kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

アイアンマン2

2010年06月14日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:6月13日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版600円。最近、パンフレットがデフレ化していると思っているのはワタシだけか?

実は前作も観ているのだが、日記には書きそびれてしまった。で、意外と早い続編。

続編のお決まりごととして、キャラクターは倍増。超電磁ヨーヨー(古い)ならぬ、超電磁ムチをふるうミッキー・ロークに、謎の女スカーレット・ヨハンソン、伝統芸みたいなテンションの高い演技の黒幕サム・ロックウェル、ありがたみのない第三勢力のサミュエル・L・ジャクソンとこれだけで、数行を要してしまう。(笑)

キャラクターが多くなると説明に無駄な時間を要してしまい、映画のテンポが悪くなることがよくあるのだが、ストーリーもキャラクターも白黒がはっきりして、変な裏表がなく、昔のアニメ並みに分かりやすく、スッキリしている。(アイアンマン自ら「自分は核抑止力だ」などとのたまう単純さには、頭が痛くなるが・・・)

アニメと言えば、新型無人アイアンマン軍団なんて、「超時空要塞マクロス」のメカ、しかもヴァルキリーじゃなくて、ファランクス(25年ぶりに思い出した名詞。思い出すのに20分かかった。)とかの周辺メカって感じ。最後に日本庭園のパビリオンで決闘するあたりも日本に対する目配せかな。

とまあ、新要素が盛りだくさんにも関わらず、うまくまとめられている。前作でも思ったのだが、観たい場面をキッチリ見せるジョン・ファブロー監督の手腕に、コミック映画に対する誠実な愛を感じられる。(「ザスーラ」も良かった。)

逆にそのソツの無さが気になるところで、確かに主人公は破天荒なのだが、それは映画のワク内の話であって、映画そのものは無難すぎて、はじけていないというか、ケレン味がないのだ。

「プライベート・ライアン」で20ミリ対空機関砲を、「スモーキン・エース」でバレットを、「第9地区」でダネルを出したようなセンスが欲しい。併せて言うなら、流血の少なさにも喰い足り無さが残る。(って、重火器が出てきて、たくさん人が死ねば良いのか!?(笑))

結果として、面白く、良く出来た映画だけど、楽しい映画じゃないんだよなあ・・・。

ところで、ウチに帰ってから、ウチの奥さんに「アイアンマン2」を観てきたと話したら、ジュディ・オングみたいな踊りを始めた。何をしているのかと思ったら、

「ミッキー・ロークの真似じゃん・・・イタタタ!急に肩を回したから、つりそう!」

おまえはアホか。
題名:アイアンマン2
原題:IRON MAN 2
監督:ジョン・ファヴロー
出演:ロバート・ダウニーJr.、ミッキー・ローク、グイネス・パルトロー、スカーレット・ヨハンソン
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グリーン・ゾーン

2010年05月17日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:5月16日
映画館:バルト11
パンフレット:A4変形版700円。手の込んだちょっとおもしろい作り。

2003年のイラク戦争も、7年という時を経て、戦争・アクションものだけでなく、いろいろなタイプの映画が出てくるようになった。

イラク戦争終結間際、大量破壊兵器調査チームのマット・デイモンは誤情報ばかりに振り回される現場に疑問を抱き、同様に国防総省に不信感を持つCIAからリクルートされる。そんな折り、イラク軍部内の情報源の所在が明らかになり・・・と、アクション一辺倒かと思いきや、むしろ戦時下ミステリーのような内容だ。

もちろん、アクションの方も充実しており、手持ちカメラによる映像はイライラさせられる緊張感を伝えているし、ひっきりなしに続く銃撃戦シーンもなかなかの迫力。

アメリカ人役にブレンダン・グリースンとか、ジェイソン・アイザックスとか妙にイギリス人俳優が多いと思ったら、製作にイギリスのワーキング・タイトルが入っていた。確かに、アメリカ資本オンリーじゃ作りにくい映画かも知れない。

一瞬、バグダッドかと思わせるロケ地はスペインとモロッコ。今や、中東といえばロケ地はモロッコだ。そう言えば、「ブラック・ホーク・ダウン」もモロッコ・ロケ。ジェイソン・アイザックスは、いつもモロッコとセットだ。(笑)

題材としてはタイムリーだし、テーマの目の付けどころは良いのだが、気になるのは、マット・デイモンの動機付けの弱さ。キャラの掘り下げが浅いのか、組織を無視してまで動く彼の行動原理が見えてこないのだ。
あとは、ガンガンに鳴り響く音楽に辟易させられた。緊張感を高めんばかりにずぅ~っと流れ続けて、かえって逆効果。おいしい料理に、既製品のベタベタに味の濃いソースをかけられたかのようだ。この映画の内容なら、重苦しく静かな曲の方が似合うと思う。

ところで、この映画、配給が東宝東和なので、原題の前に日本語タイトルが出てくる。今回は、さらにその前に時代背景の解説が入る珍しいパターン。その解説の文末の言い回しが、「その名は、(画面転換)「グリーン・ゾーン」」。
まるで、「ニューヨーク1997」のオープニングみたいで、J.カーペンターの曲が頭をよぎったよ。(笑)
題名:グリーン・ゾーン
原題:Green Zone
監督:ポール・グリーングラス
出演:マット・デイモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリースン、ジェイソン・アイザックス
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ザ・クレイジーズ

2010年05月02日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:5月1日
映画館:横川シネマ

ほとんど、ゲリラな一夜限りの限定上映。

「ザ・クレイジーズ 第2のカサンドラ・クロス 細菌兵器に襲われた町」と言っても知らない人がほとんどだろうから、簡単に解説すると・・・

人間を発狂化・凶暴化させる細菌兵器トリクシーを搭載した軍用機がアメリカの片田舎に墜落。漏れた細菌が地下水を汚染し、住民に感染する一方、軍は白防護服にガスマスクの防疫部隊を派遣して町を封鎖し、事態の収拾を図ろうとする・・・。

監督は「ゾンビ」のジョージ・A・ロメロ。今回の上映も「ゾンビ」リバイバルの特別上映なのだ。

そもそもこの映画、CICビクター版「ゾンビ」の予告編集だったか、ムック本「フィルム・ファンタスティック」で知って、おそらく1回だけビデオで観た限りなのだが、なぜかTシャツもなんか持っていたりする。(笑)

さすがに73年という製作年ゆえ、ストーリーや演出の荒削りさには古さを感じさせる(発狂した市民の描写など、もう少しケレン味あっても良さそうなものだ。)が、「ゾンビ」DVDボックスでも書かれていたロメロのカット数の多さや報道現場を思わせるような画面作りは、この作品でも見ることができ、現在でも十分、通用するだろう。

過去に一度ビデオで観たつもりだったのだが、観終わってみると予告編や本で観たシーン以外、どうも記憶にない。ヒロインをコンクリートブロックの中に隠すシーンなど覚えていそうなもんだが、それさえ覚えがない。ひょっとしたら、今回が初見だったのかも知れない。

ところで、観客は横川シネマのレイトショーにしては10人強と多め。でも、この観客数でどうやって劇場として採算を取るのか、ちょっと気になってしまった。

題名:ザ・クレイジーズ
原題:The Crazies
監督:ジョージ・A・ロメロ
出演: W・G・マクミラン、レイン・キャロル、ハロルド・ウェイン・ジョーンズ
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ウルフマン

2010年05月01日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:4月28日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版600円。

何を今更と、観るのをちょっと悩んでしまった十九世紀狼男映画。

ベニチオ・デル・トロが狼男という分かりやすすぎる配役が先行したが、雰囲気のある良い映画になっている。

ストーリー的には、2010年には珍しいくらいのオーソドックスなもので、近年ありがちなヒネリやトリックは一切なし、往年のホラー映画(というか恐怖映画)のストレートなリメイク映画と言えるかも知れない。(余談だが、予告編は「エルム街の悪夢」リメイク版。リアルタイムで観ていたものが、そろそろ本格的にリメイク化。もう、そんなトシなんだねえ。)

CGに頼らないリック・ベイカーの特殊メイクも派手さこそないもの、彼らしい生き物の現実感に満ちている。(ある意味、リック・ベイカーの創造物は生きたキャストだから。)一方、スプラッター描写はさすがRー15指定で、首・手・足がバンバン飛び散ります。

何より、油絵を思わせるような美術や画面作りが美しい。ゴチックな屋敷や内装に美術スタッフの気合いを感じさせるし、さりげなく当時の社会風俗を垣間見せる時代考証のセンスが抜群。

難は一本調子の演出(か、もしくは編集)。全体にメリハリとか緩急が感じられないのは、なぜ?含みとか前振りのない展開が唐突すぎる感は否めない。

ところで、ジプシーのことを字幕訳は「流浪の民」。本編で「Gypsy」と連呼しているんだから、字幕も「ジプシー」でいいじゃん。(せめて「流れ者」くらいで。)
題名:ウルフマン
原題:The Wolfman
監督:ジョン・ジョストン
出演:ベニチオ・デル・トロ、アンソニー・ホプキンス、エミリー・ブラント、ヒューゴ・ウィービング
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シャッター・アイランド

2010年04月20日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:4月18日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版600円。監督、デカプリオ、ベン・キングズレーのインタビュー掲載。割と充実している。

家を出る10分前まで、行くか行くまいか逡巡したけど、久々のスコセッシなので足を運んだ。(ちなみに前作「シャイン・ザ・ライト」は観ていない。)

精神に問題アリの犯罪者ばかりを収容した孤島で、行方不明になった囚人の謎を追うミステリー映画だが、本編の前に「ラストは人に話さないでください。」と注意書きが出る。まあ、この瞬間にネタばれしたようなもんだ。(笑)

「グッドフェローズ」とか「カジノ」のスコセッシ節を期待すると肩透かしを喰うが、画面づくり1つ1つに重みがあって、嘘くささが感じられないあたりはさすがスコセッシ。嵐という舞台設定のせいもあるが、雰囲気は「ケープ・フィアー」に近いかな。

デカプリオは「ワールド・オブ・ライズ」の時同様、ヤサ顔でとても連邦保安官には見えない。だが、それもトリックの一部だし、なんといっても表情の1つ1つが実に繊細に構成されていることが素人目にも分かる。眉間のしわの寄せ方1つにしても、その原因によって違うのだ。顔立ちのリアルさは二の次にしても、スコセッシがキャスティングするの当たり前だ。

とはいえ、トリックとオチはありきたりで、ある意味、定番だし、「それなら、何でもアリよね。」と力づくで納得させられてしまう(というより、納得しなくてはならない。)のは、問題だね。ダッハウ収容所とか非米活動委員会とか「狙われた街」なエピソードが出てきて、それはそれで思わせぶりでワクワクするのだが、風呂敷の広げすぎが露骨すぎるよ。他の監督ならまだしも、スコセッシだったら、その方向に収束しないことが見え見え。(ネタばれにならないよう、書くのは大変だ。(笑))

わき役にテッド・レビン(ジェシー・ジェームズの暗殺)、アール・ジャッキー・ヘイリー(ウォッチメン)、イライアス・コティース(ザ・シューター/極大射程)といったスコセッシらしくないが、いかにもミステリー的な顔ぶれを配しているあたり嬉しい。
題名:シャッター・アイランド
原題:Shutter Island
監督:マーティン・スコセッシ
出演:レオナルド・デカプリオ、ベン・キングズレー、マーク・ラフィロ
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アーマード 武装地帯

2010年04月01日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:4月1日
映画館:バルト11
パンフレット:出版されず。

いったい、いつの時代の映画なんだ!とツッコミたくなる面白味に欠けるが、楽しい作品。

イーグル警備という、名前からして胡散臭い会社の警備員どもが、狂言強奪で輸送中の現ナマ4200万ドルのネコババを計画するも、目撃者のホームレスを誤殺してしまったことから、仲間割れが始まり・・・というストレートなお話。

舞台が廃工場に、マット・ディロン、ローレンス・フィッシュバーン、ジャン・レノ、スキート・ウールリッチといった個性的な顔ぶれとあって、「レザボア・ドッグス」後の雨後のタケノコ映画の1本が、今ごろ公開されたのかと勘違いしてしまう。「最新鋭装備がGPS」なのもそのせいか。(笑)

いいツラ構えの連中ばかりなのだが、彼らが何ゆえ結束できて、犯罪に走るのかが説明されず、かといって「スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい」のように過度で笑える表現をするわけでもないので、犯罪映画としては面白味がない。

逆に、薄っぺらいキャラクターでもマット・ディロンのような役者が演じるといい感じなのだ。まあ、スキート・ウールリッチともども「アンタたちも、とうとうこんな世界に来てしまったのか。」と思うけどね。
一方、ジャン・レノとかアマウリー・ノラスコなどは「アンタたち、同じような役ばっかしじゃん。」(笑)
そういったキャスティングの妙味というか、ヤケクソ気味が「楽しかった~」と思わせてくれるのだ。

ところで、現金輸送車襲撃映画でタイトルの思い出せない作品があったのだが、たった今、思い出した。
「ギャングは暁に死す」
題名:アーマード 武装地帯
原題:Armored
監督:ロブ・マーシャル
出演:マット・ディロン、コロンバス・ショート、ローレンス・フィッシュバーン、フレッド・ウォード
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シャーロック・ホームズ

2010年03月19日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:3月18日
映画館:バルト11
パンフレット:A4版700円。デザインが凝っていて、見ているだけで楽しい。

昔、手持ちぶさたの時にやっていた暇つぶしがシャーロック・ホームズの60件の事件を全部思い出して書き出すこと。58~9件までは行くのだけど、「ボール箱」とかが結構、思い出せなかったよなあ。

閑話休題

さて、シャーロック・ホームズを「ロック・ストック・アンド・トゥー・スモーキングバレル」「スナッチ」のガイ・リッチーが撮るという。

ホームズとリッチー、どちらも好きなんだけど、この水と油のような組み合わせが上手くいくのか気になるところだった。結論から言えば、上手くいったとも言えるし、満足できないとも言える。

【以下、ネタばれあり】

ホームズの冒険ものとして、ホームズとワトソンの関係の描き方がいいし、アカデミー賞候補にもなった美術が秀逸で、細部へのこだわりも素晴らしい。路地の臭いまでしてきそうだ。

一方、ガイ・リッチーの方も彼らしい編集や、話題の肉弾ボクシングシーンで、音楽にアイリッシュ・バンドのダブリナーズを使うセンスの良さも相変わらず。さすがに今回はマカロニ・ネタがなかったのは、ちょっと残念だったが。

逆にバランスよく両立しているから、喰い足りなさが出てしまう。手堅い職人監督だともっと格調高いホームズものになり、マニアックな監督だとキワモノじみた映画になったろう。まあ、どっちに転んでも、それはそれで面白かったろう。

奇抜なトリック一辺倒だと2時間の映画が持たないので、話の味付けとして、黒魔術や「ハイテク」技術が出るあたりに違和感を感じないでもないが、コナン・ドイルがオカルトにはまったことや、原作でも当時のハイテク「蓄音機」をトリックに使っていたことを考えるとこれもアリかな。

弱いのは脚本。キーパーソンとなる謎の天才発明家の描写が少なく、話に奥行きが出てこない。深追いすると話が破綻したと思うが、もう少し登場してくれた方がストーリーが分かりやすくなったと思う。

続編はどうするのかね。さすがにモリアーティ教授を出さないわけにはいかないだろうけど、出し方が難しいよね。

ところで、このホームズもの、どこかで既視感があったと思ったら、いしいひさいちのホームズ・パロディに雰囲気が近いんだな。(激しい思いこみ)
題名:シャーロック・ホームズ
原題:Sherlock Homes
監督:ガイ・リッチー
出演:ロバート・ダウニーJR、ジュード・ロウ、マーク・ストロング
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カティンの森

2010年02月23日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:2月22日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4版700円。明朝体のテキストを中心とした構成で、20年ほど前の何かの取扱説明書を思わせる。

第二次大戦中のソ連軍によるポーランド軍捕虜虐殺を描いた、「ポーランド人によるポーランドのための」映画。

オープニングでは、独ソ不可侵条約、ドイツ軍侵攻、ソ連軍侵攻といった時代背景が日本語字幕で解説される。

最初は、捕虜となったポーランド将校とその妻子の話で、この妻が夫の行方を探すストーリーなのかと思いきや、次いで同じく夫が捕虜になった大将夫人の話に移る。さらに新しい登場人物が現れては消え、ストーリーの語り手のバトンが次々と渡されていく。
虐殺事件からからくも逃れたポーランド軍将校、ワルシャワほう起に参加した元レジスタンス、ソ連支配体制に反対する国内軍の兵士、体制派につく学校教師などなど、実に多くの登場人物でストーリーが紡がれていく。
一人一人について、多くは語られず、断片的な物語で、途中死ぬ者もいれば、生死がはっきりしない者もいる。「カティンの森」事件を通したポーランド戦後史の映画なのだ。

最初、時代背景が日本語字幕で解説されると書いたが、途中も時代と場所が何回も字幕で説明される。この字幕がオリジナルの映画でも出てきたかどうか不明なのだが、これがないと背景知識のない観客にはストーリーについていけないだろう。

途中、独ソ戦の開始は説明されないし、ワルシャワほう起でロンドン亡命政府側のレジスタンスが事実上、壊滅したことも分からない。(そういえば、ソ連国策映画「ヨーロッパの解放」では、「英国政府に支援された一部の勢力が勝手にほう起し、全滅した。」と紹介されていたよなあ。)

そういった意味で「ポーランド人のための映画」という感じを強い。ひと昔前のハリウッドなら、オールスター映画になりそうな気がするし、ドルの重みが役の重みだったので、ストーリーもすんなり把握できたのだが、やはり知らない顔ばかりだとズロチの重みが分からないよね。(演出的につながりが悪く、不自然な部分も気になる。)

結末が分かっている(NKVDの仕事に抜かりはない)だけに余計につらい映画なのだが、この映画を見ていると、歴史的事実が政治の狭間に翻弄され、2000年代までかかった映画の製作そのものの重みがひしひしと伝わってくる。(歴史改変のくだりは「1984年」を思わせるね。)
題名:カティンの森
原題:Katyn
監督:アンジェイ・ワイダ
出演:マヤ・オスタシェフスカ、アルトゥル・ジュミイェフスキ

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ラブリー・ボーン

2010年02月03日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:2月2日
映画館:バルト11
パンフレット:B5横版、700円。白地に、かすれて消えそうなフォントがいい。

不思議な映画。
突き詰めてしまうと、13歳の女の子、スージー・サーモンが殺されて、天国に行く"だけ”の物語なのだ。

ゾンビとなって復活し大暴れもしなければ、霊魂がさまよって事件を解決することもない。

強く何かを感じることはなかったのだが、あとからじわじわと来る感じだね。

ピーター・ジャクソンのセンスから言えば、異色な映画のようだが、思うに、彼の映画って、生と死の世界の狭間が曖昧な映画が多い。「ブレインデッド」しかり「さまよえる魂たち」しかり。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズも亡者とか亡霊が多いしね。

この世と天国の境目の世界が美しいのだが、「アバター」のようなSF的世界ではなく、実際の大自然がすこしオーバーなだけで、世界のどこかにありそうだという描写に好感が持てる。死後の世界なのだから、そうなのかも知れないが、監督とか美術スタッフが本物の素晴らしい自然を日常的に目の当たりにしていることが感じ取れる。

大人たちがボトルシップとかドールハウスとかで、現実世界を小さく押し込めようとしているのに対し、スージーはあの世から家族を見守り、好きな男の子のことを思いながら、より大きな世界へと旅立とうとしている。う~ん、切ないくらい乙女チック。

背景となる70年代の描き方も良くて、近くて遠い過去をかいま見れるし、マーク・ウォールバークなんて、いかにも70年代顔でピッタリだ。
登場作品が多すぎて、代表作が何とは言いにくいスタンリー・トゥッチは複雑で陰湿な役を好演。
実質主役のシアーシャ・ローナンは、美人ではないのだが、70年代な笑顔が印象的で、今後、個性派女優に成長しそうに思う。
その年代ってこともあってか、最初に出てくるショッピング・モールが「ゾンビ」を彷彿とさせたね。

ところで、無残な死に方をするけど天国に行けるのと、安らかに死ぬけど地獄に墜ちるのなら、ワタシが選ぶのは
題名:ラブリー・ボーン
原題:The Lovely Bones
監督:ピーター・ジャクスン(キング・コング)
出演:マーク・ウォールバーグ、レイチェル・ワイズ、スタンリー・トゥッチ、シアーシャ・ローナン
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Dr.パルナサスの鏡

2010年01月30日 | 洋画(普通、まあまあ、及第点)
日時:1月28日
映画館:バルト11
パンフレット:A4横変形版600円。丁寧なつくりでお買い得。

テリーギリアムといえば、シニカルなドラマづくりと独特の映像世界、それから製作トラブル。(苦笑)

今回、ヒース・レジャーの急逝とジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの引継共演が話題となった。

3人が引き継いだのは、鏡の中の幻想世界で、映画としてもそこが見せ場。ティム・バートンとは味わいの違う、ギリアムの映像が楽しく、映画が一気に盛り上がる。巨大警官とかバー大爆発のセンスなんて、「モンティ・パイソン」のままで、笑えた。

だが、仕方ないとはいえ、どうしても引継共演に気持ちが行ってしまい、「共演者はどうやって演技のテンションを維持したのか?」とか「脚本に手を入れたな。」とかスクリーンの外側を意識させられてしまう。本来ならどんな映画になっていたのか。

特にコリン・ファレルパートの最後は、絶対、ヒース・レジャーの方が良かった・・・というか彼でないと映画が成立しなかったのは、かなり痛い点。

他のキャスティングでは、鋭い眼光が相変わらず健在のクリストファー・プラマーがいい。(「グリム・ブラザーズ」のピーター・ストメアもチラリも出てくる。)

ところで、最近のハリウッド映画は、何でも説明しすぎて、伏線とか暗喩隠喩ってものが無いのが不満なのだが、この映画は逆にストーリーをゴテゴテとさせすぎている感がある。主人公の視点もあっちにいったり、こっちにいったりで、ワタシは70%くらいしかストーリーを理解できなかった。眠かったのか、それとも頭の悪いせい?

題名:Dr.パルナサスの鏡
原題:The Imaginarium of Doctor Parnassus
監督:テリー・ギリアム(グリム・ブラザーズ
出演:ヒース・レジャー、クリストファー・プラマー、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレル
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