ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

水づく屋の

2018-05-21 03:31:10 | 添削

ぬば玉のさ夜はくだちて水づく屋の荒屋さびしきこほろぎのこゑ    伊藤左千夫


前に後世百人一首にこの作家を入れたが、それは削除しようと思う。

これは本物ではない。

よいものと思えたが、どうも欺かれていたらしい。

今読むと、本人の作ではないことがわかる。どういう技術でかはわからないが、他人の作を自作と思わせる何らかの技術をかぶせていたとしか思えない。

作品自体はかなりよいが、これは伊藤の作ではない。霊的盗作だ。

こういうことはもう、二度とやってもらいたくない。


ぬばたまの夜の毛並みにすむ蚤のわすらえもせぬいつはりの歌    揺之





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コローへのオマージュ

2018-05-20 03:23:39 | 絵画


ヘンリー・ウォード・レンジャー(1858-1916)、アメリカ。


これはカミーユ・コローの「モルトフォンテーヌの思い出」に寄せて描かれたものだろう。

タッチや絵の具の薄さを真似して描かれている。

オマージュというものについて考えてみたい。

芸術家はよくほかの芸術家の作品に刺激されて自分の作品を作ることがある。
それは悪いことではない。
他者の作った作品に感動して学ぶのはよいことだ。

だがそれが時に愚に落ちるのは、馬鹿な作家がたくみに盗んで自分のものにすることがあるからだ。

その境界というのがかなり難しい。

オマージュ作品は、原作者の作品を越えてはならない。勉強させてもらうものとして、腰を低くせねばならない。

そういう態度を明確に表しながら、決して引けを取らない自分の力をも示さねばならない。


人はいさこころにもなくいはやどの月をむかしの野にもとめけむ    揺之






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我が宿の菊の垣根に置く霜の消えかへりてぞ恋しかりける

2018-05-19 03:30:18 | 古今抜粋

我が宿の菊の垣根に置く霜の消えかへりてぞ恋しかりける    紀友則


我が宿の菊の垣根に置く霜の、までは序詞だ。

相手の気持ちが冷めて、その恋心が消えてしまいそうなのに、焦りを感じている。

女の心を押しとどめたい男の、痛い焦りが詠みこまれている。

それを技術でくくるところに、自分の男を見せたいという心があるのだろう。


村雨のすぎてさにはの槙の枝に結ぶ露ほどつれなかりけり    揺之






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日没の時間

2018-05-18 03:31:32 | 絵画


アレクサンダー・ヘルウィグ・ワイアント(1836-1892)、アメリカ。


立木の向こうに日が沈もうとしている。

夜のきざしが漂う中、昼の勢力がまだ空を領している。

一日の終わりが安らぎに収束される中で、人々はいつも夕日に見とれるのだ。

この世界はなんと美しいのだろうと、思う。

何もかもがある。


ゆふばえにうれひうすれて見る空のかなたにおはすふしぎなるもの    揺之





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水あさぎ

2018-05-17 03:55:22 | 資料

水あさぎ空ひろびろし吾が父よここは牢獄にあらざりにけり    北原白秋


「牢獄」とかいて「ひとや」とルビをふる。

昨日の歌と違って、器に水が満ちるように、作家の情感が歌に満ちている。

本当の人間が、自分の心で詠った歌というのはこういうものなのだ。

白秋は、啄木と比べれば卓越した歌人と呼べないが、それだけのことをしている者と言える。


我が父よきぬに我が名を染め抜きて青空に振るわれを見たまへ    揺之






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丘にたち

2018-05-16 04:34:16 | 添削

丘にたちしみじみ夕日あびにつつ満ち足らふまでなきにけるかな   小熊秀雄


古語の文法を軽く無視して詠んでいるところがかなりおもしろいが、胡散臭い。

歌の意趣に本人の情感がついてきていない。要するに、これは嘘なのだ。

夕日を見ながら泣いたなどと言って、泣かなかったか、それとも泣きまねをする自分を想像しただけなのか。

どちらにしろ、夕日を見て泣くなどという、時々人間が陥る情感を、あまりわかってはいない。


かたをかに夕日は照りてかなしみをだきつつ内の涙を呼びぬ    揺之






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恋ひ恋ひて

2018-05-15 03:38:12 | 資料

恋ひ恋ひて逢へる時だに愛しき言尽くしてよ長くと思はば    大伴坂上郎女


万葉集からとったので、資料に入れた。

万葉人は恋に率直だ。技巧に凝るということをあまりしない。

それもよいことだが、現代人にはこのような恋はもうちょっと無理だろう。いろいろなことがわかりすぎている。

恋をして、会えるときくらい、やさしいことばをかけてください、これからも長く続けていきたいと思うならば。

せっかく恋しい男に会えたのに、思うようにいいことを言ってもらえなかったのだろう。これを詠まれた男がどんな顔をしたか、想像してみた。


わがいもの袖にこもりし菊の香にゑひてつかのま言を忘れぬ    揺之




コメント (6)
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動物園に

2018-05-14 03:33:17 | 添削

動物園に行くたび思い深まれる鶴は怒りているにあらずや    伊藤一彦


まずい。
仏陀の悟りを気取って紳士の振りをしているきらいがある。
本当はこんなことを思ってはいない。

鶴は怒りはしない。
環境を素直に受け入れて、死ぬときがくれば死ぬだけである。
それがわからないのに、高さを気取っているのは、上等な歌い手とは言えない。


そのこころ白きがゆゑにちひさくも赤きしるしをもらひし鶴よ    揺之





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修羅

2018-05-13 03:54:06 | 資料

また賢治に興味を持った。


いかりのにがさまた青さ
四月の気層のひかりの底を
唾し はぎしりゆききする
おれはひとりの修羅なのだ


「春と修羅」よりの抜粋である。
詩は長いが、この部分だけでも透き通るように美しい。

しかしこの詩は本霊の作ではない。
活動を妨害され何もできなくなっていた本霊の代わりに、
ほかのだれかが活動を代行して書いたのだ。
それゆえにこれには、はげしい愛がこもっている。



かたぶきし君のこころをささへつつ君のねがひをうたふ空かな    揺之






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火を運ぶ

2018-05-12 03:35:25 | 添削

火を運ぶ一人の男、あかねさす真昼間深きその孤独はや    佐佐木幸綱


これも本人の活動が見えない。

おそらく霊的技術を持って本人の作にした他人の作である。

こういうずるはよくある。

本人の情感が歌においついていないことで、よくわかる。


蒼天の深みに光る真昼間の日にさすわれのたけきかひなは    揺之






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