kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

インターステラー

2014年11月24日 | ★★★★★
日時:11月22日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版変形800円。テキスト情報満載。

遠くない未来。砂嵐が吹き荒れ、農作物が大打撃を受け、政府機構が機能しなくなった世界で、元テストパイロットが人類が移住できそうな新しい惑星を探す。

【以下ネタばれあり】

今のご時勢、ハビタブルゾーンにある系外惑星を探すといっても太陽系を出るまでに寿命が尽きてしまうし、ワープ航法も科学的に限界がある。それをワームホール理論で一気にケリをつけてしまう。

解体されたと思われていたNASAがひそかにワームホールを見つけ、その先に系外惑星の存在を確認、すでに複数回、秘密ミッションをこなし、会議室の壁が動くと隣りにロケット製造基地があるって、「スペクターかっ!」ってツッコミのひとつも入れそうになるが、そんな声は全く受け付ける余地がないくらい、元々、重いトーンのクリストファー・ノーラン監督だけあって、ものすごくいい感じでストーリーが進む。

高次知的存在からのメッセージ、ワームホールの存在、マシュー・マコノヒーの登場、父親と娘の交流といえば、どうしてもゼメキス監督の「コスモス」を思い起こさずにはいられないし、過去の宇宙ものの数々を傑作も想起してしまうのは、止む得ないところか。

ワームホールをくぐる瞬間やハンス・ジマーの音楽は「2001年宇宙の旅」のようだし、宇宙船クルーを支えるロボット(?)のシンプルすぎるデザインは60年代~70年代映画や「サイレント・ランニング」を思い出させる。

近いところでは「ゼロ・グラビティ」が優れた映画だったが、本作も別の視点で優れた宇宙映画で、特に物理的な空間だけでなく、時間においても取り残されてしまうという孤独感はかなり怖い。ブラックホールによる浦島効果を正面から映画にしてしまうなんてなあ。ちなみに「ゼロ・グラビティ」は地球の周回軌道の話だったので上映時間も短かったが、系外惑星まで旅をすると上映時間も倍近くになる。(←ちょっと違う)

映像の完成度もさることながら、映画の醸し出す雰囲気がパラレルワールドに存在する地球を実感させてくれる。これこそ映画のマジック。

宇宙飛行士の一人がマット・デイモンなのだが、メイクのせいか何度も見直すくらい、顔立ちがちょっと違う。エンドクレジットにもちゃんとクレジットされているが、パブリシティには一切、名前が出ない。

ところで、ディストピアもの「トゥモロー・ワールド」でこれからも映画に出ると思ったマイケル・ケインだが、80歳になってもまだまだ現役。きっと10年後でも映画に出続けていることだろう。







題名:インターステラー
原題:INTERSTELLAR
監督:クリストファー・ノーラン
出演:マシュー・マコノヒー、アン・ハサウェイ、ジェシカ・チャスティン
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パシフィック・リム

2013年08月20日 | ★★★★★
日時:8月13日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版800円。イェーガー4体の見開きページに、時代設定史、そしてイェーガーとKAIJUの充実した解説!この手の映画パンフはこうでなくっちゃ。

今年の夏休みの映画はゼロ戦、怪獣、巨大ロボット、ゾンビ、宇宙船とまるで二昔前のようで大忙し。

数ヶ月前から行きつけの美容院でもずっと話題だった本作「パシフィック・リム」、開幕5分でKAIJUこと怪獣襲来、サンフランシスコ壊滅、10分後にはパンツァー・イェーガー・・・もといイェーガーが登場。何て早い展開なんだ。(まあ、本編も全世界規模で14ヶ月でイェーガー開発というスピード感)

後は予告編どおり、巨大ロボットと巨大怪獣の殺し合い。がっぷりと取っ組み合い、ボカボカと殴り合い、ベキベキと引きちぎりあう。この感覚、ワタシたちの世代で言うとゲッターロボ。とはいえ、恐竜帝国よりKAIJUの方が何百倍も強く、イェーガーも結構コテンパン。クリムゾン・タイフーンやチェルノ・アルファ、もっと活躍せえ!

デル・トロ監督の演出は、当然、ツボを得たもので、「トランスフォーマー」のように「スピードが速すぎて何が起きているか分からない」なんてことはない。押さえどころが巧みすぎて、何度も大笑いと涙してしまう。思いっきりベタな「エルボォォオ・ロケットォォォ」なんて最高じゃないか!

戦争映画の延長としてのリアルな怪獣映画、「タランチュラの襲撃」「アリゲーター」「ガメラ2」「グエムル」なんかが好きなワタシはイェーガーだけでなく、現用兵器を併用して戦って欲しかったところ。もちろん、現用兵器はヤラレキャラでKAIJUのパワーバロメーターなんだけど。

パイロット側はテッパンのキャラで、菊池凛子はなぜかたどたどしい日本語。日本人キャラは必ずああいったしゃべりでなくてはいけないのか?サブキャラは一味違う変なヤツばっかし。イェーガーとKAIJUの戦いが派手すぎて、フツーのキャラクターじゃあ間が持たなかったのだろう。ロン・パールマン自身、KAIJUみたいなものだし。

パンフで知ったのだけど、KAIJUにはクトゥルー神話がベースにあるらしい。しかし、日本人的には怪獣とクトゥルー神話って合わないよな。神話なら「ヘルボーイ」や「プロメテウス」のようなおどろおどろしさが欲しかったところ。(「ヘルボーイ」のナチネタなんて、言うまでもなく大好き。)

ところで、初期型の日本製イェーガー、コヨーテ・タンゴだが、きっと「来ようよ、丹後」が語源に違いない。世界の丹後モデル。(笑)







題名:パシフィック・リム
原題:THE LONE RANGER
監督:ギレルモ・デル・トロ
出演:チャーリー・ハナム、イドリス・エルバ、菊地凛子
コメント (2)
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ローンレンジャー

2013年08月04日 | ★★★★★
日時:8月4日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版700円。
その他:ウチの小僧と一緒。

パイレーツ・オブ・カリビアン」で三角決闘や「人間には2種類ある。」の名セリフを盛り込み、「ランゴ」でそのセンスを炸裂させたマカロニ野郎、ゴア・ヴァービンスキー監督の西部劇!となれば、いやがうえにも期待が高まろうというもの。予告編からして「続・夕陽のガンマン」ばりに橋を吹き飛ばしていたし。(笑)

パンフレットに掲載された監督インタビューでも「サム・ペキンパーやセルジオ・レオーネの映画が大好きだった。」と公言していたが、結果としてローンレンジャーの仮面をかぶりながら、実は一大バイオレンス・ウェスタン!の本作。いいのか、ディズニー!

【以下、ネタばれだらけ】

オープニングからして、駅で待ち受けるガンマンという「ウエスタン」スタイル。というか、大陸横断鉄道建設が背景にあるように、ストーリーはレオーネの「ウエスタン」のまんま。ハンス・ジマーの音楽も節々に「ウエスタン」のフレーズが使われている。

列車の中で歌われる賛美歌は「Shall We Gather at the River」。「ワイルドバンチ」の開幕で歌われたあの曲ですな。って、西部劇であの曲が流れるだけで、不穏な空気。血の臭いがプンプンします。

悪党のガンマンはL.Q.ジョーンズを思わせるメイクのウィリアム・フィクトナー。囚人となった彼を強盗団が奪取するのだが、この列車と馬のチェイスシーンが実に素晴らしい!!馬から次々と列車に飛び乗るスタントに地を這うようなカメラとクレーンカメラによる映像と特殊効果を組み合わせて、本当に西部劇が好きでないと生み出せない見事な映像となっている。このオープニングシークエンスだけで、しっかりと楽しめてしまう。

悪役のトム・ウィルキンソンは南北戦争で男性機能を失っており、ハンディキャップの反動として鉄道建設に邁進するあたり、これまた「ウエスタン」のモートンがだぶるし、ウィリアム・フィクトナーは人肉喰いの嗜好があって、「デッドマン」を彷彿とさせる。

他にもマカロニ名物の首だし地中埋めや三者にらみ合いのメキシカンスタンドオフ、「Why not」や「帰ってきたガンマン」の英語タイトルである「RIVER RUNS RED」がセリフに使われたり、一瞬だけどスネーク・インレイド・グリップが出てきたり、ヘレナ・ボナム・カーターは象牙の義足にショットガン仕込みだったり(予想に反して、彼女の活躍度合いは低い。)、もうどこかで見たようなシーンのオンパレード。

もちろん、ガトリングガンも登場、コマンチ族相手に猛威を奮い、刃向かう輩を皆殺しぃぃぃぃ!!(←いいのか?)

クライマックスは実走する列車2台による大チェイス。ウイリアム・テル序曲をガンガンに奏でながら、アクロバティックなアクション、マカロニ自慢の無尽蔵弾倉に列車越しの銃撃戦、そして橋の大爆破!!西部劇ならではのカッコよさに泣きそうになってしまった。

これまでの大成功を元に、人も金も技術もかかった見どころ満載の西部劇を作るなんてなんてイイ監督なんだ。ゴア・ヴァービンスキー!!

マカロニウエスタン好きとしては文句なしの面白さなんだが、気になるのはその死体の多さとそれに伴う映画のバランスの悪さ。ドンくさいローンレンジャーと復讐に燃えるトントのコメディタッチの冒険譚がメインかと思っていただけに、情無用の殺戮に感情の切り替えが大変だ。(何しろ、「ワイルドバンチ」のラストばりに皆殺しにあったレンジャーの死体を1人ずつ見せる。)ホント、ディズニー映画最高の殺人数じゃないか?広報担当の悩ましさが目に浮かぶよう。

「続・ローンレンジャー/夕陽の決斗」?もちろん、いいよ、ゴア・ヴァービンスキーならね!

ところで、復讐のため・・・もとい復習のため「ウエスタン」と「ワイルドバンチ」を観ようと思ったら、両作品ともDVDを持っていないことに気付いた。何かいつもCATVで流れているから、結局買いそびれていたよ。







題名:ローンレンジャー
原題:THE LONE RANGER
監督:ゴア・ヴァービンスキー
出演:ジョニー・デップ、アーミー・ハマー、トム・ウィルキンソン、ウィリアム・フィクトナー
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七人の特命隊

2013年06月27日 | ★★★★★
マカロニ映画界と東京12チャンネルを代表する名監督、エンツォ・G・カステラッリ(監督の仕事ぶりと外見に敬意を表し、以下「親方」)。その親方の6本目のマカロニ・ウエスタンで、以前からソフト化の噂はあったが、ついにDVDで登場だ。

南北戦争中、ならず者のリーダー、クライド(チャック・コナーズ)は南軍から北軍の軍資金強奪を依頼される。ナイフ投げや殺し屋、怪力男、爆破のプロなど定番のメンバーを率いて任務に向かうクライドだが、胡散臭い南軍の情報将校リンチ大尉が同行することになる。そして、クライド自身も「任務終了後は全員殺して一人で戻れ」という密命を受けていた。

監督として30年以上のキャリアを持つ親方としては初期の作品だが、色々な面で親方らしさの萌芽をすでに見ることができる。

親方映画の一番の持ち味は、「主人公の宿命や皮肉な運命」ではないかと考えている。これは他のマカロニ映画人と一線を画している部分である。親方と一緒によく引き合いに出されるのがセルジオ・コルブッチだが、コルブッチ・マカロニの主人公を突き動かすのは「人間の業」である。コルブッチ映画の主人公は執念や欲望に翻弄されるにの対し、親方の映画の主人公には高潔な人間が多い。

おそらく、脚本家のティト・カルピの影響も大きいかと思われるが、実際、親方の映画で高く評価されてる「ケオマ」や「地獄のバスターズ」「空爆大作戦」「砂漠の戦士/黒いライオン」など主人公には戦う意思が無いにも関わらず、宿命か人生の巡り合わせか、時として命の恩人とまで殺しあわねばならない局面に追いやられてしまう。

本作の主人公は高潔さとは程遠そうだが、「全員殺して一人で戻れ」という命令を受けること自体、自らの発意ではないわけだから、「宿命」型の一バリエーションと言えるかも知れない。(とは言っても、その命令に深い意味はなさそうだし、クライドも命令の遂行に何の葛藤もないのだが。)

親方の映画作りの特徴の1つは凝った画づくりである。中でも得意技の1つがマットペインティングだ。被写体とカメラの間に設置したガラス板に背景画を描く手法で、オープニングの背景に連なる山々は見たとおりの「手描き」だ。「オニオン流れ者」でも油田はマットペインティングだったし、親方のビハインドシーンのスナップではガラス板の後ろで笑顔満面の親方が映っているものもある。

劇中、主戦場となる要塞も崖の上にマットペインティングで描かれているのだが、水をわざわざ崖の上まで運ばなくてはならない陣地など、給水を押さえられたら機能しなくなるので、実際の戦争ではほとんどありえない。史実にこだわることにこだわったレオーネや戦争経験のあるソリーマなどなら、おそらくあんな現実味の乏しい要塞など設定しなかったのではないか。(史実を無視するといった点では、第二次大戦中、ダンケルクの撤退にドイツ軍のスパイが紛れ込み、英国本土への潜入を図るという「空爆大作戦」の設定など特筆すべき素晴らしさだ。)

ところが、親方は何か凝ったことがやりたい監督なのだ。要塞はセットとして実在するものだが、その外観をあえてマットペインティングで崖の上に描かないと気が済まないのだ。きっと。

肉体派のアクションも親方の得意技である。本人がボクシングで鳴らしていたこともあり、マッチョなアクションとアクロバティックなスタントが大好きである。ジェンマのスタントがサーカス的であるのに対し、親方のスタントは全部力づくだ。銃を捨ててまで、殴り合い、取っ組み合いをしなければならない。後期の作品では、銃撃戦を含めたアクションシーンを(グダグダと)描くことばかりに腐心して、肝心のストーリーが全然展開しない作品もあるが、そういった傾向はすでに要塞での攻防戦に垣間見える。

親方のインタビューによれば、この映画の撮影時チャック・コナーズは腎臓に病気を抱えており、長時間の激しいアクションに耐えられなかったが、優秀なスタンドインのおかげで撮影できたのだという。確かに殴り合いのロングショットなどでは、明らかにチャック・コナーズと体型が違う。

床下から上階の敵を撃つ「垂直方向の銃撃戦」((C)クラレンス)も親方定番のアクションだが、本作でも鐘楼を巡るシーンで展開されている。このスタイルも「何か凝ったシーンを作りたい」という親方の信念ゆえだろうし、また親方自身が建築学科出ということで、立体的な構図が構成されるのだろう。

映画ごとに何か凝った仕掛けを盛り込みたいという姿勢があるからこそ、親方の映画は絶えず新鮮なのであり、1アイディアで光らせるというマカロニ映画の真髄が輝いているのだ。そして、その積み重ねの成果として「ビッグバイオレンス」の自動車大横転のような名場面が生み出されるのだと思う。「金はかけなくても、技術的に難しいことでなくても、とにかく何か凝った仕掛けことがしたい。」という親方のスタンスが作品に表れるこそ、ますます親方の映画が好きになるのだ。







題名:七人の特命隊
原題:AMMAZZALI TUTTI E TORNA SOLO
監督:エンツォ・G・カステラッリ
出演:チャック・コナーズ、フランク・ウォルフ
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