kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ

2024年06月30日 | 年間ベスト3
日時:6月30日
映画館:イオンシネマ西風新都

「ダメオッサンの心の旅路と再生」を一貫して描くアレクサンダー・ペイン。彼の作品はほとんど観ているのだが、その最新作が本作「ホールドオーバーズ」。

まずオープニング、ユニバーサルピクチャーズのロゴが流れるが、これが70年代~80年代に使われていたもの。続いて、レイティングの画面になるが、これも同時期の画像で、さらに製作会社のロゴも70年代風。
これでこの映画が70年代を描いたものだろうと一目でわかる。「アルゴ」でも使われた手法だが、その後のオープニングタイトルも70年代風でなかなか懐かしい。

舞台はアメリカの寄宿学校、バートン校。主人公はここの歴史教師ハナムで、その堅物な姿勢と高学歴なイヤミな物言いで生徒のみならず校長や同僚教師からも煙たがられている。演じるのはペイン作品でも一番大好きな「サイドウェイ」でも主役だったポール・ジアマッティ。ハマリ役すぎて一分の隙もない。

クリスマスを含めた2週間の年末休暇にほとんどの学生は自宅やバカンス先に帰るが、家庭の事情ほかで数名の学生が寄宿学校に残ることになっており、ハナムは若干懲戒的意味合いも込めて、学校に残った学生の監督教員を命じられる。
校内施設のほとんどが休止する中、食事係として残るのは料理長の黒人女性メアリー。彼女の息子も同校出身だったが、先日ベトナムで戦死したばかりだった。
ハナムは休暇中でも規則正しい生活と勉学、運動を学生たちに強い、学生たちはギスギスしてくるのだが、そのうち、ひとりの学生アンガスを除き、全員休暇に出ることになる。
アンガスは頭のいい学生だが、その反抗的な態度と人付き合いの下手から退学寸前となっていた。
ハナム、アンガス、メアリー3人の共同休暇生活が始まるが、それぞれに人生に深い悩みを抱えていて、徐々にそのことがお互いに分かってくる。

とまあ、王道のペイン映画のような展開。それぞれの生きづらさを他人との交流を通して少しずつ前向きになっていく。もちろん、その過程で何かしらの代償を払わなくてはならない悲しさもペイン映画なところ。

なのだが、実は本作の脚本はこれまでの作品とは違い、ペイン監督本人ではなく、デビッド・ヘミングソンの手になるもの。
確かに主人公のハナムだけでなく、アンガスやメアリーといった助演の物語の深さも印象的だ。

メアリーを演じたダヴァイン・ジョイ・ランドルフはオスカーを受賞したし、若き日のベンディクト・カンバーバッチを思わせるアンガス役の新人ドミニク・セッサも忘れられないインパクトを残す。

他にハナムに好意を寄せる女性を演じるのはキャリー・プレストン。笑顔が印象的で「グッドワイフ」「グッドファイト」で演じた個性的な弁護士エルズベス・タシオリを主人公にしたスピンオフシリーズ「エルズベス」が早く日本でも観られるようになってほしいところ。

脚本がペインでないとは言え、途中からロードムービーとなったり、酒に対するこだわりがあったり、先の読めなくて泣き笑いな展開があったりとペインっぽさがいたるところにみられる。主人公ハナムも「サイドウェイ」の主人公の20年後の姿にも見える。

70年代雰囲気の再現も良くて、懐かしい良作映画を観ているような気分にさせられる。もっとも70年代にこの映画があったら、もっと不幸なオチになっているような気もするが(笑)

どの登場人物も受け入れがたいところはあるが、随所随所で感情移入できて、身近で愛おしく感じる。

ということで
評価は★★★★★。
歴史好きな方、特に古代史好きはぜひご覧あれ。






題名:ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ
原題:Holdovers
監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ドミニク・セッサ

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