未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第16章 運命の分岐点 ⑦

2021-04-26 13:27:53 | 未来記

2010-04-01

7.迫る危機

 

「キララ、いったいどこにいるンだ!

 

いつまでも隠れてないで、早く出て来いってンだ!」

 

タケルは、あまりの息苦しさにこらえきれず、MFi語で思いっきり怒鳴った。

 

その時、入り口のドアが開いて、真っ暗だった部屋に明かりがついた。

 

「いいか、おまえらよく聞け!

 

ここにはよけいな燃料がないンだ!

 

いらない奴からとっとと始末してやる。残った奴は、おとなしくしてろ!」

 

 

悪党の1人だろうか。近くにいた少年を1人引きずり出すと、明かりを消し、ドアをしめた。

 

隣の部屋で、低い怒鳴り声が響き渡り、少年のおびえた声がして、しばらく問答が続いた。

 

タケルと同じ部屋で、ギュウギュウ詰めに縛られている少年達も、苦しそうに息をしながら、聞き耳を立てた。

 

「ガンバレ…」

 

「あンなやつらに負けるな…」

 

 

「ウェンディ、お願いだから、早く助けてあげて…」

 

「泣くんじゃねーぞ! 」

 

 

少年達の声は、悔しそうだし、小さい子は泣いているが、ウェンディが必ず助けてくれると信じているのか、まだ希望は捨ててないようだ。

 

低い怒鳴り声は、だんだん荒々しくなり、「これじゃ、役にたたねぇ、始末しろ!」と宇宙船中に響いた。

 

少年の甲高い「助けて!」という声をかき消すように、ブォーンと光線銃を撃ったような音がして、隣の部屋は静かになった。

 

宇宙で暗躍する海賊の特殊な光線銃は、当たった人が溶けて消えてゆく、というウワサをタケルは聞いたことがある。

 

「おうっ…」という、隣の部屋にいる男達の声が聞こえ、ざわざわしているようだが、少年の気配はない。

 

しばらくして、またドアが開いた。

 

「いいか。厄介者は、始末するぞ。オレ達は、マネーに縁のない奴ぁいらねぇンだ。

 

とっとと消えちまえってンだ。

 

始末されたくなかったら、とうちゃん、かぁちゃんに助けてもらいな!

 

…次は、こいつか。いてっ、手をかむな! おとなしく来やがれ…」

 

1人ずつ、あらゆる抵抗をしながら、少年達は引きずられて行った。

 

2人目、3人目、4人目・・・。誰も、戻って来ない。

 

ドアが開くたびに、少しは息苦しさが和らぐのだが、部屋の空間が広くなるほど、少年達の絶望感は増した。

 

「やっぱり、ウェンディは助けてくれないのか…。

 

一緒にゲームしてた時は、楽しかったのにな…。

 

あの宇宙船に閉じこめられた時も、

 

ウェンディが持ってきた食べ物を分け合って食べたっけ…

 

みんないい奴だったのに…

 

ウェンディは、自分だけ地球に行きたかったのか…

 

こんなことになるなんて…

 

つまンなくても、メンドーでも…

 

家族といた方が良かったのかな…」

 

静かな部屋だからか、タケルのそばにいる少年が、弱音を吐いているのが聞こえた。

 

『パパとママは、今ごろ火星に着いているんだろうか? 

 

オレも一緒に行った方が、良かったのかなぁ~』

 

タケルも後悔したが、危機は刻々と迫っている。

 

そんな甘い感傷に浸っている時ではない。

 

「あきらめンな! …オレは、あきらめないぞ!

 

ウェンディが出て来ないなら、オレが何とかしてやる。

 

こんなショボイ鎖なんか、はずしちまえばいいンだ、クソ~」

 

タケルはできるだけ空気を吐き出し、身体をよじって、鎖から抜け出した。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする