もしかしたらコロナ禍前より混雑してるかもしれないクリスマスをひかえた銀座。
1丁目の銀座奥野ビルへ。
銀座奥野ビルは、1932年(昭和7年)に高級集合住宅・銀座アパートとして竣工した。
設計は川元設計事務所。施行は不明。
今は事務所やアートギャラリーが入居する。
エレベーターは現役エレベーターとしてはたぶん日本最古の手動式。
このビルの3階に昭和7年の面影を残す部屋がひとつだけある。
306号室。
竣工間もない銀座アパート306号室にひとりの女性が入居してきた。
美容師の須田ヨシさん。
彼女はここで銀座で働く女性たちを主な顧客とするスダ美容室を開いた。
須田さんは、戦前戦中戦後と働き続け、昭和60年代に廃業したあともここに住み続け、2009年に100の天寿を全うした。
その後、有志による「銀座奥野ビルプロジェクト」が立ち上がり、須田さんが旅立ったままの306号室を、経年劣化に任せたままに活用していく活動を始めた。
今回は「長田英子・押田美保 306ふたり」展にお邪魔した。
会期は12月7日~12月12日。
絵画は長田英子。
美しいおとぎ話のような作品。
陶芸は押田美保。
押田は写真家なのであるけど最近は陶芸にはまってる。
写真に戻った方がいいよとか言いながら拝見。
それにしても、そういうプロジェクトとわかっていても、この部屋、物理的にいよいよ限界の日が近づいているような気がしないでもない。
そしてそれ以外にも様々な問題が生じてもいるようだ。
この部屋はこれからどうなっていくんだろと思いながら出た。
最近の私は古いビルが建替えられていくことに対しての以前の感情は無くなった気がする。
スマホの普及とSNSの拡がりが変えた事象のひとつになったとでもいうのだろうか。
そういう建造物を残しても、今の特に若い人たちは、そこになんの価値も見出さずに、無造作に自己顕示欲の赴くままに消費するだけなんだと目の当たりにするようになったからかもしれない。
交絢ビルヂングも交絢ビルディングになる過程で色々な議論があったけど、ファサード部分を残す方式を取り入れてリノベーションした。
ウインドウを利用しての展示は、異色の美術家・長坂真護だった。
いつの間にか月がいた。
明日は上弦。