泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

一日一文

2021-07-19 18:15:28 | 読書
 1ページに1日、その日にゆかりのある人物や書物が写真や肖像画、彫刻とともに簡潔に紹介され、代表的な、あるいは意外だけどよくその特徴が表れている言葉が紹介された本。366日分。
 社会人になって、本から遠ざかってしまった人たちを念頭に作られています。本を読まないなんてもったいないじゃないか、と。1日に1文だけでも読めるように。
 歴史上の人物から、私にとっては馴染み深い小説家や画家の言葉まで、ほんとに飽きません。一通り読み終えはしましたが、人物辞典としても使える。手元において、まためくります。
 引用したい日、人、文はたくさんあって、どれにしようか考えました。今、多くの人たちにとって必要と思われる文を3つに絞りました。

 226ページ 7月25日 エリック・ホッファー 1902年7月25日生まれ。学校教育を受けず、肉体労働者として放浪しながら図書館などで独学し、独自の思想を築いた。『魂の錬金術』(作品社)より
 
 自然は完全なものだが、人間は決して完全ではない。完全なアリ、完全なハチは存在するが、人間は永遠に未完のままである。人間は未完の動物であるのみならず、未完の人間でもある。他の生き物と人間を分つもの、それはこの救いがたい不完全さにほかならない。人間は自らを完全さへと高めようとして、創造者となる。そして、この救いがたい不完全さゆえに、永遠に未完の存在として、学びつづけ成長していくことができる。

 257ページ 8月24日 シモーヌ・ヴェイユ 1943年8月24日が命日。工場労働や内戦へ参加するなどしながら思索を深め、著述した。『根をもつこと』(岩波文庫)より

 根をもつこと、それはおそらく人間の魂のもっとも重要な欲求であると同時に、もっとも無視されている欲求である。また、もっとも定義のむずかしい欲求のひとつでもある。人間は、過去のある種の富や未来へのある種の予感を生き生きといだいて存続する集団に、自然なかたちで参与することで、根をもつ。

 391ページ 12月30日 ロマン・ロラン 1944年12月30日が命日。作家、評論家。『ジャン・クリストフ』(岩波文庫)より

「叔父さん、どうしたらいいでしょう? 僕は望んだ、たたかった。そして一年たっても、やはり前と同じ所にいる。いや同じ所にもいない! 退歩してしまった。僕はなんの役にもたたない、なんの役にもたたないんです。……」
 ……  ゴットフリートはやさしく言った。「そんなことはこんどきりじゃないよ。人は望むとおりのことができるものではない。望む、また生きる、それは別々だ。くよくよするもんじゃない。肝腎なことは、ねえ、望んだり生きたりするのに飽きないことだ。その他のことは私たちの知ったことじゃない」

 木田元 編/岩波文庫/2018

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 雲梯にて | トップ | はいあがるもの »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事