kamacci映画日記 VB-III

広島の映画館で観た映画ブログです。傾向としてイジワル型。美術展も観ています。

モリーズ・ゲーム

2018年05月23日 | ★★★☆☆
スキーのモーグル種目でオリンピック出場目前の主人公モリーは、予選会で大事故に会い、アスリートの道を断念する。ロースクールへの進学を控えながら、バーのウエイトレスで糊口をしのぐ中で、高額を賭けてのポーカーゲームに関わるようになる。

パブのビジュアルだけだと、彼女がポーカープレイヤーかディーラーをやるかのようだが、カードを繰らなければ、ツボも振らない。彼女がやるのは高額のかかったポーカーゲームの運営。

何万ドルもが目の前で動くが、チップだけで運営し、しかも、テラ銭を取らないを取らないので、違法行為にはならない。日本で言えば、雀荘みたいな経営方針。

元々、頭がよく、接客にも長けた彼女は、プロフェッショナルなディーラーと美人の接待係、気前がよく本格的なプレイヤー、ゴージャスな会場を用意し、どんどんグレードアップしていく。合法性にこだわる彼女は当然、性的な接待も無ければ、バカな顧客には親身になって対応する。売れっ子銀座ママが高級雀荘を運営しているようなイメージを想像してもらえるとよろしい。日本版なら「森井ズ・ゲーム」。

が、参加者のグレードアップとともに1ゲームに十万ドル単位の金が動き、そのうち彼女もヤバイ橋を渡らざるを得なくなる・・・

ストーリーではオープニングでいきなり彼女が逮捕され、その後、イドリス・エルバ扮する弁護士との法廷闘争と前述の彼女の成功談が同時進行する。

成功談はテンションの高いモリーのモノローグと切り替えの早い編集で展開し、ちょうど「グッドフェローズ」の雰囲気に近い。一方、法廷闘争はカメラも動かず、淡々と理知的な会話で進行する。

主人公モリーを演じるジェシカ・チャステイン、やはり上手。
これまで沈思黙考で必要なことしか話さないキャラは一緒なのだが、とにかく喋りが早い。頭は良いが、行動原理が読めない役を自然に演じている。大きく開いた胸元で見たくもない胸の谷間も強調。

ただ、監督が生真面目なのか、ポーカーシーンも法廷シーンもきちんと描こうとするあまり描写が細かすぎて、基礎知識がない観客は置いてけぼりをくらう。ポーカーも法廷もいかにもアメリカ的な舞台なのだが、もうちょっと配慮があっても良かったのではないかと思う。

ところで、アスリートで頭がよく、度胸も据わっている女性なので、よく考えたら草薙少佐とカブるキャラ。「ゴースト・イン・ザ・シェル」の第二弾があったら、主演はジェシカ・チャステインだな。それはないか。






題名:モリーズ・ゲーム
原題:Molly's Game
監督:アーロン・ソーキン
出演:ジェシカ・チャステイン、イドリス・エルバ、ケビン・コスナー
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ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル

2018年04月23日 | ★★★☆☆
日時:4月22日
映画館:イオンシネマ広島

第1作の「ジュマンジ」が20年前、続く「ザスーラ」が10年前。10年ごとに着実に新作リリースというのも稀有だな。
予告編では「ガンズ・アンド・ローゼズ」のタイトル通りの「ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル」が流れ、ヘビメタファンでないワタシでも知っている有名曲に懐かしさを感じてしまう。(「ダーティーハリー5」でも使われており、同作で被害者のロッカー役を演じたのが無名時代のジム・キャリーだったのだから、間違いなく年を取っている訳だ。)

ゲームの不条理な世界に巻き込まれるという設定の本シリーズ、前2作ではボードゲームだったが、本作では家庭用ゲーム機とソフトに変更されている。時代的にはちょうどスーファミかプレステ1がモチーフ。

話の前段として、縁もゆかりもない高校生4人が居残りさせられるだが、このシチュエーションが「ブレックファーストクラブ」みたいだという辺りですでに年寄り。観客の3/4は分からない。

高校生4人は現実の性格とはかなりギャップのあるキャラになり、ミッションをクリアしてゲームからお脱出を図ろうとする。ゲームの世界に入り込んだ映画というのはよくあるが、TVゲームの文法(お決まりごと)を現実世界に落とし込んだストーリー展開というのはあまりお目にかかった覚えがないのでなかなかユニーク。

ゲーム中のキャラでは、やはりドゥエイン・ジョンソンとジャック・ブラックが抜きん出いて、オイシイ役回り。劇場では吹き替えだったが、ぜひオリジナルの声で聞きたい。

これまた、今までと同じく、過去にゲームに閉じ込められたキャラクターが登場。彼は1995年に閉じ込められたという設定で、使う言葉が何かと古いというキャラなのだが、ここで「チョベリグ」なんて使うあたり、訳が上手い。(「もう使わないのか・・・」と思うあたり、すでにジジイ。)

何度も前述したように、今回、このジェネレーションギャップネタが頻発し、第1作目から知っている昭和な世代でも楽しめるようになっている。まあ、主人公たちなんて、ワタシの子ども世代だもんな。(いつまでたっても成長しないヤツ)

そう思えば、第1作のCGなんて、やはりチャチだったと思う。(遠い目)

10年後にまた本シリーズに再会できることであろう。

ところで、ワタシは時空を超えた再会モノにとても弱い。読めているとは言え、本作のエンディングでもちょっと涙してしまった。たぶん、「時をかける少女」以来の刷り込みなんだろうな。
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レッド・スパロー

2018年04月18日 | ★★★☆☆
ジェニファー・ローレンス演じる主人公はボリショイバレエ団のプリマドンナだったが、後輩の陰謀で大ケガを負い、バレエ団を引退する羽目になる。病気の母親の治療費を稼ぐために、ロシア連邦保安庁(FSB)の要職にある叔父の勧誘で、ハニートラップ専門の部門「スパロー」に入ることになる・・・
って、すげえベタな少女マンガみたいな導入。

同じころ、FSBは組織内にいるモール(情報提供者)の存在に気づき、CIAはその保護に躍起となる。「スパロー」となった彼女の任務は現地工作員であるCIA職員を篭絡し、モールの正体を暴くこと。

いつの時代だと思うような主人公にストーリーなのだが、ロシアの諜報員が主人公というのが珍しいし、CIA側のモールの秘匿という2つのストーリーが同時展開していくので、全然色っぽい女スパイの話とはならない。(元々、主人公がJ.ローレンスなので、その辺は期待できない。)

冷戦(死語)華やかし頃の「テレフォン」(←大好き)では米ソ(死語)共同作戦だったが、今回は米露が完全に対立しており、決着のつけ方が興味深いのだが、逆に言うとそこからストーリーが読めてしまう。

実質の悪役はプーチン似の叔父で、姪の身を案じると見せかけた卑劣漢。(職務熱心とも言う)こうお膳立てが揃うと、映画好きなら必然的に伏線とかエンディングとかも見えてくるのは仕方ないところだろう。

他にFBSの上層部はジェレミー・アイアンズにキアラン・ハインズ、スパロー部隊の指導教官はシャーロット・ランプリング。豪華すぎる顔ぶれで楽しくなってくるが、ロシア語っぽい無理な訛りもなく、スラスラ英語で話すから、違和感がありすぎる。(笑)

一方、ハニートラップの対象となるのが、ジョエル・エドガートン。色仕掛けに引っ掛かりそうでいて、腹の底が読めないクセ者役にはピッタリのキャスティング。まあ、状況からすれば露骨な引っかけなので、あれにかかるとしたらバカだ。行きつけの場所で出会う女性など、まず罠を疑え。(実生活じゃないよ。)

上映時間は2時間20分と長めで、ストーリーに説得力を持たせるために話があちこちに展開するのだが、まとまりが悪く、もたついて見えるのは残念。スパローの特訓シーンなどはもっと見てみたいのだが。

製作にハンガリー資本が入っており、ロシア、ブタペスト、ウィーン、ラングレーと世界各国を巡るロケ地と設定は、往年のエスピオナージュ物を彷彿とさせて嬉しいのだが、ちょっと分かりにくいのが難。

個人的にハマったのが、クレムリンの尋問官役だったハンガリーの女優、キンソ・ノラ・ペソ。クールな魅力で彼女のハニートラップなら喜んで引っかかる。(笑)どうやらハイドリヒ暗殺映画「HHhH」にも出演しているらしい。

ところで本映画を鑑賞中に珍しく上映中断のアクシデント。ショッピング施設で火災放置期の誤作動があったそうだが、この手のトラブルはフィルム時代以来。修復後、数分前のところから再開となったのだが、ハードな拷問シーンを2回も見せられるとは思わなかった。
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デトロイト

2018年01月31日 | ★★★☆☆
日時:1月27日
映画館:サロンシネマ
パンフレット:A4版720円。

ハート・ロッカー」「ゼロ・ダーク・サーティ」と骨太な作品を連発するキャスリン・ビグロー監督の最新作で、1967年のデトロイト暴動さなかに起きた事件の映画化。

映画は緊張感に満ちたガサ入れから開幕するが、当時のニュース映像を思わせる不安定で切り替えの早いカメラワークで一気に当時の空気感の中に没入させてくれる。

暴動の顛末を大局的に描くのかと思いきや、あるモーテルを舞台に事の行き違いから起きた実際の事件を描いている。(この事件の言い方が難しくて、違法捜査で殺人で暴力事件で人権侵害で様々な側面を持ち合わせている。)

警察と州兵に包囲されたモーテルの客(主に黒人)は市警察に一時拘束され、半ば拷問の取り調べを受ける。進展しない事態に警官の苛立ちは頂点に達し、やがて暴発していく。

神経を逆撫でするような展開でしかも司法側が全くアテにならないという絶望的な状況。さらに実際の事件を取り上げているので、映画的な救いの手も全く期待できない。善悪に関わらず、人が死ぬ。蒸し暑さで絶えず汗だくな姿とも相まって、とにかく重苦しい画面が責め苦のようである。

警官たちがやっていることはナチとか極右政権の蛮行と大差ないと思えるのだが、警官たちが妙に親近感のある顔で何となく話せば分かるみたいな雰囲気を漂わせているあたりがクセモノ。

さらに、事件の根底にはアメリカの人種的偏見がある訳で、今のアメリカの現状と重ね合わせると全然シャレにならない。製作時期を考えると、偶然だったとは言え、製作陣の感覚の鋭さに感心してしまう。

さて、これまでビグロー監督作品といえば、どちらかと言うと登場人物を突き放したようなところがあって、「キャラクターの生死など知ったことではない」という冷徹さが感じられたが、逆に今回は登場人物の事件後の顛末だけでなく、犠牲者親族のやりきれない思いまで描写しており、より映画を印象深いものにしている。






題名:デトロイト
原題:DETROIT
監督:キャスリン・ビグロー
出演:ジョン・ボイエガ、ウィル・ポールター、ハンナ・マリー


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キングスマン ゴールデン・サークル

2018年01月16日 | ★★★☆☆
日時:1月13日
映画館:バルト11
パンフレット:A5変形720円。前作と同じスタイル。インタビュー満載。

元々シリーズものじゃない作品でここまで前作を引っ張っているのは最近珍しいくらい、ド直球な続編。「キングスマン」を観ていないと付いていけない箇所も多いので、これから観ようという方は必ず前作を観ておいてください。

前作で晴れてキングスマンの正規エージェントになった主人公、今回開幕早々、命を狙われ派手な戦闘に巻き込まれる。60〜70年代のスパイ映画のフォーマットを取りながら、独特のセンスはパワーアップして健在。前作では取っ付きにくさもあったが、今回はすんなり頭に入ってくる。

陰謀の発覚というスパイ映画に不可欠なプロセスは省略され、いきなり今回の悪役、ジュリアン・ムーアのサイコな登場。今回、続編という以上に期待大だったのがジュリアン・ムーアの素敵すぎるキャスティング。悪の組織ゴールデン・サークルをあんな風に紹介されると入りたくなるよなあ。もちろん、ムーア様お手製のラブリーなハンバーガーもOKです。(ちなみに、本タイトルは麻薬組織の「ゴールデン・トライアングル」と南北戦争期にあった秘密結社「ゴールデン・サークル騎士団」をもじったものだろうけど、当タイトルを聞いた時、「ゴールデン・○○○○」とエロな勘違いをしていた。本編でもそれらしいセリフがあるので、それもひっかけているんだろう。)

実は本筋とはあまり関係のない悪の組織のディテール紹介は大事。イアン・フレミングの「サンダーボール作戦」も3章使ってスペクターとブロフェルドとラルゴを紹介していたし。

予告編どおりキングスマンはゴールデン・サークルの手により事実上の壊滅、バーボンメーカーの米国ステイツマンと共同戦線を張って陰謀を阻止しようとする。米英の感性の違いがネタとして面白く、スコッチとバーボンのウィスキー談義なぞ、なかなか笑える。
もちろん、007へのオマージュも楽しくて、水陸両用車や雪山山頂のひみつ基地、国旗がデザインされたパラシュート、ミンチ製造機、ひみつ兵器満載のアタッシュケースなど懐かしいモチーフがたくさん。たぶん、こういうディテールを考えているときが一番楽しいんだろう。

前回、良くも悪くも先の見通せないストーリー展開には多少、面食らったが、今回は耐性ができたのか、受け止めやすかったな。

ムーア様以外のキャスティングとしては、マーク・ストロングが相変わらず素敵。何をやっても賢人っぽく見える。あと、バカな相方役が似合うチャニング・テイタム。あのダンスはモンティ・パイソンのバカ歩き省か?

全体的に面白かったが、新鮮味が薄くなったという点で
【評価】
★★★☆☆

ところで、今回もIMAXシアターで鑑賞。ムーア様の小じわまでしっかりと見えますが、その辺がまた色っぽくてたまりませんわ。






題名:キングスマン ゴールデン・サークル
原題:KINGSMAN GOLDEN CIRCLE
監督:マシュー・ボーン
出演:タロン・エガートン、コリン・ファース、ジュリアン・ムーア、マーク・ストロング
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ドリーム

2017年10月23日 | ★★★☆☆
邦題にポスターの写真とシンガー系の映画かと思い、完全にノーマークだったが、これが黎明期の宇宙開発に携わった黒人女性の映画。
そういえば、先日のNHKの「コスミックフロント」でこのドキュメンタリーを放送していたじゃないか。(余談だが、時節ネタを取り上げる「コスミックフロント」の機動力はすごい。)

1950~60年代、女性で黒人というハンディを乗り越えて、自分の才能で道を切り開いていく姿は映画の王道。無意味な差別など今から見れば、タチの悪い冗談としか思えないのだが、わずか50年前はこれがアメリカの現実だったのだなと実感させられる。超エリート集団であるNASAでさえ、そうだったのだから、人間の偏見とは恐ろしい。そこを今や、イヤミなマネージャー役が似合う年ごろになったキルステン・ダンストが好演。

とはいえ、基本的に男性中心の考えに近いワタシにすれば、頭ごなしに上司に直訴する主人公の姿にはちょっとムカッとくるけどね。(笑)

また、宇宙開発黎明期の時代感が素敵で、コンピューターもろくになかった時代に手作業と試行錯誤で人間を宇宙に運んで行った勢いが伝わってくる。実写フィルムとCGを組み合わせた発射シーンがまたいい。露助のR-1ロケットが打ち上がれば、レッドストーンも大爆発する。60年代のインテリアデザインも味があるなあ。

ただ、ストーリーはともかく全体に低予算感があるのは否めない。
こういったものは、鑑賞中に一度、気になりだすと、後は止まらなくなるものだが、ジョン・グレンが格納庫から出てくるシーンはちょっとなあ・・・。あんなところを歩いてこないだろう。

だが、それ以上に不幸なことにケビン・コスナーの存在が低予算感を一気に高めてしまっている。
キャストの中で一番、ネームバリューが高く、要求は厳しいが理解もあるという理想の上司像を演じているが、実際のところ、

軌道計算の取りまとめからフライトディレクター、人事、トイレの管理まで一人で出来るかあ!

現実にはそれぞれの部門に管理職がいるだけに、ケビン・コスナーが活躍すればするほど、俳優の少なさが目に付くという悲しさ。
宇宙開発ものが好きなだけに、本来のテーマに気持ちが入らなかったなあ。

ところで、主演のタラジ・ヘンソン。どこで見たのかと思えば、「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」の狙撃手でしたね。






題名:ドリーム
原題:Hidden Figure
監督:セオドア・メルフィ
出演:タラジ・P・ヘンソン、オクタビア・スペンサー、ジャネール・モネイ、ケビン・コスナー
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ハイドリヒを撃て 「ナチの野獣」暗殺作戦

2017年09月18日 | ★★★☆☆
日時:9月5日
映画館:イオンシネマ広島

そもそもネタゆえに日本公開さえ不安だったけど、かろうじてひっそりと公開。いつか広島にも来てくれれば御の字と思っていたら、ほぼ時間差ナシでイオンシネマ広島で公開。

お嬢さん」といい「皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ」といい、最近、イオンシネマのセレクトは侮りがたく、うかうかしていられなくなってしまった。まさか新聞の広告面で上映を知るとは思ってもみなかった。

さて、「死刑執行人もまた死す」「暁の七人」で描かれたプラハでのハイドリヒ暗殺計画を描く映画なのだが、過去の作品とは違い、本作ではチェコの暗殺実行メンバー2人の行動のみにスポットを当て、映画としては実に地味。止む得ないとは言え、派手な放題とは裏腹によくできたドキュメンタリー番組っぽささえ感じられる。
まあ、事件そのものが明快でわかりやすいから、ほとんどアレンジしようがないのも一因であり、製作された映画本数にもそれは表れていると思う。

占領下のプラハ市民は2人に協力しながらも、暗殺作戦の成否に関わらず、ナチの激烈な報復が予想されるだけに二の足を踏んでしまう。(実際、映画でも少し触れられるが、誤解からリディチ村一つが抹殺された。)この辺の逡巡は当然だと思うが、これまで映画で描かれなかったこの視点は新鮮。
ワルシャワ44」もそうだったが、占領下での抵抗者に対しては占領側もより無慈悲になれるかのようだ。

実行メンバーの視点の映画なので、ハイドリヒも事件の一瞬しか登場せず、劇中、なぜ「野獣」と称されるのかは描かれない。ちなみにこれまでの映画の中では、ハイドリヒ本人に一番よく似ている。
「暁の七人」ではハイドリヒを「ナチ役なら世界一ィィィィィィ」のアントン・ディフェリングが演じていたが、実際のハイドリヒとは似ても似つかず。アントン・ディフェリングがナチの制服を着ていたら、何でもいいんだけど。

その後、史実通りに密告があり、2人は他のメンバーと教会に追い詰められる。ステン短機関銃となけなしの手榴弾で立てこもるが、立てこもり側が弾撃ちすぎ。まあそこは映画だから目をつむろう。それより、MG34機関銃の銃声が大迫力。その銃撃音にナチの将校が耳を塞ぐシーンがリアル。

プラハでのロケや時代考証が見事で、チェコ映画人の熱意が画面からも伝わってくる。地味で印象に薄い映画だが、良い映画。

ちなみに、暗殺されたハイドリヒの嫁は「チェコ人の頭蓋骨でプラハの道路を敷き詰めてしまえ。」とか言ったらしい。






題名:ハイドリヒを撃て 「ナチの野獣」暗殺作戦
原題:Anthropoid
監督:ショーン・エリス
出演:キリアン・マーフィー、ジェイミー・ドーナン、トビー・ジョーンズ
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スパイダーマン ホームカミング

2017年08月26日 | ★★★☆☆
日時:8月19日
映画館:イオンシネマ広島

サム・ライミ版のスパイダーマンは全作観たのだが、徐々に話が暗くなり、CG度合いも加速、トビー・マグワイアがオッサン化してきたこともあって、三作目ではかなり引いていた。

そのせいで「アメージング・スパイダーマン」シリーズは敬遠していたし、新シリーズの話題を耳にしても期待感も乏しかった。(3回もシリーズ化を目の当たりにしているのだから、歳をとるわけだ。)

ところが「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」に登場した、なんだかこれまでと違うスパイダーマンに好印象。新作への期待が高まった。

で、今回のスパイダーマン、もうスパイダーマン、最初からスパイダーマン。
クモに噛まれるくだりもベンおじさんの死も省略。
いいのか悪いのか分からないけど、話が早い。

その分、前向きすぎるくらい前向きな若者の描き方がこれまでになく新鮮。映画の主人公が増えてくると描き方も多様化して、様々な切り口が生み出せるなあ。(ただ、スパイダーマンのアクションがいつものようにCG的なのはいさかか興ざめ。)

今回のスパイダーマンが庶民的なら、マイケル・キートンの敵役も庶民的な悪党。ただ、暴れっぷりが豪快で、ワクワクさせられる。
だが、それよりも見せ場はピーター・パーカーとの素顔対決のシーン。もう、この映画一番のスリリングなシチュエーション。マイケル・キートンの陰湿顔と、対して主演のトム・ホランドの若さが一層、輝く見事な展開です。

で、今回のお目当てのひとりは、もちろんマリッサ・トメイのメイおばさん。世にいう美魔女。「シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ」からもうワクワクだったが、「ベイマックス」のおばさんと並んで、ここ数年の中でも際立って危険な香りが漂っている。マイケル・キートンが「お前の家族も危険な目にあう」とピーター・パーカーを脅すが、なにも彼が手を出さなくても、私生活で自分から危険な思いをしてそうだ。

というわけで、マリッサ・トメイ見たさに次作にも期待です。

ところで、あとで分かったのだが、ダメージ・コントロール局のイヤミな白髪ババアを演じていたのが、なんとタイン・デイリー!「ダーティーハリー3」「テレフォン」「女刑事キャグニー&レイシー」の彼女ですよ!
これまでにもマーベル作品には、パワーズ・ブース、ジェニー・アガター、ハリー・ディーン・スタントンと70年代アクション映画俳優が顔を出しているが、誰のコントロールにせよ、このリスペクトは嬉しいなあ。






題名:スパイダーマン ホームカミング
原題:Spider‐Man:Homecoming
監督:ジョン・ワッツ
出演:トム・ホランド、マイケル・キートン、マリッサ・トメイ、ゼンデイヤ、ロバート・ダウニーJr.
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ライフ

2017年07月18日 | ★★★☆☆
日時:7月11日
映画館:バルト11
パンフレット:B5変形横版700円。映画の割に充実した内容とデザイン。

国際宇宙ステーション(ISS)で、火星から人工衛星が持ち帰った土壌サンプルを検査中、初の地球外生命体の存在を確認。世界中が歓喜に包まれるが、ふとしたはずみで生命体(カルビンと命名)がクルーを捕食し始める。

「密閉空間に宇宙モンスターがやってきて人を襲う」という50年代から脈々と続く超王道ストーリー。

だが、さすがにそこは2017年。オープニングのワンカット長回しによるISSでのシーンなどかなりリアルに出来ているし、そこから続く世界中の様子など疑似ドキュメンタリーを思わせる。全編宇宙空間ということもあり、「ゼログラビティ」meets「エイリアン」をいった趣もある。

カルビンの存在も普通の生物とあまり変わらない。寄生したり、内臓を食い破ったり、同質化したり、人間の死体を操ったりしない。襲われたクルーも淡々と死ぬ。
そういった点で非常に大人しい印象を受けるのだが、その分、リアルに映り、皮肉なことに却って恐怖感が増している。

これまでの数々のSFホラーを思い出させて楽しいのだが、特に音楽の雰囲気やあるクルーの死に様など「遊星からの物体X」へのオマージュを思わせる。

配役の顔ぶれがなかなか豪華なのだが、「ナイトクローラー」に引き続いて、ジェイク・ギレンホールとクライブ・オーウェンの顔がかぶってしまうのはなぜ。

かかる緊急事態に悲壮感を感じないのは、カルビンが邪悪な訳ではなく、単に生存本能に従う生き物に見えるからだろう。弱肉強食の自然の摂理に従っているだけで、まあ、カルビンが地球にやってきて人類を滅亡させても、それはそれで仕方ないかな。






題名:ライフ
原題:LIFE
監督:ダニエル・エスピノーサ
出演:ジェイク・ギレンホール、ライアン・レイノルズ、レベッカ・ファーガスン、真田広之
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メッセージ

2017年05月25日 | ★★★☆☆
日時:5月20日
映画館:バルト11

突如、世界中に約450メートルの巨大物体が12基、出現。世界各国が混乱する中、言語学者のルイーズは巨大物体との意思疎通のため、米軍から招集される。

こういった真面目系の異星人とのコンタクトものと言えば、やはり「コンタクト」。この作品のおかげで、宇宙ネタに開眼したと言っても過言ではない。(宇宙ネタは未だによく理解できないことも多いが。)

ルイーズとジェレミー・レナーの物理学者、米軍は、かなり異形な訪問者「ヘプタポッド」との意思疎通を図ろうとし、徐々に彼らの真意が見えてくる。一方、残りの世界11か所では対応が異なり、一触即発の危機が高まる。
と言うだけなら、これまでのSF映画と変わらないのだが、そこに過去に娘を病気で失ったルイーズの意識が関わってくる。現在と過去を行き来する彼女の意識は何を意味するのかというところが本作の注目点。

未読の原作小説は評価が高く、たぶん、叙情的な展開は非常に小説向けなのだと思う。ヘプタポッド造形や彼らの言語も見せ方が上手い。独特の音楽と音響も雰囲気を高めてくれる。

ただ、それが映画的に見栄えがして面白いかと言えば、それは別。これだけの大事件を二人の科学者だけで対応しているように見えてしまうし、ストーリー展開も多少起伏に乏しいように思う。

高く評価する人が多いのはよく分かる一方で、映画が終わるやいなや、エンドクレジットも見ずにそそくさと帰っていった観客が多かったのも印象的だった。

ところで、後で人に教えてもらったのだが、ポスターのタイトル中、「セ」だけ書体が違うらしい。ネタばれになりますが、あまり意味はありません。







題名:メッセージ
原題:ARRIVAL
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
出演:エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー

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