未来の少女 キラシャの恋の物語

みなさんはどんな未来を創造しますか?

第18章 見えない明日 ①

2021-04-12 17:19:03 | 未来記

2011-11-30

1.いちかばちか

 

タケルは、自分の状況を整理してみた。

 

これから自分が何をすべきなのか。キララの言いなりに、戦うことを受け入れるだけなのか…。

 

もし、あの悪党達をやっつけることができたとしても、キララといる限り、タケルは自分の思うように動けない。

 

このまま、キララの言うように地球を目指して、たとえ無事に着いたとしても、今までの自分に戻れるのか?

 

 

ふと、ヒロのニンマリした笑い顔が、浮かんだ。

 

タケルに向かって、『このスポーツオタクが…』と、小ばかにしたような、

 

スクールで何度もこの顔に殴りかかった、あのいまいましい研究オタクのヒロの笑顔だ。

 

『あの野郎~! 何かやろうとしてるな~。

 

いったい、なにやってやがるンだ。クソ~~!!』

 

 

宇宙船は、どんどん近づいてくる。

 

『だいたい、キララはどうやったら、あっちへ移れるって言うんだ~! 

 

ボックスもなしに、生きて移れるわけないじゃン!!』

 

 

そのとき、キララが叫んだ。

 

「みんな、集中するンだ! いいか? 心を合わせるンだよ!

 

いちか、ばちか…

 

みんなで、ひとつの気をつくるンだ!」

 

周りの子供達も、無言で頷いた。

 

「行くよっ! 

 

あの宇宙船に 飛び込むンだ~っ!! ウォ~~~~~!!!!!」

 

キララは必死の形相で、オオカミが遠吠えするような声を出し始めた。

 

他の子供もそれに続いた。

 

「ウォ~!」「ウォ~~!!」「ウォ~~~!!!」

 

 

最初は、「何だこいつら…?」と、ちょっと小ばかにしかけたタケルだったが、空間にポンッと小さな“気”のかたまりができると、“気”の輪が、熱気を帯びながら、広がっていった。

 

唖然と見ているだけのタケルも、面白くなさそうなニックも、ひょんなことからこの事件に首を突っ込んでしまったアニキも、広がる“気”の中に、グルグルと巻き込まれていった。

 

タケルは、すべてのことがいやになりそうなくらいの脱力感を感じて、意識を失いそうになった。

 

その瞬間に、周りが真っ白になり、身体がフワッと動いた。

コメント
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