「絵、描いてる?」
お昼休みの食堂。A子が珍しく私の隣に座った。
桜のような甘い香水の香りがふんわりと漂う。
お互い、仲がいいのは皆、知っている。
「うん、ワンコニャンコの絵はもうすぐ完成するよ」
「へえ、見たいなあ・・・・・」
「5月に県展に絵を出展するんだ」
「頑張ってるね。最近、美術館行ってないなあ・・・・」
「BUNKAMURAならチケット2枚持ってるけど」
「今、何の展示してるの?」
「よく覚えてないけど外国人画家の風景画だったかな」
「2月だったら時間取れるかなあ。あっ、もうすぐ2月かあ」
長い髪をなでながら、A子は
「サイゼ〇ヤ」は行ってるの?
「いやあ、ぜんぜん行ってないなあ」
「あたし、ひとりで行ってるよ。ひとりでも平気だもん」
「ワイン飲みたいなあ」
「今度行こうね」
「うん」
久しぶりのA子との会話。
最近、異動で部署が離れたため、話もできていない。
自分からは決して誘ってこないA子が珍しくしきりに誘ってきた。
ピンクのセリフがお誘い文句である。