◇5月25日(金曜日)外は小雨
交流戦/西武ドーム
西武10-0ヤクルト
この試合の殊勲者は、投手は5年ぶりの完封勝利を挙げた石井一久(39歳)、野手は先制の打点を挙げ、3安打を放った片岡易之(29歳)だ。
石井のストレートは最速140キロ程度でスピードガン的には速くないが、勢いがあった。バテてもいいはずの8回にはそれまでの変化球主体からストレートを前面に押し立てるピッチングに変わり、ヤクルト打線を3者凡退に打ち取っている。年齢を重ねても、ストレートの球速が落ちても、石井は本格派であることをやめようとしない。精神的な活力源がこの投手には何かあるのだろう。
中盤までは変化球主体だった。とくに威力を発揮したのがチェンジアップ。雑誌類には持ち球として紹介されることが少ないが、ネット裏の左右に場所を移して見ても、そういう球種に見えた。これを早いボールカウントで使い、勝負球としても使った。たとえば、最終回の1死一塁の場面で田中浩康を迎えたときの配球は次の通り。
<116キロカーブ(ボール)⇒123キロチェンジアップ(ボール)⇒136キロストレート(ストライク)⇒138キロストレート(ストライク)⇒138キロストレート(ボール)⇒136キロストレート>
変化球を2球続けてストレートへの反応を遅くさせるように仕組んでから、ストレートを続けて打ち取る、という配球である。2回表には畠山和洋の初球、3回表には山田哲人の初球にチェンジアップを投げている。ヤクルト打線の頭にはスライダーがあったと思うので、逆方向のチェンジアップは面食らったはずだ。
石井、片岡以外ではミレッジ(ヤクルト・27歳)の走塁と炭谷銀仁朗(西武・25歳)の強肩に見惚れた。ミレッジは2回表の第1打席、初球をプッシュバントして驚かせた。打球は一、二塁間方向に転がり、ミレッジはヘッドスライディングしてセーフをもぎ取る。このときの一塁到達タイムは何と3.89秒。私の俊足の基準は4.3秒未満なので、俊足という言葉だけでは表現しきれない速さだ。
ミレッジへの不満は一塁走者としてのリードの小ささ。アンツーカーの枠の中に体のほとんどが入っているのである。健脚を誇る選手ならアンツーカーの境界を跨ぐようにしてリードするのが普通である。これが仇になった。二盗を企図するがヘッドスライディングも空しくアウトになってしまう。リードが大きければかなり微妙なタイミングになっただろう。
また、このときの炭谷の二塁送球が素晴らしかった。投球を捕ると素早く送球態勢に入り、投げたボールは二塁ベース下部分にぴたりとコントロールされた。このときの二塁送球タイムは実戦のものとしては超絶の1.85秒。
私が今年計測した中では、5/2の炭谷の1.90秒(許二盗)をしのぐベストタイム。公式ホームページ(http://kosekijunjihomepage.com/)で「ストップウォッチランキング」を常時開設しているので、興味のある人は覗いてほしい。
得点は10対0の大差になったが、いたるところにプロの技が散りばめられた見応えのある試合で、私は満足した。