南部、小林、益川先生のノーベル物理学賞受賞に刺激されて自分も素粒子物理学や超ひも理論などの最先端物理学に挑戦したいと思った人も少しはいることだろう。しかし何をどの順番で勉強したらそこまでたどりつけるのか、いざ始めようとしてみると戸惑うかもしれない。
一般書や啓蒙書ならばどの本からとりかかってもいいのだが、いざ数式で説明された教科書や専門書で本格的にはじめようとすると、どの本から始めたらいいのか途方に暮れるものだ。かつて僕もそうだった。(僕の場合は解析学と解析力学、ベクトル解析と関数解析、微分幾何と位相幾何、統計学と統計力学の違いがピンときていなかった。)
そんな意欲的な中学生、高校生、大学生のために、どういう内容の物理、数学の本をどのような順番で読んでいけばよいかロードマップ(道程表)を書いてみた。大学以上の物理、数学の分野についてはリンクページでその内容がわかるようにしておいた。なお、大雑把な紹介なので多少の不正確さについてはご容赦を!
取り組む分野が決まったらアマゾンやこのブログの書評を参考に入手する本を選べばよい。「少年老い易し、学成りがたし。」である。
中学レベルの数学、理科:
中学で学習する数学と理科(特に力学や物質の成り立ち)はすべて必要だ。そしてこの「マルチメディアで見る原子・分子の世界というページを理解しておけば十分だろう。
中学数学の勉強はこちらでどうぞ。(注意:IE専用サイトです。)
中学理科の勉強はこちらでどうぞ。
高校レベルの数学、物理:
数学は数Iから数IIIまですべて必要。特に代数、関数、方程式、三角関数、指数関数、微分・積分、ベクトル、行列、数列、確率は必須だ。
物理はIとIIすべて理解しておくべし。
高校数学の勉強はこちらでどうぞ。(注意:IE専用サイトです。)
高校物理の勉強はこちらでどうぞ。
NHK高校物理と数学のページはこちらからたどれます。
大学レベルの物理数学の勉強に入る前に「KIT数学ナビゲーション」で高校までの数学のおさらいをしておくことをお勧めする。
KIT数学ナビゲーションは携帯サイトも開発がはじまったようだ。(まだこれからという感じだが、今後のコンテンツ追加に期待している。)
http://w3e.kanazawa-it.ac.jp/math/k-tai/k-tai.cgi?target=/math/k-tai/index.html
高校レベルの微積分を集中的に復習するなら「微分積分いい気分」というサイトがお勧め。
大学以上の数学、物理学についてはそれぞれ分野とそれを理解するために必要な数学の分野を列挙する。物理学の分野は歴史的に発見された順に並べたので、この順番でご自身の勉強を進めるとよい。
ニュートン力学(古典力学):PDF教材
-> 線形代数、解析学(実解析)、ベクトル解析、大学レベルの微積分学、微分方程式、偏微分方程式
線形代数、解析学については「線形代数学I、線形代数学II、解析学I、解析学II」もお勧めサイトです。
大学レベルの物理学数学のPDF教材はこちらです。
大学レベルの微積分学や微分方程式は「解析学II」や「数値解析入門I」、「数値解析入門II」でさらに理解を深めてください。(偏微分についてもこれらのサイトに含まれています。)
解析力学(古典力学の一般化):解析力学のサイト2
-> 線形代数、ベクトル解析、大学レベルの微積分学、微分方程式
熱力学、統計力学(分子運動論)
-> 線形代数、解析学(実解析)、ベクトル解析、大学レベルの微積分学、微分方程式、偏微分方程式、確率論、統計学
電磁気学: 岡部先生の電磁気学
-> 線形代数、解析学(実解析)、ベクトル解析、大学レベルの微積分学、微分方程式、偏微分方程式
特殊相対性理論: PDF教材
-> 線形代数、解析学(実解析)、ベクトル解析
一般相対性理論
『ディラックの「一般相対性理論」を読む』
-> 上記の数学すべて+リーマン幾何学+共変微分、テンソル、変分学
量子力学:量子力学PDF教材、「波動」についてのPDF教材
-> 線形代数、ベクトル解析、大学レベルの微積分学、微分方程式、偏微分方程式、複素関数論、超関数、特殊関数(、群論はオプション)
相対論的量子力学(特殊相対論を量子力学と合体。この分野でディラックは陽電子の存在を予想した。)
-> 量子力学の学習に必要な数学と同じ
素粒子物理学:原子核物理学PDF教材、核構造PDF教材
以下は素粒子物理学の分野だ。
場の量子論、量子場の理論
ゲージ場の理論、(ゲージ理論は「力」の原因が粒子の交換によるとする理論)、
量子電磁力学(QEDのこと。朝永振一郎先生のくりこみ理論もこの分野)、経路積分
-> 量子力学、電磁気学に必要な数学、群論、表現論
量子色力学(QCDのこと。クォークの色荷の理論)
標準理論、電弱理論
-> 上記のすべての数学+、群論、微分幾何学・位相幾何学
超ひも理論、M理論
-> 上記のすべての数学+関数解析学(空間論、作用素代数)、、ファイバー束、複素多様体、ホモロジー
「理論物理学のための幾何学とトポロジー〈1〉:中原幹夫」
「理論物理学のための幾何学とトポロジー〈2〉:中原幹夫」
--------------------------
2012年3月28日に追記:
場の量子論(一般人向けの説明)
http://kamakura.ryoma.co.jp/~aoki/paradigm/magnetic-field.htm
http://hp.vector.co.jp/authors/VA011700/physics/trivial.htm
http://www5b.biglobe.ne.jp/sugi_m/page018.htm
http://www.k2.dion.ne.jp/~yohane/000000utyuusouzou102.htm
http://www.mns.kyutech.ac.jp/~okamoto/education/quantumadvanced/2nd-quantization-field-operator080728.pdf
場の量子論(大栗博司先生)
http://planck.exblog.jp/15458917/
場の量子論
http://members3.jcom.home.ne.jp/nososnd/field/field.html
Report 場の量子論 JS0.5
http://www.jsimplicity.com/ja_Report_QuantumFieldTheory_html/ja_Report_QuantumFieldTheory.html
場の量子論(PDF)
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/handai-honor08/yr08-02-field-concept08.pdf
http://www-het.phys.sci.osaka-u.ac.jp/~higashij/kiji/fieldrg.pdf
応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。
関連記事:
「超ひも理論」、「M理論」をビデオで見よう
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4c4fd9c8784a30aafc73415e26dc899b
タダで勉強しちゃおう2(物理、数学リンク集)
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d82a27b0b149938418e4defdd2b95338
こうして見てみると、素粒子や超ひもの「上記すべての数学」がなんか輝いて、神々しく見えます(笑)憧れですよねホント・・
それにしても、とねさんの記事にはいつも丁寧なリンク張ってあり、しかもリンクは厳選された秀逸なものが多く、とても参考になります。
ロードマップを役立てていただいて光栄です。どの分野にも新しい発見や感動があるはずですから楽しみにしていてください。
コメントを投稿していただいた後、少しだけ記事本文に追記いたしました。(KIT数学ナビゲーションというリンクを追加しました。)
線形代数は特に大切な基礎です。(近々線形性が深く関わっているシンプルな物理概念について「理科復活プロジェクト」の記事を書く予定です。)
線形代数リンク集を作ってみました。いちばん最初の「アニメーションで見る線形代数」は「実感」できるのでご覧になってみてください。
線形代数リンク集
http://www33.atwiki.jp/ktonegaw/pages/31.html
> とねさんの記事にはいつも丁寧なリンク張ってあり...
ありがとうございます。あまりたくさんリンク張ると将来リンク切れの管理が大変ですね。(笑)
「場の量子論」、「量子電磁力学」、「超ひも理論、M理論」、「位相幾何学」あたりに今後勉強の助けになるサイトが登場することを期待しています。他力本願です。(笑)
それにしてもみなさん素晴らしいページを作っていらっしゃるので、僕自身にとっても役立っています。僕の高校や大学時代にはインターネットがありませんでしたし、今のように良書やアマゾンのような読者によるレビューがなかったですから、昔と今とでは得られる情報量にとんでもない差がありますね。
年末年始のお休みは時間がたくさんあることでしょうからご家族や親戚、友人への(最低限の)義理を欠かないことを心がけながらどっぷり浸かって勉強してください。
> 物理概念について「理科復活プロジェクト」の
>記事を書く予定です。
早速書いてしまいました。(笑)以下の記事です。
僕が物理と数学にハマリだしたきっかけ - 重心と質点のはなし
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/f78dd46bca9c95beb847bf60b9168fa3
26次元のひも理論に超対称性を導入すると10次元の超ひも理論に
なるとこまで分かりましたが、そこから先は難しい。
場の量子論だけでなく、素粒子の標準理論も知らないといけないようです。
リンク先を貼っておきます。
http://www7.ocn.ne.jp/~miyazaw1/papers/oldboy.pdf
http://www2.yukawa.kyoto-u.ac.jp/~yonupa/particle/2005/kougiroku05string.pdf
僕はまだこれらを理解できるレベルに達していませんが、理解のレベルというものについてもいろいろな段階がありますから少しずつ深めていきたいと思います。
素粒子論にしても市販されている教科書でどの程度まで独学できるか、今後挑戦するつもりでいます。
量子力学以降の理論では、実感と物理現象が乖離していますから、頼りになるのはやはり数学力と直感力ですね。
>頼りになるのはやはり数学力と直感力ですね。
量子力学が状態関数で表わされるので、そうだと思います。
物理現象を数式で解くのが物理学です。
タイトルの講演が東京大学数物連携宇宙研究機構で見れます。
時間の余裕があれば見てください。意外と面白いです。
http://www.ipmu.jp/jp/news/081025kouza.html
見てみますね。
反ニュートリノがニュートリノに変わって10億分の1の非対称性で
反物質の世界が消えた?そうです。
恐縮ですがタイトルの講演を東京大学OCWで見つけました。
21世紀の物理学は、「暗黒物質と暗黒エネルギー」の解明だとか
方向性を語っていました。
http://ocw.u-tokyo.ac.jp/courselist/34.html
まとまった時間がとれず「消えた反物質の謎」はまだ見れていません。申し訳ありません。明日の夜までに見て、感想を投稿しておきますね。(今、RealPlayerをインストールしたところです。)
今日ご紹介いただいたサイトもなかなかよさそうですね。
反物質が消えた理由について小林・益川理論では十分説明できないということ、それを説明するためにニュートリノの研究に期待がかかっていることがよくわかります。
僕のパソコン環境が悪いのかどうかわかりませんが、音声がときどき飛んでいました。