犬がおるので。

老犬から子犬まで。犬の面倒をみる暮らし。

腹は赤いか白いのか。

2012年02月29日 | おせわがかり日誌


「くんくんくん、はるのによいがするのよね」

ある朝、おれこと一緒に散歩をしていたら、いつもの神社の森がやけににぎやか。

「昔は若かったんだろうな~」というような老男老女が、きゃぴきゃぴと、ゲートボール大会をしているのだった。

邪魔にならないように散歩したいが、森全体を使って遊んでいるので無理。

しぜん、散歩は「割愛コース」となった。

いつものようにお賽銭⇒お参りをしていると、オレコが猛烈に引っ張る。

お祈りのときは隣に座って待っている子なのにどうしたどうした、と思ったら、

あらら。血統書付きの犬が素敵な奥様と一緒にお散歩してるではないか。

テリア系だがなんという種類か名前は定かじゃない。

が、脳内で「名前はわからんが知ってる知ってるCMとかでよく見る見る」という声がする。

両者しばらく見つめあい、めずらしく、あちらから寄ってきてくださった。

しかし犬が興味を持っていたというより、飼い主の奥様が寄ってきた感じ。

テリア君、しつけのいい「男の子」であった。

あんまり上品でおとなしいので女の子かと思ったくらい。

奥さんは無類の犬好きでオレコのことを「かわいいかわいい」となでるのだった。

「女の子で1歳と少し」と聞いてからはさらに目じりをたらし「かわいいかわいい」となでてくださった。

最近、めっきり大人ぽい顔つきになり、あきらかにうちに来た頃より子犬度が抜けてきたと感じていたが、

それより年上のわんこと一緒に暮らす人からはまだまだ幼く見えるのであろうか。

私にはまだ、わからない。



思わぬことで、いつものように、のんびり好きにお散歩ができなかったのであるが、

オレコは初めて出会うお友達と少し交流できてウレシそうだった。

ゲートボールに参加せず、集会所の空気を入れ替えていたおばあさんが、

「あら犬が散歩してるわ」

と笑顔の声で言った。そう。犬は散歩するのよ。



その日は老人づいていたのか、帰り道、タクシーから降りてきた「小さなおばあさん」を見かけた。

いつもの散歩コースにある、平屋のこじんまりとした、野鳥が好きな木がいっぱいある、こぎれいな小さな家の主。

結構なお年のようで、外出時はいつもタクシーを利用している。足が弱ってるのだ。

親切な運転手さんのときは玄関までつれてってもらってるが、どうやらその日は「親切」じゃなかったらしい。

家の前でおろしてもらったのだが、向かいの家の砂利の駐車場で、よろよろとよろめいていた。

足元に大したこと無い「買い物袋」が3つ。玄関まではほんの数歩だ。

一瞬迷ったが、声をかけて、「買い物袋を運びましょうか」と申し出た。

ためらっていたようだったが、往生するほどのことでもなし、おばあさんの腕を取り、荷物を持って、玄関まで誘導。

「悪いわねえ、いつも病院へ行った帰りに、ミニストップで買いものするんだけど、重くてね・・・、あらかわいいのきてるじゃないの(オレコ)」

というようなことを、急いでつぶやいている間に、おうちについた。ありがとう、ありがとう、といわれた。

大したことではないので「それでは」といって行ってしまったのだった。

だけど老女にとっては「大変なこと」なのだった。

9時過ぎの出来事だったが、老女の一日(もしかしたら1週間)のうちで一番大変なイベントだったのかもしれない。

あの様子じゃそうそう出歩くこともないであろう。「けんけんぱ」程度の数歩がキツイなんて。

私なら小指で持てる(マジで)ほどのほんのちょっとの荷物が重いなんて。一人暮らしらしいのに、大変だ。


『御用聞き』の時代だな。


今こそ、昔の酒屋さんだの、八百屋さんだの、魚やさんだのが、必要とされている時代だ。

秩父のような『老人が住みやすい町』あるいは春日部のような『若者と老人が共存できる町』づくりが必要だ。

そこに『子育てがしやすい』も加わってほしいものだ。できれば『動物と共存できる』も。



ところで、数日前に、ムクドリほどの大きさの、鶯のような鳥を見た。

鳴き声はわからないが、いつもの神社の森を低空でとび、茂みの奥で、地面の枯葉の何かをつついていた。

そのこともあって、この日はどうしても神社に行き、確かめたかったのだが、できなかった。

幻でなければ野鳥にはいつかまた会えるであろう。オレコの散歩は晴れればまた明日行けばいいのだ。

老人たちの楽しみを奪うこともあるまいて。



記憶をたどり、調べてみたら、アカハラか、シロハラのどちらかではないかと思うようになった。

なんとなく、アカハラな気がするが、シロハラだったような気もする。・・・いやシロハラだったのではないか。

尾や羽の一部に『緑色』が見えたような気がするが、それだけではわからない。

頭上高い木の上から、舞い降りてくる姿がとても美しかった。鳴き声は定かでない。

しようがない。また森に行って調べるしかあるまいな。