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NHKニューヨーク白熱教室(4回シリーズ)
毎週金曜日 Eテレ 午後11時から11時54分まで(2か国語放送)
http://www.nhk.or.jp/hakunetsu/newyork/index.html
ニューヨーク市立大学シティーカレッジ
ミチオ・カク 教授
超弦理論が専門で、世界で最もその名を知られている物理学者の一人。日系3世。物理学のみならず未来論についての啓蒙活動で知られる。コンピューターの驚異的発展、バーチャル世界の膨張、不老不死研究、心や意識の未来など、これまでにない全く新しい未来像を提示し続けている。最新の科学を一般の人向けにわかりやすく情熱的に伝える力量が世界で高く評価されている。
NHKニューヨーク白熱教室:第4回 変貌する“心の未来”
物理学の発展を背景に、この15年ほどで脳と心、意識とは何かについての理解が急速に進んだ。今後は日々の記憶や仕事のノウハウを互いに送りあったり、人間の人格そのものだと考えられる“神経回路の全体図”をデータとして送信できたりするようになると考えられる。すると宇宙旅行もレーザービームに人間の意識を乗せ、光の速さで行うことが可能になるというのだ。大変貌を遂げる人間の脳と心の未来に最先端の理論物理学者が挑む。
先週放送が開始したNHK白熱教室の新シリーズ。数々のポピュラー・サイエンス書や講演で知られているニューヨーク市立大学シティーカレッジの理論物理学者、ミチオ・カク先生による現代物理学講座だ。
第4回は「変貌する“心の未来”」をテーマに話が進んだ。
現代科学がこのまま進歩すると、私達はどこに行き着くのか?
この宇宙を心でコントロールすることができるようになるのだろうか?
予定どおり最終回は冒頭からとてつもない話をぶち上げて講義は始まった。そして案の定、僕は途中からついていけなくなった。
特に「ブレイン・ネットが構築できないという物理法則はない」はダメでしょう。ブレイン・ネットとは人間の意識を遠くに送るためのネットワークのことだ。これを言ってしまえば、ほとんどの夢物語が「実現できないことはない」ということになってしまう。
以下が全体の流れ。僕がまともに聞くことができた部分を「黒」、半信半疑な箇所を「緑」、まったく夢物語だと思った箇所を「赤」で示しておこう。
- 意識や心の未来
- 人間の脳以上に精巧なものはない
- 脳には1000億個の神経細胞がある
- 爬虫類脳、小脳:動物として生きるための最低限必要な判断をする
- 哺乳類脳:周囲に対する振舞い方、礼儀などを理解する
- 前頭前皮質:人間らしさを決める
- 10代は前頭前皮質が発達段階
- 脳の研究の歴史
- アリストテレス:魂は心臓にある
- 古代エジプト:ミイラにする際は脳を捨てていた
- 現在は脳の地図作りが磁気を使って可能になった
- 脳のそれぞれの領域の役割がわかるようになった
- 食べることと手を使うことの役割を果たす部分が脳の大きな領域を占めている
- 脳りょうを切断すると2つの人格があらわれることがある
- 脳とコンピュータは何が違う?
- アラン・チューリングのチューリングマシン
- 現代のコンピュータはすべてチューリングマシン
- 脳にプログラムは存在しない、CPUもない、OSもない、...
- 脳はみずから学習するマシンである、脳はみずからを配線しなおすことができる
- 脳はチューリングマシンではない
- 物理学のおかげで思考している脳の中をじかに調べられるようになった
- 1950年代には脳波計があった。現在はMRIで脳を調べられるようになった
- 心理学で不可能だと思われることが可能になった。パラダイムシフトとなった
- 機械に脳をつなげることが可能になる
- 念じるだけで、機械を操作することが可能になる
- スティーブン・ホーキング博士:まばたきだけでパソコンを操作する
- 脳の運動つかさどる部分にチップを載せる:ブレイン・マシン・インタフェース
- 意識するだけでメールを送信したり、ロボットアームを操作できるようになった
- ロボット・アーム、ロボット・レッグ
- アシモ:人間の脳につなげてコントロールできる
- サロゲート:人間が遠隔操作できるロボット
- サロゲート:人間のかわりに月や惑星、宇宙に行く
- 記憶をたがいにやりとりすることができる
- ヘンリー・M:海馬に損傷を受けて記憶することができなくなった
- 記憶が1箇所で処理されているということがわかった
- 記憶をデータとして取り出すことができるようになった
- マウスの記憶を取り出すことに成功した。水の飲み方の記憶を読み出し、戻すことに成功した
- 猿がバナナを食べているときの記憶の読み出し、戻しに成功した
- 未来の認知症の治療を目的にする
- 微積分についての記憶、スキルの記憶
- 嘘の記憶の植え付けの実験に成功した
- 映画「マトリックス」の世界:自分以外はすべて仮想の世界
- 現在は記憶の断片を記録できるだけ。
- 意識を録画することができる
- 意識によって生じた血流を分析して得られたデータから映像を再構築する実験に成功
- 夢を映像化することができるか?
- 夢だと自覚しながら夢を見ること。明晰夢。
- 夢の方向性をコントロールできるようになる。
- 明晰夢を利用して画像化する
- サバン:超天才(特定の分野での極めてすぐれた才能をもつ)
- 写真記憶(映像記憶):見たものをそのまま映像化できる能力
- キム・ピーク:映画「レインマン」のモデルになった人物
- 彼は左右のページを同時に読むことができた
- 彼は左脳と右脳をつなぐ脳りょうが欠損していた
- 記憶できるが忘れることができない
- 後天的にサバンになった人もいる(事故などで)
- 脳の左側にダメージを受けると超天才になれる?MRIで解明できるかも?
- アイザック・ニュートンという超天才
- ニュートンに社交的な能力はほとんどなかった
- ダニエル・タメット:円周率の記憶で有名
- アインシュタインの脳は医師がこっそり持ち出した
- 脳はガラスのビンに入れて40年間冷蔵庫に入れた
- 脳は通常より小さかった。ごく普通の脳だった。
- 抽象的な思考をつかさどる領域が通常より広かった
- 意識とは何か?
- カク博士が考える意識の定義:環境を評価する方法の集合体
- サーモスタットには1単位、花は10単位の意識がある
- 動物は数百単位の意識をもつ
- 爬虫類脳:レベル1の意識をもつ:空間の中で自分がどこにいるかを理解できる
- 哺乳類脳:レベル2の意識をもつ:社会を理解できる
- 人間脳:レベル3の意識をもつ:時間を認識できる
- 動物は「今」だけを生きている。人間は「計画」をたてて生きている
- なぜ成功する人としない人がいるのか?
- 「満足を先延ばしにできる能力」をもっている子供は将来成功できる
- 将来を見据える能力、時間の意識が大切
- オバマ大統領の「ブレイン・プロジェクト」:精神疾患への対策
- 精神疾患:大きな社会問題
- ヒトコネクトーム:人間の神経回路の全体図
- 記憶も遺伝情報もディスクに記録できる
- 「魂の図書館」が実現するかもしれない
- ホログラムのあなたが未来に登場するかもしれない
- ヒトコネクトームを宇宙に送り出せるかもしれない(100年後くらい?)
- 光の速度でヒトコネクトームを送ることができる
- これは意識を宇宙に送ることである
- ブレイン・ネット:意識を西海岸に1秒以内に送ることができるかもしれない
- 未来には感情も宇宙に送ることができるかもしれない
- ブレイン・ネットが構築できないという物理法則はない
- 宇宙人がもしかしたらヒトコネクトームを送ってきているかもしれない
しかし「意識によって生じた血流を分析して得られたデータから映像を再構築する実験に成功」していることには驚かされた。脳や意識などは複雑すぎて解明できるはずはないと僕は思っていたからだ。
番組で映されたされた映像を4つ掲載するが、放送で再現されていた映像は動画だった。
夢の映像化は、もしかしたら実現できるのかもしれない。
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あと驚かされたのは「記憶のやり取りをする実験に成功していたこと」、「記憶の読み出しや書き込みに成功していたこと」である。実験の詳細が紹介されていなかったので、僕としては半信半疑なのだが、これってホントに本当なの?という感じである。
「フューチャー・オブ・マインド―心の未来を科学する:ミチオ・カク」(Kindle版)には実験のことが詳しく書かれているのか気になってきた。
僕はこの最終回を次のように結論したい。
「これらの夢物語は現代科学で予想されているのではない。現代の科学では否定することができない夢物語なのだ。」
なお、今回までの放送はすでにネット上に公開されてしまっている。見逃した方はここから検索してみるとよいだろう。(この記事を投稿した時点では「NHKオンデマンドの見逃し番組」からは見れるようになっていない。)
以下、ミチオ・カク先生の著書をジャンル別に紹介しよう。
科学教養書:
「アインシュタイン よじれた宇宙(コスモス)の遺産:ミチオ・カク」- 2007年刊行
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内容
アインシュタインの相対性理論はイメージとして現れた。光と並んで走るイメージ、いすから落ちるイメージ。そして宇宙の謎を統一する未完の試み、統一場理論。アインシュタインのイメージを軸に、現代理論物理学の権威ミチオ・カクがその生涯と業績を分かりやすく解説する。
科学(?)教養書もしくは科学SF書: Kindle版がお買い得だ。
「パラレルワールド―11次元の宇宙から超空間へ:ミチオ・カク」(Kindle版)(紹介記事)- 2006年刊行
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内容
ブラックホールへの決死の旅や、タイムマシン、もうひとつの宇宙、そして多次元空間―本書は宇宙論の世界を席捲する革新的な宇宙の姿を鮮やかに描き出す。今日、ひも理論とその発展理論であるM理論は圧倒的な支持を得て、世界の名だたる物理学者や天文学者が、最先端の波検出器、重力レンズ、衛星、天体望遠鏡を動員し、多宇宙(マルチバース)理論の検証に取り組んでいる。もしパラレルワールドが存在するのなら、いつかこの宇宙が暗く凍ったビッグフリーズを迎えるとき、われわれの未来の先進文明は、次元の「救命ボート」によってこの宇宙を脱出し、パラレルワールドへと至る方法を見つけるであろう。
「サイエンス・インポッシブル―SF世界は実現可能か:ミチオ・カク」(Kindle版)- 2008年刊行
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内容
今でも当たり前のGPSや携帯電話は、かつて想像の世界にしか存在しなかった。だとしたら、タイムトラベルやテレポーテーションも、実現できる日が来るかもしれない。『スター・トレック』や『透明人間』など、古今のSF作品に登場する「ありえない」テクノロジーは、いつ、どのように実現できるのか…。現代物理学界を代表するミチオ・カク博士も、昔はSF大好き少年だった!だれもが持つ「少年時代の夢」をかなえる最先端の科学理論をカク博士が熱く語った、全米ベストセラーのポピュラー・サイエンス書。
「2100年の科学ライフ:ミチオ・カク」(Kindle版)- 2012年刊行
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内容
コンピュータ、人工知能、医療、ナノテクノロジー、エネルギー、宇宙旅行…近未来(現在~2030年)、世紀の半ば(2030年~2070年)、遠い未来(2070年~2100年)の各段階で、現在のテクノロジーはどのように発展し、人々の日常生活はいかなる形になるのか。世界屈指の科学者300人以上の取材をもとに物理学者ミチオ・カクが私たちの「未来」を描きだす。
「フューチャー・オブ・マインド―心の未来を科学する:ミチオ・カク」(Kindle版) - 2015年刊行
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内容
テレパシー・記憶の増強・AI…SFが現実になる!「心」をめぐる科学の最前線、そこから導かれる驚愕の未来図。NHK「NEXT WORLD私たちの未来」出演の理論物理学者が綴る第一級のサイエンス・ノンフィクション。
専門書: 通常の教科書である。場の量子論までの物理学を学んでいることが前提。(参考:「超弦理論に至る100冊の物理学、数学書籍」)
「超弦理論 :ミチオ・カク」- 1989年刊行
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内容
過去50年もの間解けなかった、場の量子論と一般相対論の統一という問題を解決する超弦理論についての本格的入門書。2000年刊行の改訂版では省かれた「アティヤ=シンガーの指数定理」の証明が掲載されている。
「超弦理論とM理論:ミチオ・カク」(購入リンク2)- 2000年刊行
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内容
過去50年もの間解けなかった、場の量子論と一般相対論の統一という問題を解決する超弦理論と、その最近の定式化であるM理論を追加して改訂した本格的入門書。1989年刊「超弦理論」の改題改訂。
関連記事:
NHKニューヨーク白熱教室:第1回 アインシュタインの夢
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/274adc0121aba0485a16318d343c176f
NHKニューヨーク白熱教室:第2回 “万物の理論”の驚くべき予言
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/0dabd5f45be62719d2ee0ba493b1a8da
NHKニューヨーク白熱教室:第3回 科学が変える未来社会
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ご存知かもしれませんが、
ヘンリー・Mの話は、早川書房から翻訳が出てる
『ぼくは物覚えが悪い』
という本で詳しく紹介されてるみたいですよ
(ぼくは買ったっきり積んだままですが)。
>意識から血流を分析して得られたデータから映像を再構築する実験に成功
初めて知りました!
これは衝撃ですね。
>脳や意識など
数学モデルを作ったり物理的に解明できる日が来るんですかねー。
個人的には、それが解明されたとして、
それが「脳や意識とは何か」の答えになるとはなかなか思えないですが
(もちろん、その方面の研究には意義があると思いますが)。
脳とか意識に関しては、数学や物理方向よりも、
もっと経験則的なアプローチからの「仕組み」を知りたい気がします。
『脳の中の天使』という本には、脳に関する様々な不思議な実験結果について解説してあって、
非常に面白かったです。
この記事で紹介されている、ダニエル・タメットの共感覚についての解説もありますよ。
たまには物理学や数学を離れ、このような番組を見るのもよいものですね。
脳について可愛らしい漫画で学べるページを見つけました。海馬が記憶をつかさどっていることも詳しく解説されています。
http://kaiwa-kouza.com/category/h10.html
意識から血流を分析して得られたデータから映像を再構築する実験に成功
これは衝撃的なのですけど、網膜に映った映像->脳内の活動->視覚のプロセスが解明されたということになるのか、そして「視覚」が「意識」なのかということがよくわからないのです。でもとても気になりますね。映像に過ぎないものが脳内でイメージ以上の何かに変換されていくプロセスが不思議でなりません。
> 数学や物理方向よりも、もっと経験則的なアプローチからの「仕組み」を知りたい気がします。
そうですよね。僕もそう思います。
それと同時に経験則的なアプローチがどこまで科学と呼んでよいのかということも気になりました。日ごろ物理と数学しか学んでいない僕には、科学と非科学の境界の分野は危ういものだとこの番組は気付かせてくれました。
『脳の中の天使』をアマゾンでチェックしてみました。これはよさそうですね!
おはようございます(^-^)
白熱教室、全部見ました~。
(後半のヒトコネクトーム辺りは私も正直???でしたが)
映像を再構築するという話は3月くらいにたまたま
ニュースで知って、大変驚きました。
【バイオニックアイ】というものです。
今回の番組内で紹介されていた画像も、そのときにみたのと同じですので、おそらく同じ「バイオニックアイ」だと思います。
http://sign.jp/daa478f6
にシステムなども描かれています。
http://spotlight-media.jp/article/123760736352480337
では、バイオニックアイを装着したアレンさんが、
10年ぶりに奥様の顔を認識して大変喜んでいる動画も見れます。本当に心から喜んでおいででした。
科学技術もここまで来たか、という印象ですね。
優れた科学技術というものは、いつの世も
軍事に利用される危険をはらんでいて諸刃の剣ですが、
それで助かる人々の笑顔を見ると、ただ純粋に胸が熱くなります。
「バイオニック アイ」というものがあるのですね。
白熱教室で紹介されていたのは脳内の血流を解析したデータを映像に変換するのでバイオニックアイとはしくみが違うようです。
とはいえ、もうほとんど製品化に近いところまでバイオニックアイが開発されていることにも驚きました。
視覚を失った人が視力を取り戻すためのものなのですね。僕も胸が熱くなりました。
脳血流から映像が取り出せるのも視覚野のマップ構造から見て当然ですが、この映像を鮮明にするには同じ原理じゃ通用しないから今後はどうするか興味があります。
記憶の受け渡しも動物実験は以前から知ってましたが、これも内容の精細化で別の原理が出てくるから簡単には壁を越えられないでしょう。
> この映像を鮮明にするには同じ原理じゃ通用しないから> 今後はどうするか興味があります。
そうですよね。血流からだけでもこれだけの映像が得られたというのはすごいと思いましたし。また他の方法を使うなどして鮮明な映像を得るための研究が進んでいるのでしょう。
記憶の受け渡しですが、記憶だけでなく思考や感情など「心」も受け渡しできるようになると、大林宜彦監督の映画「転校生」のように男女の身体が入れ替わるのと実質的に同じことが実現できてしまいますねぇ。これは夢物語のさらに上をいっているわけですが。
昨年のサイエンスゼロでも紹介されていました。
いつごろかはさだかでないのですが、
同じだったことは、覚えています。
~物理法則はない、にはちょっと驚きました。
サイエンスZEROで紹介されていたことを教えていただき、ありがとうございます。2014年2月9日の放送ですね。(ttpをhttpに変えるとページが開けます。)
心の中が丸見えに!?? 脳内イメージ研究最前線@サイエンスZERO
ttp://blog.goo.ne.jp/ska-me-crazy2006/e/16ff9703c40db016198201e901eb9e8a
ttp://www.dailymotion.com/video/x1bpgec_zero_tech
動物でも人形でも心があると思う日本人が受け取るより過激なんでしょうね。
キリスト教文化圏では、そのように信じている人もいるでしょうねぇ。アメリカで人種差別が根強く残っているのもそのあたりが原因かと。。。
我が家の飼い犬(紀州犬の雑種)は、どうみても心がありますよ。エサを取り上げようとすると怒りますし、母や妹が風邪で寝込んでいたりすると悲しそうな顔をして寄り添っています。
また、エサをあげるときに「待て!」というとちゃんと待っていますから、少しの間でしたら「時間の概念」も持ち合わせているようです。