2013.12.18(水)
東京にもいよいよ初雪なのか。
多摩地区は明朝、雪景色かな。
■「歩いても 歩いても」
昨夜、BSで観た、是枝監督の「歩いても 歩いても」。
http://www.aruitemo.com/top.html
いつもせわしなく過ぎていく私の時間が、不可思議なほどにゆるやかに流れて、ああ、こういう日がたしかにあったなと思い出させてくれた。
人間は結局、辛辣で勝手で、他者には無理解で・・・、でもどこかにいとおしさを隠しもっている。
人を差別して冷たい言葉を吐く父親(原田芳雄)も、じつはもう開業医としても力を失い、隣家の老女の緊急時に動くことはできずに、「すまないね」と頭を下げる。不快な思いでこの父親を見ていたけれど、このシーンはせつない。人はこうやって、人生を下っていくのか、と思わせる。
両親の期待を一身に背負った長男は、15年前に少年を海で救ったことで命を落としているのだけれど、その少年は成長しても毎年命日にはこの家を訪れる。
そして、順調に歩んでいるようには見えない彼の姿を見て、「もう解放してやったらどう?」ということを提案する次男(阿部寛)に反論する母(樹木希林)の言葉は、わが子を失った母の決して終わることのない闇を映し出す。それも、理屈ではない感情の存在に光をあてている。
家族がかかえる問題には解決などという逃げ道はないんだと思う。
優しい映画だけれど、裏の裏を見せて、甘くはない関係性を描いていく。
間に合わないことばかりなんだと次男は言う。ああ、そうなんだと私も思う。
ハッピーエンドは物語の中にだけあって、現実はいつも「間に合わない」ことばかりだ。両親の墓参りに来た次男一家には、二人目の子どもが誕生していた。次男の血を継いだ娘を両親は見ることができたんだろうか。
そして、次男は車で来ている。長い階段をのぼって長男の墓参りをしたとき?、母は言っていたっけ、「子どもの車に乗るのが夢」と。
きっと、そういうことなんだろう。「歩いても 歩いても」間に合わないことばかり。それを何年も何十年も繰り返して、家族の歴史が紡がれていく。
最後には理解し合えたとか、こだわりがなくなったとか、そういうことをできる親子なんて、皆無か、ほんの一握り。それが真実であり、だからこそ、親子はおもしろいし、ドラマになる。
見送る子どもが齢を重ねて、「ああ、今なら親父の言ってたことがわかる」とか、「やっぱり私は母のことは理解できない」とか、そういうふうに思いめぐらせることで、きっと親と子はつながっていくんだろう。
私には、素朴な、とか抒情的な・・・というより、辛口で辛辣で、でもこんな私にも避難路を用意してくれた、優しい映画だったな。
HPに書かれた、是枝さんのお母さんへの思いは、適度な湿り気があって、こういう感じがこの人の作り出すものに貫かれているのかもしれないと思った。
「刑事のまなざし」の最終回。
http://www.tbs.co.jp/keijinomanazashi/
重い終わり方だったけれど、このドラマも(「ダンダリン」と同様に)主人公を取り巻く人々のそれぞれの過去や思いがちゃんと生きていて、それが物語をおもしろくさせていました。
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