未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第17章 未知の世界へ ②

2021-04-22 16:52:51 | 未来記

2010-08-03

2.タケルの戦い

 

『タケル… 助けて…!』

 

タケルの心に、キラシャの声が響いた。

 

『キラシャ…? どこにいるンだ…? 』

 

振り向いても、暗闇で何もわからない。

 

 

「悪いけど…、オレの鎖も外れないかな…」

 

タケルにはかすかな音にしか聞こえないが、何だか聞き覚えのある声のような気もする。

 

タケルは、非常時のために持っていたペンライトをつけて、声のした方へと手探りで進み、鎖が外れるか試しながら、その顔を確認して声をかけた。

 

「アニキなの? ナンデ、こんなことになっちゃったの?

 

「う~ん、君のせいじゃないというと、ウソになるけど…

 

君を見かけてから心配になってついて行ったンだ。

 

君にとっちゃ、よけいなお世話かもしれないけどね。

 

でも、こんなことに巻き込まれるとは、思ってもみなかったよ。

 

ホンの興味本位だったンだ。

 

君が宇宙ステーションのホスピタルから、無表情で歩く姿を見かけて…

 

何かあると思って、ホッとけなかったンだ…」

 

「オレ、まさかアニキを巻き込むなンて思ってなかったから…。

 

まいったな。この鎖、オレには外せそうにないヤ…」

 

突然、ドアが開いて、部屋が明るくなった。

 

「次は、どれにしようか…?」

 

タケルは、あわてて誰かの後ろに隠れようとしたが、見つかってしまった。

 

「こいつ! なんで鎖をはずせたンだ。捕まえて、くくり直してやらぁ~」

 

その男は、鎖を見つけようと、タケルから視線をそらした。

 

その瞬間、タケルは戦いを挑んだ。

 

男の急所をめがけて、蹴りを入れると、背中に周り、もう一度急所で仕留めた。

 

男が気を失っているのを確認して、タケルは男のポケットを探り、中に入っていたペンチを取り出し、アニキへ向かって投げた。

 

アニキは、ペンチで自分の鎖をはずすと、残った男の子達の鎖も、次々にはずした。

 

タケルは、男が動けないように、布を見つけて口を塞ぎ、鎖で身体をしばりつけた。

 

「これがもっと早くできたら、あの子達も助けられたかもしれないのに…」

 

タケルをじっと見ていた男の子が、ポツリと言った。

 

「文句あンだったら、キララ・・・あいや、ウェンディに言えよ。

 

あいつなら、もっと早く助けられたンだ。

 

今だって、オレ達のこと笑って見てンじゃないのか? 」

 

タケルは、見えない空間をにらみながら言った。

 

『笑っちゃいないけどね。やっと、助ける気になったよ。

 

アンタが、自分で立ち向かおうって気になったみたいだからね…』

 

タケルの心に、キララの声が響くと、突然周りの空気が変わった。

 

そこには、キララといなくなったはずの子供達がいた。

 

子供達は、不満いっぱいの顔をしていた。

 

「ウェンディったら、ずるいンだ。

 

オレ達、銃で撃たれるギリギリまでホッとかれたンだもン…」

 

「あったりまえだよ。簡単に助けちゃ、これからがもたないからね。

 

今は、こうやって無事でいられるけど、ここはここでしかないンだ…」

 

「ここでしかないって…?」

 

タケルはどういう意味かわからず、怒ったように聞いた。

 

「ここは、宇宙船とは別モンな場所なンだ。

 

あいつらと戦わなきゃ、宇宙船はアタシ達の思い通りに動かないンだ。

 

どうする? アンタ達、あいつらと戦えるかい?」

 

「戦わなきゃ、どうなるンだ。また、宇宙ステーションに戻れるンなら、オレ戦わないよ」

 

いつの間にか、ニックも物憂げな表情で現れ、周りの子供達を見やった。

 

この状況に、タケルは頭をフル回転し始めた。

 

『いったい、オレはどうすればいいンだ。

 

キララはどこへ行こうとしてるンだ?

 

また、オレをワナにかけよってのか?

 

誰か、オレを助けてくれる奴って、いなかったっけ

 

そうだ、ヒロ…、あいつなんか言ってたよな…

 

そうだ、メール…

 

オレのMフォンはどこナンだ…? 』

コメント
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