kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

レ・ミゼラブル

2020年07月05日 | ★★★☆☆
映画館:サロンシネマ

「レ・ミゼラブル」といっても、ヒュー・ジャックマンやアン・ハサウェイが歌うあれではなく、ガチガリのフランス警察映画。

パリ郊外の犯罪多発地帯モンフェルメイユ地区に配属された警官ステファン。治安維持の犯罪防止班BACに配属された彼が先輩警官2人と街中のパトロールに出る2日間が描かれる。

街中では「市長」とあだ名される黒人ボス、ムスリムに影響力をもつ実力者、警察と裏でつながっている一味たちがそれぞれの権益を守りながら、ヒリヒリした関係を保っていた。そこでロマの巡回サーカス団にトラブルが発生し、街中が一触即発状態になり、さらに街の悪ガキの悪ふざけが事態を悪化させていく。

パブでスパイク・リーの名前が引き合いに出されるように「ドゥ・ザ・ライトシング」をはじめとし、「トレーニングディ」「ニュー・ジャック・シティ」「クロッカーズ」「スズメバチ」など映画の雰囲気は数々の街の揉め事映画に近く、さらにムスリムとの関係がキリキリしているのが今風。

過去のそういった映画以上に感じるのは、今、そこにある緊張感。
街の対立は基本怒鳴り合いだけで、ほとんど銃は出ないし、暴力すらほぼ起きない。麻薬ともほぼ無縁。それだけに、日々の鬱憤が暴発したときの反動の大きさを予感させて、嫌な空気感をどんどん醸し出していく。

さらに見た目派手な揉め事より、関わる人物たちの生き様と街の様子を細かく描くことでいつ事態が暴発するか分からない不穏感を高めていく。
低所得者層向けアパート群での生活風景が生々しい。

主人公のステファンは、最初、街の雰囲気と暴走スレスレのBACの行動に戸惑うあたり頼りないのだが、徐々に自分なりの正義を打ち出していく。

トラブルも収束の兆しを見せそうになるが、それだけで事件が終わると今度は映画館の観客側が暴動を起こすので、映画的にはそれなりに大事件が待ち構えている。

劇中、根っからの悪人は登場せず、それぞれが良かれと思ったり、何気なく起こした行動が悲劇を誘発するあたり、まさにタイトルどおりだし、そこに現実社会が透けて見える。

今、世界中でさまざまな「格差」が問題となっているが、それを産み出す背景も強く感じさせる映画。







題名:レ・ミゼラブル
原題:LES MISERABLES
監督:ラジ・リ
出演:ダミアン・ボナール、アレクシス・マネンティ、ジェブリル・ゾンガ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

エンテベ空港の7日間

2020年01月05日 | ★★★☆☆
映画館:サロンシネマ

世の中には二種類の人間がいる。
「エンテベがわかる人間と知らない人間だ。」

という格言があったかどうかは知らないが、エンテベと聞いて分かる人には説明不要だ。

1976年、イスラエルと対立するPFLMに賛同するドイツ人過激派がエールフランスの旅客機をハイジャックし、アミン政権下のウガンダに着陸。同国政府の支援を得ている彼らは、人質の乗客と乗組員を空港建物に監禁し、逮捕されたメンバーの釈放をイスラエルに要求する。
ユダヤ人乗客に危険が迫ることからイスラエルは特殊部隊による人質救出作戦を強行し、これに成功する。
(と書けばカッコイイが他の主権国家に殴り込みをかけて、同国の兵隊を殺害してまで作戦を敢行するのだから、この頃のイスラエル様は無茶をしなさる。)

ということで、こんなオイシイ話題を映画界が放っておくわけがない。過去にも「エンテベの勝利」や「特攻サンダーボール作戦」などで映画化されている。今回の作品でダニエル・ブリュールが演じるテロリスト役は、過去作ではヘルムート・バーガー、ホルスト・ブッツホルツ、クラウス・キンスキーと手堅い顔ぶれが演じている。他にもブロンソンを筆頭に、カーク・ダグラス、バート・ランカスター、リズ・テイラー、リチャード・ドレイファス、リンダ・ブレア、マーチン・バルサム、アンソニー・ホプキンス、ジェームズ・ウッズ、ヤフェット・コットー、ピーター・フィンチ、ジョン・サクソン、ロバート・ロッジアなどなど60〜70年代を代表するスターが勢揃いしていた。(名前を羅列するだけで楽しい。)

それが当時からしたらもはや未来社会、サイボーグの実用化か人類滅亡を夢想した2018年に再び映画化。今回、「エリート・スクワッド」シリーズが暴力的で面白かったジョセ・パジーリャ監督なので、ピリピリした展開を期待したのだが、思った以上にストレートかつ奇抜な作りで混乱してしまった。

いきなり舞踏シーンから始まる本作、全編に渡り登場人物の誰かがステージにあがるためのダンスシーンが並行して描かれる。かかる曲はいいのだが、意味するところが即座に飲み込めずもやもやしたまま映画が続く。

本作の特徴はテロリストの描写にも相当の時間を割いており、彼らの背景や行為への諮詢なども描かれる。
テロの主要メンバーはブリュールとロザムンド・パイク。彼女の「あなたいつか刺し殺してやるから」と呟くかのような目元が恐ろしい。(たぶん、そんなことおっしゃってません。あくまでワタシの偏見デス。)

一方、イスラエル側も軍事・政治の両面に渡ってみっちりと描かれるが、いかんせんオチを知り尽くしているだけに史実の再現以上のものは見いだせなかった。

とはいえ、自分がリアルに感じていた1970〜80年代の緊迫する国際情勢が再現された映画はやはり楽しい。「ワンダーウーマン1984」も楽しみ。

ところでこの映画、サロンシネマでは上映期間1週間、1日1回上映だったにも関わらず大入りだったらしい。そういう傾向が続くといいな。






題名:エンテベ空港の7日間
原題:7 DAYS in ENTEBBE
監督:ジョセ・パジーリャ
出演:ダニエル・ブリュール、ロザムンド・パイク、エディ・マーサン

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ

2019年07月18日 | ★★★☆☆
日時:7月10日
映画館:八丁座

1930年代、ナチが政権を取り、ユダヤ人差別を激化させる過程で、形式上合法的に数限りない美術品を略奪、それらを国家資産とする一方、ヒトラーとゲーリングがお気に入りの作品を購入。古典的な作品はドイツ的な美術として扱われた一方、前衛主義などの作品は退廃芸術として扱われた。
ナチスと略奪美術品を巡るその顛末を様々な視点から描いたドキュメンタリー映画。

となると原題・邦題ともに語弊アリで、ピカソが芸術を武器にナチやファシストに対抗したかという話ではない。
ピカソ一辺倒だったら足が遠のいたかも知れないが、予告編で退廃芸術展が出てきたおかげで俄然観る気になるというもの。

取り上げられる事件は多岐にわたり、次々と話題が切り替わる。
ユダヤ人や美術品の物語、ナチのお抱え画商、ニュールンベルグ裁判、映画「ミケランジェロプロジェクト」でも取り上げられたモニュメントメンの活動、ヒトラーとゲーリングの確執、贋作画家、大ドイツ芸術展と退廃芸術展、戦後の略奪芸術品の返還、ローゼンベルグが率いるERR部隊の活動、秘匿美術品と2012年に発覚したグリュリット事件・・・と盛りだくさんの展開。(何しろ、開幕20分で終戦になってしまうので、その後の展開が心配になるほどだ。)

既知の話題もあれば新しい発見もあり、なかなか興味深く面白い。特にSSがドイツ国内の国家内国家として存在していたのも伺い知れる。現在でもヨーロッパの各所にナチが略奪した金銀や美術品が人知れず眠っているかと思うと、悪魔的な誘惑を感じるなあ。

が、それらの話が時系列でストーリー展開するわけではなく、コラージュ的にあっちこっちに行くものだから、映画としてとっ散らかった印象はまぬがれない。結果として、映画のどこに自分の感情を寄り添わせたらいいのか、ちょっと迷ってしまう。

もちろん、最大のテーマはナチの悪行なのだが、そこから考えさせられるのは「美術品を誰が所有するのが正しいのか」、さらに言うと「美術品とは何なのか」という根源的な問題だ。
映画には出ないが、IS等による歴史的遺産の破壊を見ると「人類と美術品の価値の関わり」とは何なのかと改めて思う。

ところで、この作品、ナレーションの入りなどが劇場用映画というより、ドキュメンタリー番組を思わせる。徐々に双方の境界線がなくなってきている。






題名:ヒトラーvs.ピカソ 奪われた名画のゆくえ
原題:HITLER VERSUS PICASSO AND THE OTHERS
監督:クラウディオ・ポリ
出演:トニ・セルヴィッロ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ナチス第三の男

2019年05月02日 | ★★★☆☆
第二次世界大戦の戦記好き、そして史学を学んできたものとして、第二次世界大戦史を研究することと自分の変化を重ね合わせた原作「HHhH」は傑作小説だった。

その映画化、「死刑執行人もまた死す」「暁の七人」「ハイドリヒを撃て」など何度か映画化されてきた1942年ナチ占領下のプラハで起きたハイドリヒ暗殺計画を描く。(「ヒトラーの狂人」は未見)

「HHhH」を完全に映画化しているわけではなく、むしろ定本としての扱いくらいで、話はハイドリヒの立身出世話と暗殺計画の二部構成のみとなっている。(原作の「私」は登場しない。)

ハイドリヒが海軍をクビになり、親衛隊(SS)で頭角を表し、プラハで襲撃される直前までが前半、後半ではチェコのレジスタンスによるハイドリヒ暗殺が描かれる。

前述した同テーマの映画と決定的に異なるのは、言うまでもなく前半。なのだが、主演のジェイソン・クラークが決定的にハイドリヒに似ていない!
これまでで一番似ていたのは、一瞬しか出なかった「ハイドリヒを撃て」のデトレフ・ボセ(Detlef Bothe)だったが、「暁の七人」のアントン・ディフェリングも「ナチを演らせりゃ、世界一ィィィィィィ」な彼らしさが活きていて良かった。
しかし、オーストリアではなくオーストラリア人のゴツゴツ顔のジェイソン・クラークはハイドリヒらしさが微塵もなく、彼にハイドリヒを見出すのはかなりハードルが高い。

キャスティングで言えばヒムラー役のスティーブン・グラハムも太り気味。突撃隊のレームは似ているが、やはりいちばん良いのは程よく年を取った「ゴーン・ガール」ことロザムンド・パイクだな。ハイドリヒに多大な影響を与える猛妻リーナを好演。

ハイドリヒが似ていない以上に映画的にしっくりこなかったのは、彼の行為を史実的になぞっただけに終わった点だろう。
アインザッツグルッペン(特別部隊)の残虐行為を陣頭指揮していることを描くのは見た目には分かりやすいのだが、彼の悪魔的なところは、娼館での盗聴や第二次大戦を引き起こしたグライヴィッツ事件、アインザッツグルッペンの編成、最終的解決の発案など、当時、誰も考えつかなかったことを考えだしたことであり、さらにそれを支持し実行させたナチスの狂気があるのだと思う。

映画ではハイドリヒだけが悪人のように見えてしまうが、当時、現場には「本当にやるんですか?」と感じた人間がいて、さらには「仕事ならちゃんとやります」と実行できた人間がいたはずだと思う。まあ、その辺まで描くとちょっとした長編になってしまうし、映画的に面白いかというと別なのだろうが。

後半はハイドリヒ暗殺に至る経過が描かれるが、この辺は詳細が明らかなので表現はラブロマンスなど交えられるものの過去の作品と大差がない。仕方ないところだろう。
ハイドリヒ暗殺の報復措置、リディツェ村の虐殺が明確に描かれるのは珍しく、その暴虐ぶりが結果として身内の裏切りにつながる展開には説得力がある。

原作が良かっただけに期待したのだが、期待以上の中身ではなかったな。

ところで、ハイドリヒの妻、リーナは事件後「プラハがチェコ人の頭蓋骨で敷き詰められたら、プラハに戻る」と言ったという記事を目にした覚えがあるのだが、改めて探しても見つからない。ワタシのナチ妄想だったのか・・・?






題名:ナチス第三の男
原題:The Man with Iron Heart
監督:セドリック・ヒメネス
出演:ジェイソン・クラーク、ロザムンド・パイク、ジャック・オコンネル、ジャック・レイナー、ミア・ワシコウスカ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ちいさな独裁者

2019年04月21日 | ★★★☆☆
日時:4月6日
映画館:横川シネマ

ワタシの好きな映画傾向として「崩壊する組織とその過程で混乱する人々」というものがある。その顕著な例として「ヒトラー/最後の十二日間」と「日本のいちばん長い日」が挙げられる。

さて、そんなドイツ第三帝国も風前の灯火となった第二次世界大戦末期、憲兵隊に追われるドイツ空軍兵士ヘロルトが偶然にも空軍将校の制服を発見し、空軍大尉と勘違いされたことを契機に偽りの権力をエスカレートさせていくというストーリー。

ヘロルトは敗残兵となった連中に頼られ、彼らをかき集めているうちに犯罪収容所にたどり着き、口八丁手八丁と暴力的な手段で収容所の実権を掌握する。

とこれが実話なのが恐ろしいところなのだが、ヘロルトの犠牲者たちが基本ドイツ人なので、終戦間際の混乱期に起きた内輪もめと捉えられ、知られていなかったのではないだろうか。

先に触れた暴力的な手段がなかなかなもので、ナチの非道さを表した映画とも言えるのだが、個人的には権力に対する寓話と捉えた。

たどり着く犯罪収容所では収容所内部は法務省が管轄し、警備は突撃隊が管理している。ナチスドイツでは一つの組織に強大な力を持たせないようにするため、複数の官僚組織がお互いに牽制しあうよう所轄が決められていた。
複数の組織が1つの案件に関わると、当然そこに権力の空白地帯が生じるワケで、ヘロルトも実は全く無関係な空軍士官であるにも関わらずそこに介入できる。

その一方で虎の威を借りようとする輩も出て来る。収容所を掌握する突撃隊は主人公を焚き付け大管区指導者(ガウライター)を巻き込むことで、自身の目的を達成しようとする。

また、周囲の人物たちも主人公たちが暴走していくのを、何かおかしいと徐々に気づきながらも誰も止められない。事態が混乱する中、大きな歯車が動き出すと一個人では止められなくなってゆく。


先に挙げた「崩壊する組織とその過程で混乱する人々」のいち風景とも言えるが、こういった話はナチスドイツに限ったことではなく、組織で働くと何かしら体験する話ではないだろうか。
日常生活でヘロルト化した人間を目にするし、逆に誰もがヘロルト大尉になりうる要素を持ち合わせているのではないかとも思う。

ところでドイツ映画の本作、登場兵器は少ないものの軍装類は見ていて飽きない。それ以上に対空機関砲の設置シーンは燃えるなあ。







題名:ちいさな独裁者
原題:The CAPTAIN (Der Hauptmann)
監督:ロベルト・シュヴェンケ
出演:マックス・ヒューバッヒャー、ミラン・ペシェル、フレデリック・ラウ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アンダー・ザ・シルバーレイク

2018年12月24日 | ★★★☆☆
ハリウッドに暮らすプータロー青年、サムは、偶然、美人のサラと知り合い、翌日のデートを約束する。しかし、サラは謎を失踪を遂げ、謎めいた訪問者やメッセージを手がかりに彼女を探そうとする・・・

主人公の部屋に貼られたポスターやバーナード・ハーマン風の音楽、そしてドリー・ズームに見られるように、まずはヒッチコック風の巻き込まれ型サスペンスを思わせる。

サムはサブカル・ポップカルチャー好きで、コミックブックショップでアングラ同人誌「Under the Silverlake」を手にし、ハリウッドに隠された秘密とサラの失踪を重ね合わせて探っていく。
ハリウッドにはセレブとセレブを目指す人と特殊な人たちが溢れ、街なかではオールドスタイルな謎の暗号が飛び交う。そんな中、サムは迷宮のような世界に迷い込んでいく。

ワタシ自身はいわゆるオールドハリウッド映画やハリウッド・スキャンダルには疎いのだが、それを思わせるようなシーンや描写がどんどん出てきて、作り手の好みやセンスが全体にでている。
この映画の紹介では、前述のヒッチコック映画の他、「市民ケーン」「マルタの鷹」「チャイナタウン」「ラ・ラ・ランド」などが引き合いに出されているが、この他にも「フリッカー、あるいは映画の魔」「THE エージェンシー」「狼たちの街」「ゼイ・リブ」「ブラック・ダリア」「インヒアレント・ヴァイス」そして「ブルーベルベット」なども様々な陰謀論と、ハリウッドとカリフォルニアを舞台にした映画思い起こさせる。

主人公を演じるのはアンドリュー・ガーフィールド。ヌボーとした顔立ちと背の高さ故、オロオロ感も倍増。20年くらい前なら、異世界でオロオロする主人公と言えば、ジョニー・デップだったが、あんな感じ。(ワイルド&エロは除く。)

色んな謎がてんこ盛りで展開されるが、結局、多くの謎は説明されない。まあ、説明されても、主導権は作り手にあるので「はあ、そうですか」で終わりそうな気がする。

万人に楽しいですよとおすすめできる映画ではないが、先に言及した映画でピンと来る人はぜひ。
この映画を家で2時間見ろと言われたらツラいと思うので、逆の意味で劇場で腰を据えて観ることができたのは収穫だったかも。






題名:アンダー・ザ・シルバーレイク
原題:Under the Silverlake
監督:デイヴィッド・ロバート・ミッチェル
出演:アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ハン・ソロ/スター・ウォーズストーリー

2018年08月10日 | ★★★☆☆
スター・ウォーズ サイドストーリーシリーズ、今回はハン・ソロのエピソード0。

ヘイル・シーザー!」で気になっていたオールデン・エアエンライクがハン・ソロ役というキャスティング発表の段階から期待大。

ストーリーは予定通りと言うかチューバッカ、ランド、ミレニアム・ファルコン、ジャバ・ザ・ハットとの出会いは外せない訳だから必然的に展開の幅が限られてくる。

ワケありで帝国軍に入隊したハン・ソロは泥だらけの地獄の戦場に叩き込まれる。この戦場描写がなかかなの迫力と終末感があり、個人的には好み。遠い地の果てまで延々と火柱があがる様はもっと観たいくらい。ただいつも思うのだが、惑星を吹き飛ばす単位で戦争をしている割に帝国軍はなぜか歩兵戦闘中心。

その戦場で知り合った小悪党トバイアス・ベケットの一団に押しかけ入隊するハン・ソロ。SWワールドでバリバリの英語名「トバイアス・ベケット」って珍しい。

その前後でチューイと意気投合し、その後はまんま西部劇な列車強盗に博打、まんまマカロニウエスタンな鉱山銃撃戦あって、宇宙大レースの後、砂漠の決闘劇になだれ込んでいく。
この辺のストーリー展開がTRPGの「トラベラー」とか20世紀のスペース・オペラを彷彿とさせて、懐かしさにワクワクしてくる。

なのだが、この懐かしいワクワク感が実はこの作品の一番の弱点なのではないか。

あまりにも普遍的な面白さと味付けゆえ、別にSWワールドでなくてもこの映画が成立してしまうと思わせてしまう。確かに前述したメインキャラクターは登場するが、登場に強烈なインパクトがあるわけではなく、これまでのキャラクター像の再整理に過ぎない。
SWワールドの顔であるジェダイも帝国軍も背景程度でしか登場しない。

ローグ・ワン」のよく出来た脚本と怒涛の見せ場に比べるとどうしても見劣りしてしまう。SWワールドに入れ込んでいないワタシでさえそう思うのだから、コアなファンには食い足りなさが残り、それが興行成績の不振につながったような気がする。

ところで、エンディングでのあるキャラクター登場に時代感が混乱。ハン・ソロって「フォースの覚醒」で死んだ時、120歳くらいだったの?まあ、コレリア人だから長寿なのかも解釈していたら、かのキャラクターは実は死んでいなかったらしい。突然、そんなこと言われても・・・
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ジュラシック・ワールド/炎の王国

2018年08月05日 | ★★★☆☆
ここ数年の我が家の年中行事が「家族で怪獣映画を観る」。

GODZILLA/ゴジラ」「ジュラシック・ワールド」「シン・ゴジラ」「キング・コング/髑髏島の巨神」と本数を重ねているが、見終わってからはあーだこーだとツッコミ大会。で今年は「ジュラシック・ワールド/炎の王国」。

映画の出来と言うと・・・まあ、こんなもんでしょう。

【以下、ネタバレあり】

前作で大惨事となったジュラシック・ワールドことイスラ・ヌラブル島。3年経った今、火山活動が活発化し、噴火も間近いと観測されていた。って、そもそもそんな火山の近くにテーマパーク作るなよー。

島に残された恐竜の処遇について、米国政府は非関与を決定するが、民間財団が恐竜の保護を決定。

恐竜保護の支援依頼を受けたのは前回の生き残った危なっかしいふたり。島にはテッド・レヴィン率いる完全武装の捕獲隊が先行しており、火山噴火までのデッドリミットが迫る中の捕獲劇が進行する。

この辺は予告編でさんざん流れているところなのだが・・・
時速200キロとも言われる火砕流から走って逃げられるかーい!

ただ最後の船に乗り込んで脱出するスペクタクルはさすがに面白い。その一方で艀に残った恐竜を見捨てる様は戦時下で取り残された兵隊や民間人を思わせて涙。

保護したはずだった恐竜だが、民間財団には闇オークションで販売するという目的があり、
本土の大屋敷の敷地内に設けられたひみつ施設で恐竜たちは闇オークションにかけられる。
って、こんな大施設、家主に秘密で作れるかーい!!

当然のこととして、阻止に動く主人公たちの活躍(?)もあり、恐竜たちは脱走してひみつ施設は大パニック、捕獲隊も必然的に餌食になる。もはや「クローン大戦」!
そこにシアン化ガスが流出し、恐竜たちも一掃かと思いきや・・・
屋敷の周りは恐竜とシアン化ガスで阿鼻叫喚の地獄絵図のはずなのだが、そこは描写されない。(当たり前だ)

そんなこんなで世の中は文字通りの「ジュラシック・ワールド 堕ちた王国(原題)」となってめでたしめでたし。もう無茶苦茶(笑)

次作以降、恐竜vs軍隊の本格的な戦争映画化してほしいところですが、「生産性の低い」恐竜たちは繁殖できないだろうからどうするんでしょうね。






題名:ジュラシックワールド/炎の王国
原題:Jurassic World The Fallen Kingdom
監督:フアン・アントニオ・バヨナ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、レイフ・スポール、ジェームズ・クロムウェル、テッド・レヴィン、トビー・ジョーンズ
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

2018年06月26日 | ★★★☆☆

首相就任前後のチャーチルというマイナーテーマだが、日本人がアカデミー賞メイクアップ賞を取ったことで一躍名を挙げた本作。これが何と、横川シネマで上映。同館で上映前に5人以上の観客が待っているのを初めて見た。(笑)

さて、主演のゲイリー・オールドマンのことは「シド・アンド・ナンシー」から意識していて、「JFK」のオズワルドに「レオン」「ロストインスペース」「フィフス・エレメント」「ハンニバル」とエキセントリックな悪人役の印象が強かったが、いつしか「ハリポ」シリーズに出るようになり、「裏切りのサーカス」ではジョージ・スマイリー、そしてチャーチルでアカデミー賞主演男優賞って、勝ち組人生ゲームだな。
極論、鉤十字のTシャツでいきがっていたシド・ヴィシャスがウィンストン・チャーチルですよ。(笑)

かって主演女優賞を取った「メリル様のメリル様によるメリル様の」映画が批判されていたのに対し、本作のゲイリー・オールドマンは本当に彼を意識させない。顔立ちはもちろん、声も普段とは違うので、時々、目元に彼を見出すことができるだけ。

一方、アカデミー賞ばっかりにスポットライトが当たっているが、正直なところ、そこがなければ映画としてさほど面白いわけではない。
映画そのものはナチの猛進撃にダンケルクの撤退が重なり、抗戦継続か和平交渉かで揺れる英国内閣とチャーチルの決断が描かれるが、物語としては起伏に乏しい。
そうして思うと同じ戦時下の政治ドラマとして「日本のいちばん長い日」とか「ヒトラー最期の12日間」がいかに面白い映画かと再認識する。(ただし、映画に描かれるようにあそこまで和平交渉に傾いていたとは新発見。)

舞台もほとんどが室内、顔ぶれも似たようなブリトンばかりなので、その分、カメラワークと音楽が頑張って映画にメリハリをつけているのが今風。1950年代に同じテーマの映画が撮られていたら、さぞ退屈な映画だったろう。

せっかくなので、ゲイリー・オールドマンのチャーチルで「第二次世界大戦回顧録」を映画化してほしいが、上映時間は最低20時間はないとムリだな。

ところで、ジョージ6世役で出ていたベン・メンデルゾーンだが、ついてっきりナチのリッベントロップ外相役だと思っていたよ。(笑)






題名:ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男
原題:Darkest Hour
監督:ジョー・ライト
出演:ゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、リリー・ジェームス

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

モリーズ・ゲーム

2018年05月23日 | ★★★☆☆
スキーのモーグル種目でオリンピック出場目前の主人公モリーは、予選会で大事故に会い、アスリートの道を断念する。ロースクールへの進学を控えながら、バーのウエイトレスで糊口をしのぐ中で、高額を賭けてのポーカーゲームに関わるようになる。

パブのビジュアルだけだと、彼女がポーカープレイヤーかディーラーをやるかのようだが、カードを繰らなければ、ツボも振らない。彼女がやるのは高額のかかったポーカーゲームの運営。

何万ドルもが目の前で動くが、チップだけで運営し、しかも、テラ銭を取らないを取らないので、違法行為にはならない。日本で言えば、雀荘みたいな経営方針。

元々、頭がよく、接客にも長けた彼女は、プロフェッショナルなディーラーと美人の接待係、気前がよく本格的なプレイヤー、ゴージャスな会場を用意し、どんどんグレードアップしていく。合法性にこだわる彼女は当然、性的な接待も無ければ、バカな顧客には親身になって対応する。売れっ子銀座ママが高級雀荘を運営しているようなイメージを想像してもらえるとよろしい。日本版なら「森井ズ・ゲーム」。

が、参加者のグレードアップとともに1ゲームに十万ドル単位の金が動き、そのうち彼女もヤバイ橋を渡らざるを得なくなる・・・

ストーリーではオープニングでいきなり彼女が逮捕され、その後、イドリス・エルバ扮する弁護士との法廷闘争と前述の彼女の成功談が同時進行する。

成功談はテンションの高いモリーのモノローグと切り替えの早い編集で展開し、ちょうど「グッドフェローズ」の雰囲気に近い。一方、法廷闘争はカメラも動かず、淡々と理知的な会話で進行する。

主人公モリーを演じるジェシカ・チャステイン、やはり上手。
これまで沈思黙考で必要なことしか話さないキャラは一緒なのだが、とにかく喋りが早い。頭は良いが、行動原理が読めない役を自然に演じている。大きく開いた胸元で見たくもない胸の谷間も強調。

ただ、監督が生真面目なのか、ポーカーシーンも法廷シーンもきちんと描こうとするあまり描写が細かすぎて、基礎知識がない観客は置いてけぼりをくらう。ポーカーも法廷もいかにもアメリカ的な舞台なのだが、もうちょっと配慮があっても良かったのではないかと思う。

ところで、アスリートで頭がよく、度胸も据わっている女性なので、よく考えたら草薙少佐とカブるキャラ。「ゴースト・イン・ザ・シェル」の第二弾があったら、主演はジェシカ・チャステインだな。それはないか。






題名:モリーズ・ゲーム
原題:Molly's Game
監督:アーロン・ソーキン
出演:ジェシカ・チャステイン、イドリス・エルバ、ケビン・コスナー
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする