ボストン美術館展 芸術×力
2022年7月23日〜10月2日
東京都美術館
当初は2020年に東京・福岡・神戸の3会場で開催予定であったが、中止となった本展。
2022年に復活。
復活した同展の展示内容は、2020年予定とほぼ同じとのことであるが、開催地が東京1会場のみとなってしまい、非常に複雑な気持ち。
【本展の章立て】
1 姿を見せる、力を示す
2 聖なる世界
3 宮廷のくらし
4 貢ぐ、与える
5 たしなむ、はぐくむ
全56点の出品。制作地別で見ると。
・エジプト 2
・西洋 23(絵画9、工芸14)
・インド 4
・中国 7
・朝鮮 1
・日本 19(絵画9、仏像1、工芸9)
図録が2種類販売。
中止となった「2020年版」が、2,500円。当時の価格のまま。
2020年と2022年では、出品作1点の差替えありとのことで、「2020年版」には、2022年との差分を示す別冊を付けているようだ。
2022年用の「ハードカバー完全版」が、2,800円。2020年版を当時の価格で捌くために、2022年版の価格設定をしたが、それでは2022年版の価格の納得感がないので、ハードカバーにして、ちょっとした付録資料をつけた、という感じか。
レジでどちらか指定してくださいとのこと。
*差替えで非出品となったのは次の作品と思われる。
西洋絵画の出品は、9点。
ヴァン・ダイク
《メアリー王女、チャールズ1世の娘》
1637年頃、132.1×106.3cm
当時のメアリー王女は6歳。
6歳にしては、表情が既に成人女性。
ニッコロ・ディ・ブオナッコルソ
《玉座の聖母子と聖司教、洗礼者聖ヨハネ、四天使》
1380年頃、46.3×31.7cm
14世紀後半のシエナ派画家による、小サイズ、おそらく個人礼拝用の祭壇画。
ルカス・クラーナハ(父)
《十字架にかけられた二人の盗人のいるキリスト哀悼》
1515年、38.1×26.7cm
状態が悪いためなのか、素朴な画風に見えるが、描き分けていたのだろうか。これも小サイズでおそらく個人礼拝用の祭壇画。
エル・グレコ
《祈る聖ドミニクス》
1605年頃、104.7×82.9cm
かつてドガが所有していたという本作。
宗教画の出品が、小サイズの個人礼拝用が中心だとは。
ジャン=レオン・ジェローム
《灰色の枢機卿》
1873年、68.6×101cm
17世紀前半のフランス。
ルイ13世の宰相を務めたリシュリューの大邸宅。
リシュリューの腹心として大きな力をもつカプチン会修道士フランソワ・ルクレール・デュ・トレンブリー(1577-1638)が大階段を下りる。貴族たちが頭を下げる。
彼が「灰色の枢機卿(レミナンス・グリーズ)」と呼ばれたことから、この語は後に「影の参謀」や「黒幕」を意味するものとなったとのこと。
ジョン・シンガー・サージェント
《1902年8月のエドワード7世の戴冠式にて国家の剣を持つ、第6代ロンドンデリー侯爵チャールズ・スチュアートと従者を務めるW・C・ボーモンド》
1904年、287×195.6cm
戴冠式の2年後の制作。式典を記録した水彩画を参考にしながら、正装のスチュワート(1852-1915)に大剣を持たせ、アトリエで描かれたという。
アルブレヒト・デューラー
《マクシミリアン1世の凱旋車》
1518-22年、木版8枚組、45×228.1cm
横1列の8枚組の作品、画像は左端2枚を掲載。
カナレット
《サン・ジョルジョ・マッジョーレ聖堂、サン・マルコ沖から望む》
1726-30年頃、46.3×63.2cm
リヒテンシュタイン公爵が画家から直接取得したともされる作品。
小サイズで、定番シーン。
割愛したもう1点はナポレオンの肖像画。
個々の作品は相応に面白く見るのだが、まさかこの9点で展覧会を成立させるなんて・・・。
他の地域・分野(西洋の工芸品、日本、中国、エジプト、インド)の作品については感度がないが、西洋絵画限りでいうと、残念。
本展の名称に、「至宝」とか「名品」とか「珠玉」とか「巨匠」とか「傑作」とか出さなかったのは、自主規制なのだろうか。
私にとっての本展は、2012年以来10年ぶりの来日となる二大絵巻《平治物語絵巻 三条殿夜討巻》&《吉備大臣入唐絵巻》を見るための展覧会である。