ちょっと出遅れたが、周りでも話題になっているので、ようやくイッキ見したHBOミニシリーズの「チェルノブイリ」。
当然、救いのない重苦しい内容なのだが、これが実によく出来ていて面白い。
チェルノブイリ原発事故の発生から現在まで約5時間で語るのだが、脚本の面白さやキャラクター造形が巧みで全く飽きさせない。
もちろん、ストーリーは絶望的だし、オチも分かっているのだが、その中での人間の生きざま、科学者、大臣、消防士、炭鉱夫、兵士、一般市民、KGBなどなどをさまざまなエピソードが語られる。 一部脚色があるものの、ほぼ史実通りの内容で、被ばく死の様子など恐しい迫力を持っているし、(被ばく死の実態を見たことがないので、リアルかどうかは分からない。)炉心が溶融してチャイナシンドローム化した最悪のシナリオなど、現実的な同世代の恐怖としてのしかかってくる。
ワタシ自身は原発に賛成でも反対でもないが、こういったドラマを見ると、原発の必要性と日々の生活のありようを改めて考えなくてはならない。
このドラマの素晴らしさをさらに高めているのが、美術とキャスティング。 ロケ地はウクライナとリトアニアらしいが、ロケできる資金力もさることながら、景色や建物が醸し出す雰囲気だけで説得力が違うし、UAZやGAZのトラック、軍用車両などの実車がわんさか出てきて、それだけでもワタシは満足。(セリフが英語なことは目をつむろう。)
さらに主役の二人が素晴らしい。主役の科学者にジャレッド・ハリス、現場責任者の大臣にステラン・スカルスガルド。普通なら主役じゃない顔の二人。後者はまだ知名度があるものの、ジャレッド・ハリスなんて個性的な悪役顔で以前から好きな俳優だが、一般には認知度があるとは言えない。その顔を主役に据えられる俳優の層の厚さを改めて実感する。 政治家と科学者という対立軸のふたりが史上初最悪の事故の中で職務を果たし、さりげない友情を培うあたりなど涙。オッサンが目で友情を語る作品に弱いのだ。
最終話のエンディングで登場人物のその後をちゃんと語るあたり、製作陣の真摯な姿勢を感じる。 当然辛い作品だか、また見よう。
ところで、ジャレッド・ハリスは、ハリポタシリーズのダンブルドア校長のリチャード・ハリスの息子なのだよ。
題名:チェルノブイリ 原題:CHERNOBYL 監督:ヨハン・レンク 出演:ジャレッド・ハリス、ステラン・スカルスガルド、エミリー・ワトソン、ジェシー・バックリー |