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こんちゃんはお花が好きだった。
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いや正確には、彼の好きなのは、お花のまわりにおちている、魅力的なおてがみの数々だったろうけれど。
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これなんか毎年、咲くのを楽しみにして、春でも夏でも秋でも冬でも、ひっこぬかれたあとでも、同じ場所を、ふんすかふむふむ、愛でていた。
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切り花は苦手だった。
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花なんていうものは、自然の中にあるからこそ美しい、とかなんとか、思っていた。
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でも。こんちゃんはおはながとても好きだった。
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ゆらゆら揺れる菜の花(ほんとはのらぼう)のお花畑、楽しそうにしっぽをゆらゆらゆらしながら、歩いていた。
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おはなの中にいると、こんちゃんはごキゲンに見えた。
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月命日や、なんでもない日。おはなを買ってきて、飾る。
毎日同じ表情なはずなのに、ふしぎと、笑っているように見える。
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ころすけの、抜けたヒゲをみつけるたびに、お供えしている。
ひげはやけに立派で、実に黒々としているので、たぶん、喜んで(付けひげ)いると思う。
ちなみに奥のほうに横たわっているオレンジや紫のは、こんちゃんの天敵である姪っ子が、おりがみで折ってくれたおはな。
こんちゃんのために、ならいたての方法で、おはなをつくってくれた。
ちょっと不細工だけど、8さいの女の子にしかつくれない味わいがあってかわいいから、ずっと飾ってある。
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おうちにおはながあるのも、いいもんだ。
もじどおり、こころにちょっと、花が咲く。
こんちゃんに、教えてもらった、生活を楽しむ、いい方法だ。
おはながかわいいから、腰掛けて眺めながら、かわいいねえ、きれいだねえ、なんて、ちょっと話す。
特別に話すことはもうなにもないんだけど、おはながあると、つい、向かい合って、なんだかんだ話しかける。
そういう時間が、しあわせだ。