高校への通学バイクだったAX125を事故で全損してから暫くの間は心配をかけた親への手前バイクの無い生活を送っていた。
けれども、バイクに乗りたい欲求は抑え難く親には秘密でバイクを入手した。
ホンダXL125S
2年ほどバイクに乗れなかった間にはそれなりにバイクへの知識を増やした。
そして選んだのは空冷4スト単気筒のオフロードバイクだった。
最初に乗ったAX125の高回転型2スト2気筒エンジンとは正反対の性格だった。
低回転からトルクが出て素直に吹けあがるエンジンはクラッチミートに気を使わずに乗り回せた。
何よりエンジンブレーキがちゃんと効くってのは山道を走り回るのにとっても有難い事だった。
軽量な車体と相まって行けない道は無いと思わせてくれる相性の良い相棒になった。
アクセル全開で絞り出すパワーの使い方も習熟した(つもり)。
通勤にも使ったり、休日には文字通りに野山を駆け回って15年にもなる長い付き合いになった。
如何ともし難い絶対的なパワー不足にはキタコのボアアップキットを組み込んで対応した。
日帰りで行ける地域の林道は制覇したんじゃ無いかと思えるくらいに野山を駆け回ったある日、
コーナーの浮き砂にフロントを滑らせて制御を失い林道をはみ出して路肩を転落。
林道より数メートル(たぶん3m程)下に小さな台地があって其処で止まった。
深い草地のクッションのおかげで幸い怪我も無くバイクも壊れなかったが、
そのたったの数メートルの落差をバイクを引き揚げるのに死ぬほど難儀した。
脳天気バイク馬鹿を自認する自分だったけど、さすがにこの時は考えた。
林道転落からバイクを林道に戻すまでの数時間にその林道の通行は皆無。
全くの孤立無援状態だった。
今回はたまたま怪我も無く無事自力回復できたけれども万一怪我でもしようもんなら、あの小さな台地で死んじゃう事だって無いとは言えないよなって。
そうなったら家では何処へ行ったかも判らずに失踪届なんか出されて、そのうち山菜取りのおじちゃんなんかがたまたま通り掛かるまで何年も放置されて、見つかった時にはバイクの横の白骨体になってるかも知れない。
二番目の子供が生まれたばっかりの頃だったし、それからは単独の林道走行は激減した。
そんなこんなでXLとの長い蜜月は終わりへと向かう事になった。
ボクは初めてバイクに乗るって方は、XLみたいな小型軽量の空冷単気筒オフロードバイクから始めるのが良いと思っている。
バイクを操るって事を文字通り体現できるからだ。
一発一発のエンジンの爆発を感じてアクセルを手繰る。
メカもシンプルだからある程度の整備を覚えるのに良い勉強にもなるだろう。
このXL125Sはその後友人に譲ったけど、大切にしてもらってようで40年以上経った今も現役で稼働しているらしい。有難い事だ。
ボアアップの時に取り換えたオリジナルの空冷シリンダーは今でも部屋のオブジェになってるし
あのバイクの記憶は何十年たってもボクの宝物なんだ。