外商投資企業とは、中国の法律に基づいて中国国内において設立する中国投資者及び外国投資者の共同出資企業、又は外資系独資企業を指します。具体的には以下の通りです。
(1) 中外合資経営企業:企業が有限責任会社の形で設立され、合弁事業とも呼ばれます。
(2) 中外合作経営企業:各投資者が合作契約によって権利や義務を定める企業であり、数が少ないです。
(3) 外資系独資企業:100%外商出資であり、即ちWFOE(Wholly Foreign Owned Enterprise)です。
(4) 外資パートナーシップ企業:外国企業・個人及び中国企業・経済組織が中国国内において設立するパートナーシップ企業です(設立に制限がある)。
実際に、中外合資経営企業及び外資パートナーシップ企業のほうが多いです。
中国の税金は国家税務総局、税関総署などの税務管轄官庁に管理・徴収されます。具体的には以下の通りです。
(1) 国家税務総局が管理・徴収する税金は、増値税、消費税、車両購入税、企業所得税、個人所得税、資源税、都市土地使用税、耕地占用税、土地増値税、房産税、車船税、印花税、契税、城市維持建設税、環境保護税及び煙草葉税(合計16つの税金)です。
(2) 税関総署が管理・徴収する税金は、関税、船舶トン税及び輸出入に係る増値税や消費税の徴収代行です。
本稿は、以下の税金について説明します。
(1) 所得税:企業所得税(個人所得税が個人のみを課税対象とするため、本稿にその内容が含まれない)
(2) 流通税:増値税、消費税
(3) その他税金:車船税、印花税、房産税、契税
- 企業所得税
1.1 課税対象
企業所得とは、企業の生産・経営による所得、その他所得及び清算所得を指します。所得を計算する際に、会計及び税務の違いを考えなければなりません。例えば、免税項目及び控除項目(例えば、接待交際費、広告費・宣伝費、従業員福利費など)の限度額などを確認する必要があります。
1.2 納税義務者の区分
企業所得税の納税義務者は居住者企業及び非居住者企業に分けられています。具体的には以下の通りです。
(1) 居住者企業とは、中国の法律に基づいて中国国内で設立され、又は外国・地域の法律に基づいて設立され、実際の管理機構が中国国内にある企業を指します。
(2) 非居住者企業とは、外国・地域の法律に基づいて設立され、実際の管理機関が中国国内になく、中国国内で機構、場所を設置し、又は中国国内で機構、場所を設置しておらず、中国国内源泉所得がある企業を指します。
1.3 課税年度
中国の課税年度は暦年制であり、即ち西暦1月1日から12月31日までです。企業は1課税年度の途中で開業し、又は合併もしくは閉鎖などによって経営をやめるため、当課税年度の実際の運営期間が12か月未満の場合、実際の運営期間を1課税年度とします。企業は清算をする際、清算事業年度を1課税年度とします。
1.4 税率
(1) 居住者企業
現行の所得税率は25%です。居住者企業に係る企業所得税優遇措置は以下の通りです(それらに限らず)。
(i) 要件に該当する高新技術企業(ハイテク企業)及び技術先進型サービス企業には15%の企業所得税率が適用されます。
(ii) 2021年12月31日まで、要件に該当する小型微利企業には異なる企業所得税優遇措置が適用されます(未だに新たな優遇措置が発行されていません)。
(iii) 特定の分野又は地域における居住者企業は免税期間が申請できます。
(2) 非居住者企業
(i) 中国国内で機構、場所を設置しており、且つその所得が当該機構、場所に関わる非居住者企業には25%の企業所得税率が適用されます。
(ii) 中国国内で機構、場所を設置しておらず、又は中国国内で機構、場所を設置していますが、その所得が当該機構、場所に関わらない非居住者企業には20%の企業所得税率が適用されます。但し、実際に税率10%の企業所得税が徴収されます。
1.5 営業損失
中国における企業は、ある課税年度で営業損失によって発生した欠損金を翌課税年度に繰り越すことができます。翌課税年度の所得が補填できない場合、以後の課税年度に繰り越すことができますが、最大繰越年数は5年です。一部の特定の企業は最大繰越年数が10年まで延長され、2020年新型コロナウイルスによって悪影響を受ける一部分野における企業は最大繰越年数が5~8年まで延長されます。
- 増値税
増値税は中国国内における販売及び輸入に対して課税します。具体的な項目は以下の通りです。
(1) 物品の販売及び輸入:物品の所有権を移転し、代価や報酬を受けること。
(2) 役務の提供:加工、修理修復などの役務を提供すること。
(3) サービスの提供:交通運輸サービス、郵政サービス、電信サービス、建築サービス、金融サービス、現代サービス、生活サービスなどを提供すること。
増値税の納税義務者は一般納税者及び小規模納税者に分けられています。一般納税者には各項目によって異なる税率(13%、9%又は6%)が適用されます。小規模納税者には3%の徴収率に適用されます。また、一部の特定の項目には5%の徴収率が適用されます。
- 消費税
中国において、課税品目である消費物品の生産、販売、輸入を行う場合、消費税の納付が必要です。課税品目には、煙草、酒類、高級化粧品、美容美髮製品、高価なアクセサリー及び宝石・真珠、爆竹、花火、既製油、自動車、オートバイ、ゴルフボール及びゴルフ用品、高級腕時計、ヨット、使い捨て箸、木製床板、電池、塗料が含まれています。消費税は比例税率又は定額税率によって徴収されます。例えば、オートバイは比例税率により課税され、既製油は単位重量の定額税率により課税され、紙巻タバコや白酒は比率税率及び定額税率の両方により課税されます。
- その他税金
4.1 車船税
外商投資企業は保有している車両及び船舶に車船税を納付する必要があります。
4.2 印花税(印紙税)
印花税とは、売買契約書、加工請負契約書、建築・据付工事請負契約書、建設工事実地調査・設計契約書、財産賃貸契約書、貨物運輸契約書、貸借契約書、財産保険契約書、技術契約書、財産所有権移転契約書、営業帳簿及び権利書・許可証を作成又は受領する時に課される税金です。印花税の最低税率は0.005%であり、最高税率は0.1%であり、又は1件ごとに5元によって徴収されます。
4.3 房産税
房産税(不動産税)は建物を課税対象とし、当該建物の標準残価又は賃料収入により、当該建物の所有権者に対して課税される財産税です。具体的な税率は以下の通りです。
(1) 建物の標準残価によって課税される場合、建物の原始取得価格から当該価格の10%~30%(比率が各省、自治区、直轄市政府に決定される)を控除した金額に基づいて課税されます。1.2%の税率で年税額を算出します。
(2) 賃料収入によって課税される場合、建物の賃貸収入によって計算され、即ち賃貸収入の12%が課税されます。
4.4 契税
契税(不動産取得税)は土地・建物の所有権移転を課税対象として、当該土地・建物の所有権の移転先に対して課税される財産税です。現行の契税税率は3%~5%です。課税対象について、具体的には以下の通りです。
(1) 国有土地使用権の譲渡
(2) 土地使用権の譲渡(譲渡とは、土地の使用者が売却、贈与又は交換によって当該土地の所有権をその他の単位や個人に移転する行為という。但し、農村集団土地請負経営権の移転が含まれない)
(3) 建物の売買
(4) 建物の贈与
(5) 建物の交換
- 非居住者企業の税務
現行の中国税法により、非居住者企業が取得する中国国内源泉所得の配当金や利子などの権益性投資収入、利息、賃借料、特許権使用料(ロイヤルティー)所得、財産譲渡所得及びその他所得に係る企業所得税に源泉徴収を行い、且つ関係の法律法規又は契約により、非居住者企業に納税代行の義務がある単位又は個人を源泉徴収税の納税義務者とします。
具体的な源泉徴収税率について、当該非居住者企業の本国が中国と二重課税回避規定を締結するか否かを確認する必要があります。二重課税回避規定を締結した場合、当該規定に定められる課税項目及び税率をご参考にしてください。