コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

芸術感想

2009-09-28 16:46:46 | 
何か見てきたときには、感想をなるべく文章化する、と言うことを自分に課している。
それは、忘れないため、と言うこともあるんだけれど、学生にしつこく言っている手前、ということもあるし、自分の「修行」でもある。

なんだけれど、映画や芝居のように“モノガタリ”のある物については書けても、抽象画や音楽はどうもいけない。

先日、
静岡ハリストス正教会のアークホールで、
パトリシア・パニー  ピアノリサイタル
と言う静岡日仏協会主催の催しがあって、小さなホールで世界的なピアニストの演奏を間近に見聞する機会を得たのだけれど、さて、批評や感想の言葉は浮かばない。

ちなみに曲目は
 モーツァルト ソナタ ヘ長調 K280
 ベートーベン ソナタ ニ長調 Op.28 「田園」
 ドビュッシー 前奏曲第1集より  デルフィの舞姫たち/アナカプリの丘/ミンストレル
   ***休憩***
 シューマン  幻想曲 ハ長調 Op.17
  アンコール
   モーツァルト ロンド ニ長調 kv485
(これはあとで友人にききました)

招聘者・主催者が同僚の今野先生でもあり、私が聖堂を見学できるように手配したこともあって、アフターにも参加させていただくという、かなり贅沢な一日になったんだけれど、“音楽”とか“演奏”とかのことはどうにも……。

私が訊ねたのは、幅の広いプログラムのこと、諳譜のこと、天井に何を見ているのか、ということ……。
私の席は、手元は見えないものの、ペダル捌きと顔の表情はものすごくよく見えたので。

どの曲が良かったか、と言う感想は、人によってかなり違うらしい。
私は、シューマン、と答えるのだけれど、それは、ロマン派が好きだからだと思う。
つまり、その、1回限りの演奏の、どこがどう、と言うことではない。
この曲が好き、というのと、この演奏が好き、というのは全然違う(こんな私でも、この曲は誰の演奏が良い、とか言う好みがあるものもあるのだけれど)。


本人はモーツァルトが好きらしい。
この日はベートーベンがとてもうまく弾けたらしい。
ドビュッシー好きは多いらしく、フランス人が演奏会をすると期待されるので入れないわけに行かないらしい。

驚いたのは、同僚のスイス人教師、エゲンベルクさんが、「総じてよかったけれど、シューマンは2秒だけおかしかった」と言った、という話(英語の会話だったので、具体的にどういう事だったのかは不明)。
パニーさんはそれを認め、滅多にないことが起こったんだという。

よく識っている曲で、ミスタッチがあれば判ることはある。オーケストラのはずれた音も、気づく時がないわけではない。
芝居でセリフを間違えれば、日本語なら気づく。
そういうのとは違うけど、実は一緒なのかな。そのジャンルのリテラシー。
それにしても、こういう感想を聞くと、すごいなぁと思ってしまう。

彦星先生は「音の厚みというか音色の豊富さ」に驚いた、と書いている
別の友人は、「音楽的なことはわからないけど、ピアノが奏でる「小さな音」がとても印象的でした。大きな音に隠れがちだけど、それを支えるひとつひとつの小さな音に感動して帰ってきました。人の生き方にも通じる気がします」という。

あぁ、確かに、言われてみればそうかも知れない。
でも、ホールの特性とかもあるしなぁ。
実際、どの曲だったか忘れたけれど、最後の音をものすごく引っ張ったことがあって、エアコンの音で後の人には聞こえないだろうなぁ、とか思いながら、こういうのは譜面の指示じゃなく、解釈なんだろうなぁとか考えたり。
そうなると、やっぱりテクストを知っていた方が楽しめるんだろうなぁ。


そういえば、静岡アートギャラリーで開催中の「中右コレクション 幕末浮世絵展 大江戸の賑わい-北斎・広重・国貞・国芳らの世界-」、肉筆も含め、点数も多く(ちょっと多すぎ?)、見所沢山なんだけれど、キャプションがもう少し親切でも良いかなぁ、と思う。図録もあって、こっちには多少詳しく書いてあるにしても……。
浮世絵は、欧米で評価されたとき“アート”になってしまった。それは勿論、絵師や職人たちの力に対する正当な評価なのだけれど、多くの欧米人たちは、そこに書き込まれた“情報”を理解できなかった。そのせいなのか、現在では日本でも文字情報や隠された意味・見立て等については、特別な展示以外ではあまり説明がない。
今回の展示でも、「ここを説明しなきゃもったいない!」と言うのが何点かあった。そういうところから、江戸の人たちの知的な愉しみも見えてくるんだと思うのだよなぁ。


音楽のリテラシー。浮世絵のリテラシー。

「解らないけどなんだか良い」もいいんだけれど、詳しく知ればもっと愉しいのは確かなこと。

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