未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第16章 運命の分岐点 ⑤

2021-04-30 13:24:17 | 未来記

2010-02-08

5.新たな人質

 

悪党達が乗っている宇宙船が、ガシャンと音をさせて、こっちの宇宙船とつながるまで、どこへ逃げることもできない子供達は、身動きもできなかった。

 

ただ、キララだけは冷静にその様子を見ながら、他の子供達をなだめるようにこう言った。

 

 

「悪いけど、アタシは消えるよ。

 

自分達がどうすれば助かるかを考えて、行動してくれ! 

 

アタシもアンタらを信じてるからネ…」

 

 

タケル以外の子供達は、だまってうなずいた。

 

キララは、スーッと消えた。

 

タケルはひとり、舌をチッと鳴らした。

 

『また、キララにふりまわされちまうのか・・・』

 

 

「ハッチを開けろ!」

 

ダミ声が響いたあと、アース・キャプテンは、あわててハッチを開ける操作をした。

 

 

「ほら、オメェ達もこんな風に縛ってやるから、じっとしてな!」

 

ハッチが開いて現れたのは、鎖でつながれた若い男と、その鎖を引っ張りながら、銃を抱えた人相の悪い中年男だった。

 

 

タケルは、その若い男を見て、ハッとした。

 

宇宙ステーションで、タケルがアニキと呼んでいたMFiエリアの技師だ。

 

『アニキ…何で、こんな男達に捕まったの…? 』

 

そんなタケルをしり目に、ぞろぞろと悪態をつきながら、仲間らしい男達が入って来た。

 

子供達は船の空間を利用して、最大限逃げようと試みるが、男達が2、3人がかりで押さえつけるので、抵抗しては殴られながら、鎖に縛られていった。

 

「おい、早くしろ! 誰が通報したかわからんが、警察が捜査を始めたらしいぞ!」

 

また、ダミ声が響いた。

 

タケルは、ヒロだと思った。やっぱりあいつは、頼りになる。

 

タケルは無駄な抵抗はせずに縛られたが、なるべく空気を身体に入れて、鎖につながるようにした。

 

悪党達は、子供達を別の宇宙船へと移した。

 

キララが連れてきた、アース・キャプテンと言っていたおじいさんは、悪党の前でおとなしく頭を下げて、言われるがままついて行った。

 

悪党達の宇宙船では、狭い空間にギュウギュウ詰めにされて、息をするのも苦しかったが、

 

勇敢でかっこいいパトロール隊が必ず助けてくれると、タケルは信じていた。

 

 

『それにしても、なぜアニキがこんな所に…? 

 

キララも、いったいどこに隠れているンだ…? 』

 

 

その船が、どこかへと移動を始めたことは何となくわかったが、どこへ行くつもりなのか、見当もつかない。

 

遠くの方で、ボーンという音がしたようだ。

 

タケルには小さな音だったが、他の子供達はおびえたように、今まで乗っていた宇宙船が、爆破されたことをささやきあっているようだ。

 

『そういえば、ニックの奴はどうしたンだ?

 

あいつ、あのまま宇宙船の中でくたばっちまったのかな…?

 

でも、キララはあいつのことほっとくわけないし…。

 

キララも助ける気がありゃ、早くしろってンだ!

 

全部アイツが悪いんだ。アイツのせいなンだ!

 

オレ達をヘンなことに巻きこんで、こんな目にあわせといて…

 

自分だけシャシャッと隠れやがって~ 』

 

タケルのキララに対する怒りが込み上げてきた。

コメント
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