身元不明として亡くなった人のことを「行旅死亡人」と呼ぶのだそうだ。「こうりょしぼうにん」と読む。つまり「行き倒れの死亡者」のことである。
全国の自殺者統計は毎月公表されるようになったが、行旅死亡人は自殺者統計には含まれない。そういった方々の火葬は地方自治体に委ねられていて、地方自治体から報告を受けた国は「官報」に掲載することになっている。地方自治体でその記録は10年間保管される。
3月末に大量の派遣労働者が解雇されることが報道されているので、ホームレスも増えてしまうのだろうなぁ、自殺じゃなく公園で衰弱死や餓死したらどうなってしまうのだろうなぁ、と想像をめぐらせているうちにこの言葉に行き着いた。
世の中にはマメな方がいるもので、官報に載せられた行旅死亡人情報を丹念に掲載しているサイトを見つけた。集計(合計)の人数はわからない。(注意:官報から転載している文字情報だけなのですが、心臓の弱い方はご覧にならないほうがよいです。)
行旅死亡人データベース:
http://theoria.s284.xrea.com/corpse/
自殺者数は発表されるのに、行旅死亡人数を日ごろ目にしていないのはどうしてなのか?人数が少ないからなのか?と思って調べたらこういうグラフを見つけた。(昨年10月の西日本新聞の記事から画像を拝借させていただいた。)
記事には次のように書いてある。
「身元不明遺体の取り扱いを定めた「行旅病人及行旅死亡人取扱法」は1899(明治32)年制定。いわゆる「行き倒れ」を想定した法律だ。身元不明遺体が見つかると、警察が1週間ほど捜査した後、市町村が引き取り、火葬する。費用は生活保護法上の葬祭扶助費で賄われる。福岡市がここ10年で火葬した行旅死亡人は計154人。2007年は7人で、費用は約200万円だった。警察庁によると、07年の全国の身元不明死体は1078人。近年は減少傾向にあり、5年間で2割減った。一方、家出人捜索願が出された人のうち、犯罪に巻き込まれたり自殺の恐れがある「特異家出人」は07年約3万4000人。10年前からほぼ倍増している。」
行旅死亡人は毎年1000人程度なのだそうだが本当だろうか?年間の自殺者数が3万人程度なのでこの数字は少ないと判断すべきか?
グラフを見ると家出人捜索願いは毎年10万人だそうで、この数字にも驚かされる。10年たつと100万人だから日本の総人口の1%が家出人になってしまうということ??
おさえておくべき概数はつぎのとおり。
日本の総人口:1億3千万人
日本人の死亡者:年間110万人
日本人の自殺者:年間3万人以上
日本人の行方不明者:年間10万人
日本人の行旅死亡人:年間1000人(??)
福岡市の人口は約143万人で10年間での行旅死亡人が154人だったことを考えると全国で年間1000人という数字は比例計算としてはつじつまは合うのだが。。。
警察から地方自治体にもれなく報告されているか?全国のすべての自治体が国に報告しているか?誰もチェックしていないだろうから、かなりの人数が抜け落ちてしまっているような気がするのだ。ホームレスは毎日移動してしまうので実数を把握するのは困難だが、それにくらべて行旅死亡人のほうは把握しやすいはずだ。
ホームレスになると住民票がなくなり、国勢調査にも回答しないから日本の総人口にカウントされなくなる。世の中には人口に含まれていないホームレスや死亡されたことがカウントされていない人って大勢いるんじゃないかという気がしてきた。
今月以降、ホームレスの増加や社会全体の貧困化が進んでいく中で自殺者統計と並んでこの「行旅死亡人」という言葉は国の貧困化を計る尺度として今年注目されるキーワードになっていくのではという予感がしている。
関連リンク:
総務省統計局のサイト内で「行旅死亡人」について記載されているページ
http://www.stat.go.jp/data/chouki/23exp.htm
行旅病人及行旅死亡人取扱法:明治32年制定
http://www.geocities.jp/nakanolib/hou/hm32-93.htm
官報(インターネット版)
http://kanpou.npb.go.jp/index.html
行旅死亡人データベース
http://theoria.s284.xrea.com/corpse/
死だけは、
全ての人に訪れるのに、自ら命を絶つ人がこれだけいるのは、本当に悲しいことですね。。
それにしても、「行旅…」って。
自殺も悲惨ですが身元不明者として死を迎えるのは単に名前のついていない生物が死ぬようで、悲しさを越えた無常感がありますね。
昔からこういった死に方をする人はいましたが、ホームレスの増加によってその底辺でこういう形の死者が増えつつあること、そしてあまりに悲惨なためニュースとしても取り上げられる機会がないので、私達の関心事から漏れてしまっている気がしました。
ものすごく暗い話題なので僕のブログには似つかわしくないと思いましたが、あえて今回取り上げてみました。
サイト情報ありがとうございます。
行旅死亡人の年間数が気になって
googleで検索してたどりつき
ました。以前から、気にはなっていたのですが、やはりキチンとした統計は取れていないようですね。
自殺者でもしっかりとした証拠が
ないと行旅死亡人になってしまうところに統計の不備(この件に限らず)を
感じます。
数字の挙げ方とかポイントをよくおさえた
記事だと思います。
この記事を書いたのは半年前ですが、経済や雇用の状況は相変わらず回復の兆しが見えてきていません。この行旅死亡人データベースを見ると、普段私たちが気がつかないところで、そしておそらくその事実が報道されることもなく多くの方が行き倒れの形で亡くなっていることがわかります。
今月「行旅死亡人」という映画が公開されたようですが、やはり内容が重たすぎるためか、今日検索してみてはじめて気がつくほど目立たない映画のようでした。(映画通の方ならご存知だったのかもしれませんが。)
年の瀬を迎えるにあたり、このように不幸な亡くなり方をされる方が少しでも減ることを願っています。
この記事に対してコメントをいただいたことに対して、あらためてお礼を申し上げます。
>家出人捜索願いは毎年10万人だそうで、この数字にも驚かされる。10年たつと100万人だから日本の総人口の1%が家出人になってしまうということ??
10万人(ていうか近年は8万人台で推移)というのはあくまで「その年に捜索願が出された件数」であって、95%以上は所在確認・自力帰宅・捜索願の取り下げ・一部で死体発見などされており(しかもその大半は1週間以内ぐらいの短期決着)、所在不明のままなのは年に1~3千人とかその程度です。多い失踪理由は、認知症老人の徘徊や若者の家出などです。所在不明のままなのは、家出した若者や経済的理由で夜逃げした中年などが、風俗・チンピラ・身元確認の緩い日雇い業務・ホームレス等で暮らしている例が多いんじゃないかと思います。一部では、山川海などで事故死した老人・子供などの遺体未発見もあるのでしょうが。
古い記事にコメントをいただき、ありがとうございました。
10万人というのは、あくまで官報に掲載された人数で、そのほとんどは短期間のうちに決着がついているのですね。
この記事に載せたリンクも、ほとんどがリンク切れになってしまいました。現在は、このページで発表されているようです。ツイッターアカウントもあるのですね。
行旅死亡人データベース
https://kouryo.laboneko.jp/