ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

修羅

2018-05-13 03:54:06 | 資料

また賢治に興味を持った。


いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾し はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ


「春と修羅」よりの抜粋である。
詩は長いが、この部分だけでも透き通るように美しい。

しかしこの詩は本霊の作ではない。
活動を妨害され何もできなくなっていた本霊の代わりに、
ほかのだれかが活動を代行して書いたのだ。
それゆえにこれには、はげしい愛がこもっている。



かたぶきし君のこころをささへつつ君のねがひをうたふ空かな    揺之






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梅の鉢

2018-05-10 03:58:11 | 資料

今日は啄木である。


ひと晩に咲かせてみむと
梅の鉢を火に焙りしが、
咲かざりしかな。

      石川啄木


何をしてもうまくいかない逆風の人生の中で、人は時にこういう抵抗をすることがある。

そしていかにも簡単に敗れるのである。

ずるや馬鹿ができる人間ばかりが栄える世の中では、彼のような人はそうなるしかない。

梅の花は枯れなかったろうか。


くれなゐの色はなけれど梅の香のかすかに見ゆる厳冬の梅    揺之





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春日野は

2018-02-28 03:06:22 | 資料

Kasuga Plain:
O, this day burn it not!
Young grass,
My wife is hidden there,
As, too, am I.

春日野はけふはな燒きそわか草のつまもこもれり我もこもれり    よみ人しらず


相変わらず枕詞をそのまま訳してある。

英語ではどのように感じるものか知りたいものだ。

BurnとMy wifeの間をつなげているような気がしないでもない。

それなりの詩的効果はあるのだろう。


若草の妹がためにと野に立ちて花選るわれに鳥はさへづる    揺之






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我が庵は

2018-02-25 03:06:17 | 資料

今日は英訳古今である。

My hut is
South east of the Capital
And so I dwell
In this world of sorrows around Mt Uji
Or so folk say…

我が庵は都の辰巳しかぞ棲む世を宇治山と人はいふなり    喜撰


「憂し」と[宇治」の掛詞は、難しかったようだ。

意味は通るが、英訳ではまた違う印象があるだろう。

翻訳の難しさというものだが、その中に現れる変容に楽しみを見たい。


すみかへて憂きをのがれて宿結びひとり見る世のうはべかなしき    揺之






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やはらかに

2018-02-13 03:05:45 | 資料

今日は啄木をとりあげた


やはらかに積れる雪に
熱てる頬を埋むるごとき
恋してみたし

     石川啄木


恋は若き人間存在の宿命だ。

そこを避けて生きていくことのできる人間はいない。

故に男は時に偶像のように女を求める

理想の恋をしてみたい。

だがその願いが叶うことはほとんどない。

美しい恋の夢は見果てぬ夢なのか。

恋は何のためにあるのだろう。


降る雪の中にたたずむ一群の炎のごとき恋を知りけり    揺之





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こころよく

2018-02-08 03:07:23 | 資料

今日は啄木に興味を持った。


こころよく
我にはたらく仕事あれ
それを仕遂げて死なむと思ふ

           石川啄木


短歌を三行に分けて書くことは、わたしには難しいが、彼にはできる。

しかもそれが効果的だ。詩文として完成度が深まる。

啄木には夢があった。命と才能をかけてやりたいことがたくさんあった。

それがあらゆる妨害のおかげでできなかった。

残してくれた詩文は多いが、無念であったろう。

その無念のひとかけらでも、わたしが果たしてやりたいという思いに駆られる。



啄木の世の木を打ちしその音の高きが故に人は忘れず    揺之






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唐衣

2018-02-05 03:05:36 | 資料

今日は英訳古今である。

My Cathay robe:
Sash wound around at evening
Time,
Turn and turn again,
So I do yearn for you.

唐衣日もゆふぐれになる時は返すがへすぞ人はこひしき    よみ人しらず


あいかわらず枕詞を率直に訳してある。

Sashは飾りひものことだ。Woundはwind(からみつく)の過去形である。

元歌は唐ころもがかかる「紐」を「日も」にかけているのだが、それをそのまま訳したらしい。

苦しい気がしないでもないが、おもしろい詩になっている。

和歌の枕詞や掛詞は、訳者を悩ますものだろう。


唐衣たもとほる野にかのひとのたつを夢見るしれものの恋    揺之






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孤独

2018-02-02 03:05:31 | 資料

今日はキャロルの詩である。


孤独

若き日の黄金の時
 わき出ずる無垢と 愛と 真実
信じがたい輝き
 ああ 青春のあえかなる夢よ

生命のおもむろに衰えゆく報いか
 年とともに積もりきたった富
そのすべてを捨てても いまひとたび 幼年に帰りたい
 ああ 夏の晴れやかな一日だけでも


長い詩の末尾の二連だけを抜粋した。

わたしは若い頃を懐かしみそれに帰りたいと思う人々には同意しない。

若い頃や幼い頃を美化する心には、大人になって苦いことをしてしまったことから逃げたいと思う心理が含まれていると思う。

それなりに正しく美しく生きた人間は、若い頃に帰りたいなどとは思わないものだ。

その頃は未熟で何もわかってはいなかった。

経験を踏み、大人になり、さまざまに心が進歩してきた今の自分の方がいいと思うものである。


蝉の子をちぎりて遊ぶをさなごをくるひて叱る親となりにき    揺之






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花のたましい

2018-02-01 03:05:47 | 資料

みすずに興味を持ってみた。



  花のたましい

散ったお花のたましいは、
み佛さまの花ぞのに、
ひとつ残らずうまれるの。

だって、お花はやさしくて、
おてんとさまが呼ぶときに、
ぱっとひらいて、ほほえんで、
蝶々にあまい蜜をやり、
人にゃ匂いをみなくれて、

風がおいでとよぶときに、
やはりすなおについてゆき、

なきがらさえも、ままごとの
御飯になってくれるから。



女流の美しい感性がここちよい。

若さゆえの未熟さも見えるがそれも若葉の匂いのようだ。

啄木もそうだが、こういう感性の持ち主が長生きをできないのは、この世界にとっておそろしく悲しいことだと思う。


春の野の花の心は風を呼びけふゆくたまのゆくへをぞ知る    揺之






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雲ちゞれ

2018-01-31 03:06:04 | 資料

雲ちゞれつめたくひかるうすれ日をちがやすがるゝ丘にきたりぬ    宮沢賢治


また賢治に興味を持ってみた。

賢治のことばは清らかに感覚に突き刺さる。

作者が鮮烈に感じている自然の命が読むと自分の感覚にも勢いよくそそぎこんでくる。

うまいを通り越して、すごい。

いつものように自分の歌を歌うのに、怯えを感じるのはこの人くらいだ。


ゆふさりてたなびきわたるあかねぐもひかりはおちてとほやまに染む    揺之






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