっぱり石垣に来てるんだなぁ』
と感じた。
美崎町。今夜は新婚の平田の家に泊まる事となった。私にとっては今夜何処に泊まろうと別にどうでもいい事であった。それよりもそれ迄の時間の使い方、過ごし方が問題であった。
「ちょっと寄る所が有るから」
と言って暫く別行動をする事にした。『寄る所』とは言わずと知れたWoman Pianist、山城キヨコの部屋である。しかし、実は迷っていた。会いに行って良いものやら、止めたほうが良いのやら…。でも、結局は会いに行ってしまつた。
思い出のドアの前に立つ。瞬間、そこで或る思いが過った。未だここに棲んでいるのだろうか…。不安な思い。それでも、そんな思いを払拭する様に私は自分の気持ちを優先させた。そしてチャイムを鳴らして出て来た顔は、紛れもなく思い出の人。私を見た瞬間のキヨコの驚きはちょっと言葉では表現出来ない程だった。意外なる訪問者に心が動揺したのであろう。ほんの少しの間ではあるけれど、言葉を失っていた様である。
促されるままに私は部屋の中に入った。思い出の部屋の中は何も変るところはなかった。キヨコも変らず、ただ変ったのは移り行く時間のみであった。そうは思っても、現実には何かが変っている筈であった。しかし、二人共それを確認する勇気が無った様である。私達が思い出の影を重ねて夢を見ている間、時間は止まるどころか一年前へと旅立っていた。

私は何かぎこちない幸福感を抱いたままキヨコの部屋を出て来た。そして今夜の宿となるべく平田家に行くと、泡盛が私を待っていた。久し振りの再会の為に用意をしてくれていたのだった。その有難い行為の泡盛を飲みながら私は思惟してみた。明日一日で今の齢は終る。そんな時期にどうしてわざわざキヨコを訪ねて行ったのだろう。同じ石垣市内に居るとはいえ…。もしかしたら、思い出に呼び寄せられたのか…?!  いやいや、まさかネェ…〈生きた霊〉でもあるまいし。私はしっかりと会って話しをしていたのだから…。久し振りに島で飲む泡盛のせいかな?!


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