未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第18章 見えない明日 ②

2021-04-10 17:20:26 | 未来記

2011-12-01

2.再会

 

ところどころに、爆発で破壊された窓や、焦げて崩れた壁が続く街並みを眺めながら、キラシャ達は重い足取りで奥へ奥へと進んだ。

 

小さなホスピタルの前で、先に歩いていたパールの民族の青年が、立ち止まった。

 

「確か、ここだったな…」

 

デビッドおじさんも、荒く刻まれているホスピタルの名前を確認した。

 

パールは、いてもたってもいられないような、それでも、不安で助けを求めるような顔で、キラシャを見つめた。

 

入り口から奥に進むと、板のような壁だけで仕切られている部屋の横を通り過ぎ、青年の手招きで、ひとつの部屋に入るよう促された。

 

その部屋には、ベッドに横たわった白髪の男性と、看病疲れからか、頬のこけた白髪交じりの美しい女性が、そばのいすに寄りかかっているのが見えた。

 

オパールおばさんにも、よく似たその女性は、キラシャ達に気がつくと、あわてて自分の髪の毛に手を当てながら、いすから立ち上がった。

 

パールが、ベッドにかけよりながら叫んだ。

 

「パパ ママ タダイマ!

 

ワタシ パール デス!」

 

パールは、涙をぽろぽろ流しながら、その女性の胸に抱きついた。

 

「ママ…。

 

ワタシ パール。

 

ワカル? 

 

カオ チガウ ケド…。

 

ワタシ パール ナノ…」

 

その女性も、しっかりとパールを抱きしめながら、精一杯の涙声で言った。

 

「もちろん、わかるわよ。私のパール。大事な私の宝物…」

 

 

パールとママが泣き止むまで、周りはじっと見守った。

 

パールは、この時のために必死で生きてきたンだと、キラシャはしみじみ思った。

 

 

パールが、ようやくママの胸から離れて、笑顔でキラシャ達を振り返ったので、改めてママに紹介をしてもらった。

 

パールは、まずキラシャを“命の恩人”と、ママに伝えた。

 

キラシャは照れたが、パールは真剣な顔をしてこう言った。

 

「キラシャト オパール オバサン

 

ワタシニ シンジャ ダメ

 

イキナサイ テ オコルノ…。

 

 

ワタシ トテモ クルシカッタ。

 

ダカラ シニタイ オモッタ。

 

 

デモ フタリトモ イッショニ イキル イッテクレタ。

 

ウレシカッタ…。

 

ダカラ パパト ママニ アエタ…」

 

 

キラシャは、パールの言葉を聞いていたら、当時のことを思い出して、涙が出てきた。

 

『あン時は、あたしもつらかったンだぁ。

 

タケルに会いたくても、会えなくて、一番つらかったンだよね…。

 

もし、パールを助けたいって思わなかったら、あたしだって、どうなってたか…』

 

でも、すぐにケンとマイクの漫才の掛け合いが始まって、キラシャは涙を流しながら、2人の激しい突っ込みとボケのスクールネタに、ゲラゲラと笑い転げていた。

 

オパールおばさんも、お姉さんに無事にパールを送り届けることができて、ホッとしたようだ。

 

姉妹はお互いを抱きしめ、長い間の疎遠をわびながら、いたわりの声を掛け合った。

 

 

少し落ち着いてから、パールのママの話を聞いた。

 

ベッドで眠っているパールのパパは、意識がないまま眠り続け、生きているのが奇跡と医療技師からも言われているという。

 

 

「きっと、パールが帰って来た時に、

 

必ず生きて迎えてあげよう、という思いがあったのだと思います。

 

パールにとっても、それが最良の出迎えだと信じて…

 

主人の大切な宝が、自分の目の前で焼き殺されようとしたのです。

 

自分が身代わりになってでも、という思いは私も同じです。

 

パールを私のふるさとへ送ってからも、

 

私は火傷に苦しむ主人のそばに居て、

 

2人でパールの帰りを待つことが、私のできる全てでした。

 

もしパールに何かあって、帰って来れなかったら…

 

私は主人とともに、死のうと思っていました…」

 

 

パールは、ママの話を聞きながら、何度もパパの頬にキスをした。

 

「ネェ オネガイ

 

パパ メヲ アケテ

 

ワタシヲ ミテ…

 

パールガ カエッテ キタヨ…

 

パパモ ママモ パールハ ダイスキダヨ…」

コメント
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