神奈川絵美の「えみごのみ」

上布のお仕立て

冷たい雨が続くここ神奈川。
一日だけ小休止してくれた週の真ん中に、
着物を着てお出かけした。


吉田美保子さんの「シスレーの居る風景」に
佐藤節子さんの「小鳥帯」を合わせて。


季節の少し先を行く、春爛漫なコーデだ。



さて、向かったのはとても久しぶり。
横浜の山本きもの工房。


山本秀司さん、春号の『季刊 きもの』で
長襦袢の仕立てについて熱く語っていらっしゃいます!

昨秋亡くなった祖母の形見である
能登上布のお仕立てをお願いすることに。


秀司さん、拙ブログの記事&写真を見てくださっていて、
実物を出す前から、「いやー、その能登上布はいいものですよ」と大乗り気。
「だって、今はもうつくられていないですもん」
糸だって、こんな細い糸もうないですし。


…と言いながら、実はですね、と
奥から紙で丁寧に包まれた反物を持ってきた。
「うちにも2反あるんです。同じ時代と思われるものが」


写真左がその反物。
十分に砧打ちされたその薄さといい、つるっとした感じといい、
よく見れば糸の細さも、そっくり!
ある呉服屋さんが店を閉めることになった際、縁あってこの工房に
きたと秀司さん。
並べてみても、ほんの少し地色が違う程度だ(写真右。手前が私のもの)。


「これらは昭和40年ごろには、つくられなくなったものと思われます」
一言で能登上布といっても、時代によってさまざまなんだなあ。
何でも昔の方が良いわけではないけれど、
少なくとも、ブランド名「だけ」で飛びついちゃいけないなあ。


一般的には、湯通しをして糊を落としてからお仕立てするそうだが
「これだけ年数が経っていて(47~8年)、カビ一つ出ていないから
 一気に落とすこともないでしょう。
 着ながら、そして自身で手洗いしていく中で、自然に落ちていくのでいいのでは。
 杓子定規に、糊は必ずきっちり落とすべき、というものでもないんですよ。
 糊が残ることでハリや強度が保たれるというメリットもありますし。」
とのアドバイスをいただき、つるっとしたこの状態のままお仕立てをお願いすることに。


仕立て上がりは6月の予定。夏になったら、父に見せることができるかな?


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工房にはこんな夏着尺も。
わずかにブラウンがかったグレーの、涼しそうな越後上布。
重文のとは違うけど、糸が細く丁寧なつくり。
反物価格ひとケタ万円はかなりお値打ちかと……。

そのほかにも、着物愛好家には見逃せない
とーっても耳寄りな情報をいただきましたが、
長くなってしまったので、来週お知らせします。

コメント一覧

神奈川絵美
Tomokoさんへ
こんにちは
白山、牛首、力のある布ですよね。私はどちらにもまだご縁がないなあ…。
それにしてもこの能登上布、昭和40年ごろにどんな経緯で祖母のもとにきたのでしょうね。
生きてたら訊いてみたかったな。お仕立て中に夢か何かで“お告げ”でもあるかしらん
Tomoko
あ~い~ですねえ~♪ あいにくと富山にはとくにこれといった織りものはないので、前田のご本家の加賀藩の白山や牛首に手を出しましたが、能登上布はまだご縁がありません。いつかご縁があるかしらん?
お祖母さんもきっと絵美さんのそばで、この成りゆきを嬉しく見ていらっしゃいますね~♬
神奈川絵美
straycatさんへ
こんにちは
ぱっと見、宮古みたいなのですが、山本さんによると「透かしてみると違いがわかる」そうなんです。やっぱり苧麻とラミーとでは、透かしたときの糸の感じや織ムラの出方が違うんですって。

糊が落ちてくると、やはり風合いは変わるそうです。
しっとり目に落ち着いていたのが、(糊が落ちれば多少糸が水を含みやすくなって)ぱさっとした感じになるとか…。
あー、やっぱりマニアックですねー
神奈川絵美
すいれんさんへ
こんにちは
今年はぜひ上布デートしましょう
すいれんさんの宮古、拝見したいですー(着物は工房で見ていますが、お召になった姿をぜひ)
今回のお仕立て、袖口だけ宮古式?にテープのようなつくりで補強していただくことにしました
straycat
絵美さん こんにちは♪

うわっ、すごく手をかけられた亀甲絣ですねぇ。
蠟引きのような艶もあるということですし、宮古などとどう違うのか素人にはわかりませんね。
糊を落とさずに着るというのも初めて知りました。
糊が落ちてくると艶も減退するのでしょうか??
あ、またマニアックな方向に行ってしまった
仕立て上がりが楽しみですね
すいれん
http://www.tomoko-358.com
絵美さま
いよいよおばあ様の上布のお仕立てですね!さぞおばあ様もお父様も喜んでいらっしゃることでしょう。私も人ごとながら楽しみ。今年の夏はどんなに暑くてもぜひ、上布でお目にかかりましょう。去年は山本さんの上布1回くらいしか着れませんでした。
神奈川絵美
りらさんへ
こんにちは
そうなんですよね、昔のものがすべて良いわけではないですが、この上布を見ていると「手のかけ方」が半端ではないな、と思います。

コーデはたぶん、すでに持っている紺色の夏着物(ぎりぎり宮古)と同じような感じになると思いますが、予算に余裕があれば、白っぽいミンサーが欲しいなあ
りら
楽しみですねぇ!!
やはり信頼できるプロ中のプロ!という方に見ていただくとその真価が判りますよね。
昔の上布は本当に涼しいと聞いたことがあります。
楽しみですねぇ。
シックな着物にどんな帯を合わせられるのか?拝見する方としては、それもまた楽しみです~!!
神奈川絵美
オンブルパルフェさんへ
こんにちは
早速のコメント、ありがとうございます
上布関係はどうしても以前の方が…ということになりますよね。祖母が大事に持っていてくれて良かったです。
オンブルパルフェ
羨ましいです
http://ameblo.jp/herend-tarte/
すごーい上布ですね。羨ましい!です。織のお着物は、ちょっと前の織られたものがいいですよね。ホント素敵。
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