2011-11-30
1.いちかばちか
タケルは、自分の状況を整理してみた。
これから自分が何をすべきなのか。キララの言いなりに、戦うことを受け入れるだけなのか…。
もし、あの悪党達をやっつけることができたとしても、キララといる限り、タケルは自分の思うように動けない。
このまま、キララの言うように地球を目指して、たとえ無事に着いたとしても、今までの自分に戻れるのか?
ふと、ヒロのニンマリした笑い顔が、浮かんだ。
タケルに向かって、『このスポーツオタクが…』と、小ばかにしたような、
スクールで何度もこの顔に殴りかかった、あのいまいましい研究オタクのヒロの笑顔だ。
『あの野郎~! 何かやろうとしてるな~。
いったい、なにやってやがるンだ。クソ~~!!』
宇宙船は、どんどん近づいてくる。
『だいたい、キララはどうやったら、あっちへ移れるって言うんだ~!
ボックスもなしに、生きて移れるわけないじゃン!!』
そのとき、キララが叫んだ。
「みんな、集中するンだ! いいか? 心を合わせるンだよ!
いちか、ばちか…
みんなで、ひとつの気をつくるンだ!」
周りの子供達も、無言で頷いた。
「行くよっ!
あの宇宙船に 飛び込むンだ~っ!! ウォ~~~~~!!!!!」
キララは必死の形相で、オオカミが遠吠えするような声を出し始めた。
他の子供もそれに続いた。
「ウォ~!」「ウォ~~!!」「ウォ~~~!!!」
最初は、「何だこいつら…?」と、ちょっと小ばかにしかけたタケルだったが、空間にポンッと小さな“気”のかたまりができると、“気”の輪が、熱気を帯びながら、広がっていった。
唖然と見ているだけのタケルも、面白くなさそうなニックも、ひょんなことからこの事件に首を突っ込んでしまったアニキも、広がる“気”の中に、グルグルと巻き込まれていった。
タケルは、すべてのことがいやになりそうなくらいの脱力感を感じて、意識を失いそうになった。
その瞬間に、周りが真っ白になり、身体がフワッと動いた。