2000年から2001年に年代が変わるのは、
20世紀から21世紀になるということで、
世紀を超えた対談が法隆寺と唐招提寺でおこなわれた。
瀬戸内寂聴さんと五木寛之さんの顔合わせだ。
秋の日、生憎の雨。
法隆寺の石畳を歩きながら寂聴さんが、
「今から一瞬だけ雨を止ませましょうね~」
と、おれの顔を見て言った。
ふざけているのでも真剣でもない表情。
つまり、普通の雰囲気なのだ。
おれは、寂聴さんの持っている傘を持った。
彼女にうながされてのことだ。
両手が空いた寂聴さんは印を結ぶようにして、
「えい!えい!」と叫んだ。
「はい。おしまい。これで少しはマシになるわよ」
そういって傘を持った。
・・・・・・数分後、雨が切れた。
その間を縫って、法隆寺石畳を歩く場面を撮影した。
「ね?」と、顔が笑っていた。
そんな思い出のある瀬戸内寂聴さん。
享年九九。
「一人を慎む」という言葉を今東光から贈られた。
その言葉の持つものを今、思う。