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ソウルから戻った次の日は休日で、ミニョンはゆっくりと起床した。着替えてカーテンを開けると、溢れんばかりの日の光が窓から差し込んだ。ミニョンは辺り一面の雪景色を眩しそうに眺めていた。
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そして階下をじっと見つめると、顔を綻ばせた。何かを見つけたようで、急いで外に飛び出してゆく。ミニョンはそれを見失わないように、懸命に走った。ミニョンの視線の先にいるのは、ソウルから帰ってきたユジンだった。
ユジンはミニョンがつけて来ているのに気が付かずに、林の中をユラユラと散歩していた。ミニョンはいたずらっ子のような笑みを浮かべて、彼女の後をついて行った。林の樹々は粉雪が枝に降り積り、キラキラと輝いていた。
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ユジンは雪に覆われた小橋を渡ったところで、後ろからくるキュッキュッという足音に気がついた。
ユジンは振り返ると、じっとミニョンを見つめた。
「もう戻らないかと思いました。大丈夫でしたか。」
ミニョンが真剣な面持ちで聞くと、ユジンはニッコリ微笑んだ。それは吹っ切れたような笑顔だった。
「はい、大丈夫でした。」
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二人は橋の向こうとこちらでじっと見つめ合った。さらさらと流れる小川の音だけがあたりに響いている。
やがてミニョンはゆっくりとユジンの方に歩き出した。そして近くまで来ると、そっと手を差し出した。ユジンはミニョンの大きくて温かな手に、自分の細くて白い指をそっと載せた。ミニョンはその華奢な指に婚約指輪がはまっていないことを確かめて、しっかりと握った。二人は手を絡ませたまま、林の中をゆっくりと散歩した。
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どこからか聴こえてくる鳥の声、
遠くで響いているスキー場のざわめき、
小川のせせらぎ、
燦々と降り注ぐ日の光、
二人の顔を彩る木漏れ日、
冬の匂いを運んでくる冷たい風、
すべてが二人を祝福しているような気がした。
ふいに、ミニョンがニッコリ笑って雪の玉を投げた。
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「プレゼント❗️」
ユジンはびっくりして、ミニョンがふざけているのかと思って、
「お返しのプレゼント❗️」
と雪玉を投げ返した。すると、雪玉は大きく軌道を外してコロコロと坂道を転がった。ミニョンは慌てて雪玉を追いかけて、挙げ句の果てにみごとに転んでしまった。一面の雪の中で雪玉を探している。ユジンはそんなミニョンを不思議そうに眺めていた。ミニョンはついに見失った雪玉を見つけ出した。そして身体中に雪をつけたままユジンに叫んだ。
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「本当にプレゼント‼️受け取って。」
と雪玉をもう一度投げてよこした。
ミニョンは飛び切りの笑みを浮かべて、雪玉を割って、というジェスチャーをした。
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ユジンは訝しげな顔つきで、雪玉を割った。すると、中からキラキラと輝くネックレスが現れた。それは小さなダイヤモンドが散りばめられたポラリスのネックレスだった。ユジンはそっとネックレスをつまんで、しげしげと眺めた。
ネックレスは日の光に照らされて、まばゆいばかりに光り輝いている。ユジンは嬉しそうに微笑みながら、ミニョンを見つめた。その瞳には感謝の色が浮かんでいた。そんなユジンを、ミニョンは愛しそうにいつまでも眺めていた。
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その日からユジンは片時も離さず、そのネックレスをつけるようになった。ポラリスは二人の道標となるかのように、ユジンの胸元で揺れているのだった。