打たないで打つ

　昨日、ニュース番組の特集で石川遼君のゴルフのパットで今求めているのは「打たないで打つ」ということだと言っていました。若いのにそこまで気が付くのにビックリしました。

　武術の世界では「ユックリなのに早い」とか「動かないことが一番早い」など二律相反することを１つのこととして説明することがあります。

　詳しいことは上手く言葉では説明できませんが、分かる人には分かる世界がそこにはあります。数年前に太極拳を始めた時に驚いたことがあります。太極拳は御存知のようにユックリ動くのですが、中に非常に速い人がいました。しかし、早いといってももちろんゆっくりです。

　その人は、本当にユックリ動くのですが凄く早いので恐ろしくて鳥肌が立ったことを今でも覚えています。不思議なことにその人は指導員ではないので誰も注意して観ていませんでした。これは後になって分かったことですが、その人は指導員達を教える先生なので、初心者クラスでは監査役のような役割をしているようで表にはあまり出ないようです。ナルホドと後になって納得いたしました。

　昔、空手を指導していたときに、力を入れた素人が好みそうな正拳突きを見せ、これがダメな例です。そうでなくタメの無い無拍子な正拳突きを見せ、これが良い例ですので真似してくださいと教えたところ、生徒は皆逆だと思ったようで悪い例を稽古しはじめてガッカリしたことがあります。また、生徒ばかりか先生方の大半もそういう眼をお持ちなので本当にガッカリして空手は辞めました。

　かつて宮本武蔵と佐々木小次郎が巌流島で決闘したときに立ち会ったお侍さんの日記が発見され、そこには決闘の様子が書かれていました。内容は２人がユックリ歩いて近づき、すれ違ったときに何か動いたと思ったら小次郎が倒れ、武蔵は何事も無かったようにユックリ歩いて立ち去ったそうです。

　結局、何も見えなかったと日記には書かれていたそうです。当時のお侍さんが見てもサッパリ分からないというのはどういうレベルなのでしょう。まだまだ知らない面白い世界があるようです。

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