マザコン

世間一般で言うところのそれだとは思っていない。
でも、母が全てだった、とも思っている。

大事にしなかった、むしろ冷たかった。母は子離れが出来てない、と思ってた。
食料と一緒に届く母からの手紙は、大抵広告の裏に書いてあったから、読んだら殆ど捨ててしまって、残ってない。

でも、　　母が全てだったと思う。

「母のない子」になった時「誰にも愛を語れない」自分が確かにいた。
誰のために生きれば良いんだろう、とホントに思った。
自分の人生を本気で喜んだり悲しんだりしてくれる人は母しかいない気がした。
それなら自分は生きててもしょうがない。

母は、幸せなんだろうかとずっと思っていた。友達と海外旅行にも行ったし、芝居や映画も見てたから、楽しみがないわけじゃない。趣味もあった。でも、なんだか、自己犠牲的で。人のことばっかりに見えた。

あのときも、あのときも……、考え出すといろんな事が頭の中を廻りはじめてしまう。

やっぱり書けないことはあるな。
やめとこう。


親不孝し放題を許してくれたことに、最期の時はちゃんと「ありがとう」というから、って言ってたのに、あんまり早すぎて言えないままだ。本当の親不孝になってしまった。

この年で母親が居ないなんて珍しくも何ともない。
その通りなんだけども。
ちょっと情けない自分が居たな。
でも、それでよし。

生きてますよ、ちゃんと。


夜中だった。とてもよく晴れた日だった。
海の見える明るい病院。
でも母は、狭く暗い病室の中で、管とコードを繋がれたまま逝った。
2000年1月28日、たしか23:52。




合掌。



なんだこのナルな文章はと思う人が沢山いるだろうな。
俺もそう思う。
でも、こうやって、そのことを言葉に出来るようになった自分を、何はともあれ、よしとして、先へ行きます。

ナルです。マザコンです。