未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第16章 運命の分岐点 ⑥

2021-04-28 13:26:30 | 未来記

2010-03-11

6.一番大切なもの

 

アフカ・エリアの中でも、危険とされる区域を無事に通り抜けると、防衛軍の護衛車は、キラシャ達の乗るエア・カーを追い越して、走り去っていった。

 

 

パールの家族が待つドームへは、あと少しという所で、子供達は長い緊張と興奮からか、疲れて眠ってしまったようだ。

 

 

無言が続く、気まずい空気を振り払うように、オパールおばさんがデビッドおじさんの身の上を尋ねた。

 

「以前、あなたはMFiエリアにお住まいだったと聞いています。

 

娘さんとお会いになって、その後は・・・?」

 

「そうですね。MFiエリアには仕事で行くことはありましたが

 

あれ以来、家族の誰とも会っていません…。

 

家族にだまって、マシン人間になってしまった私が悪いのです。

 

その時、自分は死んだものと思って、すべてを捨ててしまったのですから…」

 

 

「そう、それはお気の毒ですね。

 

…実は、私の主人も流星騒ぎの中で、突然連絡が取れなくなって…」

 

「…あのころは

 

明日何が起こるのかもわからず、

 

いきなり暴動が始まり、それに巻き込まれて行方不明になる人もいた。

 

その上、私のいたエリアでは、警官が銃を持たない人間に向かって発砲したのです。

 

その現状をネットで配信していた私にも、警官が銃を向け…

 

ニセの情報を広げるなと脅かしました。

 

これ以上続けると、オマエの命はないと思えと…。

 

 

私はあの混乱期に、人間のままで命を失うより、

 

マシンの身体になることで、生きることを選びました。

 

家族には申し訳ないと思っていますが、

 

もう死んだものと思ってもらう方が、

 

こちらも気が楽かと思っています…」

 

 

「でも…。あの、ごめんなさい。

 

私も主人は亡くなったと思う方が、

 

あきらめがつくのですが、

 

でも、待つ方は…

 

生きていると、信じていたいものなんです…」

 

 

「そんなものですかね。

 

久しぶりに会った娘は、マシンになった私を軽蔑していたようですが…」

 

「あの、こんなことを申し上げるのはお恥ずかしいのですが、

 

私は、姉を助けるために命を授かったクローン人間です。

 

普通の人間として、生まれてこなかったことで

 

いろんな試練を受けて生きてきましたが

 

私の主人は、そんな私を愛してくれました。

 

 

…私の娘の名前は、ココロと言います。

 

 

主人はよく言ってました。

 

 

この世で、一番大切なのは

 

 

高価で美しい宝石よりも

 

 

ボクが君を思う心なんだよって…

 

 

私の娘も、父親のことを話題にしようとすると

 

話をそらしてしまいますが…

 

心の中では父親に、自分が生きてきたことの

 

うらみつらみをきっと話したいと

 

願っているのではと思います…」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする