コニタス

書き留めておくほど重くはないけれど、忘れてしまうと悔いが残るような日々の想い。
気分の流れが見えるかな。

卒業論文の公開・閲覧

2008-02-10 19:05:29 | 
彦星先生がブログで「卒論ミュージアム☆」について紹介している

その中に、新聞記事画像もあるのだけれど、『朝日新聞』に掲載された私のコメント

「文化系の研究は理科系に比べて注目されることが少なく、公開されたということもほとんど聞かない。学生が社会と関わった成果を多くの人たちに知ってもらいたい」

は、文脈上解りにくい、というか、事実誤認と受け取られかねないので、若干補足しておく。

*「社会と関わった成果」というのは、必ずしも現実社会に関わる内容という意味ではないこと、言うまでもない。
では、どういうことか、というのはこちら。



文系の卒業論文も公開しています。

このコメントは、別の記者からの質問に答えたのだったか、学生の発言に補足した物だったか、それらを案配して作られたような記事だな。

えーと。
卒業論文は基本的に「公開」されるはずです。
ただし、明確な管理ができていない。

法人化と前後して情報公開が注目された時に、学内の文書も保管や公開に関する規定がいろいろできた。

独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成十三年十二月五日法律第百四十号)」というのが親の法律。

これに基づいて「静岡大学法人文書管理規程」と言うのが作られ、文書ごとに保存期間が定められている(別表(第6条関係)「静岡大学法人文書保存期間基準」*ワードファイルです)。

それによると、卒業論文は「教員が保有する文書>教育関係文書」に分類される。
博士論文の10年が最も長く、卒業論文は学生名簿・住所録・学生成績一覧・過去の入試問題・ゼミ発行の学生論集・修士論文などとともに5年間保存しなければならないことになっている。
これは、だいたい横並びで、どの大学も一緒だろう。

「教員が保有する文書」と言うのも若干不思議な感じもするのだけれど、実際コース単位で保管していることが多いのではなかろうか。図書館や学部、学科で保管する場所があって、常時公開できれば面白いのだけれど、そういうスペースも、管理する人も手当てできないのが実情。

私のゼミの卒業論文は、全部私の研究室に保管してあるのだけれど、正直もう場所がない。

そういう現実はともかくとして、卒業論文は、請求さえあれば見せなければならない状態にある。
ただ、そういう制度は知られていないし、見たいと思う人もいない、と言うことだろう。

昔は、我々のコースでも『静大国文』という機関誌を出していて、その年の卒業論文の題目リストを掲載していた。これによって、探す気になれば「無名」の卒業論文を検索することもできる。日本文学の学科・コースがある大学では大抵やっていたと思うのだけれど、いまはどうなんだろう。

私のゼミに関しては、私のホームページで題目リストを公開している(すみません。更新が追いついていません。でも歴史的な変化が面白いので是非見てください)ので、それを見て知らない人から「見たい」と言う連絡をいただいたこともあった。


つまり、「公開」はされているのです。
卒業論文発表会も、基本的に公開しています。

なんだけれど、広報をちゃんとしていないので、殆ど部外者が来ない。
今年の日文の、公式の「卒論発表会」は、2/13(水)12:50からだそうです。
人文B402教室かな。
これはこれで面白いので、是非、「部外者」にこそお出で戴きたい。

文科系の卒業論文は、社会とコミットしない物が殆どだから、理系の新発見や新発明に比べたらニュース性もないから、報道されることも少ない。
そういう環境もあって、公開されてる印象がないんだと思う。

そもそも興味もたれないし。
って、もったいない。
テーマが問題じゃないのです。
企業の人事担当さん、学生の卒業論文をちゃんと読んだら、就職試験するより確実に「人物」が解りますよ。
タイミングが難しいけれど、出願書類に含めていただきたい。




あぁ、そういえば(話はまた逸れるけれど)、「市民開放授業」も、どのくらい認知されてるんだろう。
あっぱれ会を始める時、聴講生の料金が高すぎると言うのであれこれ探ったら何のことはない、カルチャーセンターより安い料金設定で受講できる仕組みは最初からあったのに使ってなかっただけだった。
手柄話のようだけれど、あっぱれ会関係の「静岡の文化」が、静岡大学の「市民開放授業」を促した功績は大きいと思っている。



さて、5年間の保管義務がある、というのは、裏を返せば、5年間を過ぎたら廃棄しても構わない、と言う意味でもある。もし捨ててしまったら元には戻らない。
昔はいい加減だった(?)ので、私の卒業論文は、原本も手元にある。修士論文は「永久貸出」の手続きをして、やっぱり手元にある。いずれも、既に「期限切れ」だ。


大学が保管するべきかどうか、と言うのも議論の余地があると思うけれど、いずれにしても、こういう蓄積が死蔵されている状態は問題だと思う。

ブログに書いたことがあったかどうか定かではないけれど、こういう問題はもっとずっと裾野が広い。
たとえば、小学校以来、様々なフィールドワークが行われ、地域の商店街マップとか、社会見学とか、いろいろやってきた物は、何処に行ってしまったんだろう。
持ち帰って保管している人もいるかもしれない。学校の物置の中?

既に処分されてしまった物が大半だと思うけれど、もしも、歴史のある小学校で、数十年分の商店街マップが出てきたら、と言うことを想像してみて欲しい。

こんなに素晴らしい定点観測資料は望んで作れる物ではない。
そういう資料が、しかし、いまもなお、日本中(まぁ、世界中と言っても間違いないでしょう)の学校に眠っている。

もったいない。

個人情報の問題もあるだろうけれど、こういう物は、ちゃんと整理することで、情報になる。
どこか一箇所にまとめる必要もないし、現物を閲覧させることもない。
必要なデータと画像があればすむことだ。


静岡県立静岡中央高等学校
で行われているフィールドワークの成果は、伊伝財団のバックアップで展示されたことがある。その圧倒的な質と量は目を見張る物があって、その後一度高校に尋ねていったこともある。実は、この蓄積も、個人情報の問題があって、公開アーカイブが作れないでいるらしい。

実にもったいない。
この取り組みは、本当に素晴らしい。
沢山の人に知っていただきたい。



市内の図書館に大学の卒業論文を見られる棚があったら良いですね、と言う話がある。
いいですねぇ。

実は、随分前に、学内に学科の資料室を作って、そこに卒業論文(の要旨集でも)の他、教員の研究成果・授業で配付した資料やなんかも閲覧できる場所を作って欲しい、と言う提案をしたことがあったんだけれど、それも却下された。
まぁ、実際場所も人も……。

大学のサテライト、とかいって学部案内の資料を置いたり、時々公開授業をやるくらいなら、いっそのこと、こういう授業関係の資料を可能な限り閲覧できるようにしたらいいと思うなぁ。
これ、Bーnestの仕事じゃないですかねぇ。


あ、場所と人……。





卒論ミュージアム☆」情報、静岡大学生涯学習教育研究センタートップページ「news」からもリンクされました。


勝手にタイアップ企画「私の卒論、あなたの卒論」、随時増殖中。
あなたの卒業論文に関する思いをどんどんコメントしてください。

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3 コメント

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卒論の「公開」 (えりやま)
2008-02-11 10:14:44
ある先生に1年位前に
「研究や論文は、その人の生き方や人物が一番良く現れるモノデス。むしろ、そうでなければそういったもの(研究や論文)は意味のないモノになりマス。」と言われたことがありました。
それ以来、卒論を書く間ずーっとその言葉が心から離れませんでした。明日、口頭試問なので卒論を読み返していますが、とにかくお粗末で確かに今の自分を最もよく反映しているのかもしれないと思います。

公開の件ですが、うちのコースでは最近のものは、資料室のどこかに保管してあるのかも。。。基本的に先生は、永久保存だとおっしゃっていました。
だけど、うちでは基本的に読ませてもらえないことになっていますよ。たしか。

卒論ミュージアム、楽しみです!
返信する
ありがとう! (コニタ)
2008-02-11 12:42:41
15日、どうなりますかねぇ……。

>だけど、うちでは基本的に読ませてもらえないことになっていますよ。たしか。
先生たちの配慮なんでしょうかねぇ。
でも、規則上、正式な開示請求があったら断れないと思いますよ。


私のゼミは後輩たちに読まれる事を前提に書かせています。
返信する
リンク先変更 (こにた)
2013-03-06 16:29:08
メモ
卒業論文の保存期間は5年間 ↓11頁
 http://reiki.adb.shizuoka.ac.jp/act/actdata/110000114/current/FormEtc/bt2ft1notesub1t1.doc
満了後は廃棄 ↓4頁
 http://reiki.adb.shizuoka.ac.jp/act/actdata/110000114/current/FormEtc/bt3ft1notesub1t1.doc
返信する

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