とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

宇宙が始まる前には何があったのか?: ローレンス・クラウス

2014年06月20日 21時09分17秒 | 天文、宇宙
宇宙が始まる前には何があったのか?:ローレンス・クラウス」(Kindle版)(文庫版

内容紹介
ビッグバンの前には何があったのか?その最大の謎を、現代の量子物理学は解きあかしつつある。物質と反物質のわずかな非対称から生じたゆらぎ、それが今日の私たちの宇宙を形作った。それは無から有が生まれることであり、無からエネルギーが生じるという物理学の直感と常識に反したことだった。全米でベストセラー、アリゾナ州立大学の宇宙物理学者による衝撃の書。

著者略歴
ローレンス・クラウス
宇宙物理学者。アリゾナ州立大学にて「起源プロジェクト」を創設し率いる。1995年、「真空のエネルギーは、非常に小さいがゼロではない」という大胆な説をマイケル・ターナーとともに提唱。当時は異端視されたが後に見事、実証される。2012年には全米科学審議会から「公益賞」を授与された。

翻訳者略歴
青木薫
1956年、山形県生まれ。京都大学理学部卒、同大学院修了。理学博士。翻訳家。2007年の日本数学会出版賞を受賞している


理数系書籍のレビュー記事は本書で254冊目。

2014年6月20日から放送されるNHK Eテレ『宇宙白熱教室』(毎週金曜23時~ 全4回)のテキストとも言うべき一冊。

「種の起源」に匹敵! 宇宙論のパラダイムシフト

無からなぜ有が生まれたのか? 最先端の量子物理学は宇宙誕生の謎を解明しつつある。
宇宙は平坦だった、加速膨張する宇宙、2兆年後はすべての天体が姿を消す……。
「種の起源」にも匹敵すると賞賛された全米ベストセラーとなった本書は、コンパクトなサイズなのに、脳みそを鷲づかみにされるような濃密さに満ち満ちています。
科学翻訳の第一人者・青木薫氏による奥深く精密な文章と大胆な解説もお見逃しなく。


今夜からの放送開始に間に合わせるため、急きょ本書を読んでみた。

中学時代の教頭先生が天文ファンだったことがきっかけで、僕は中学1年の頃から毎月「月刊天文ガイド」を買うような少年だった。自作の屈折望遠鏡で観測した月面のスケッチを教頭先生に見せるために、週に一度は職員室へ行っていた。今よりだいぶのどかで平和な1970年代後半のことだ。

中学2年だった1976年7月と9月にはNASAが打ち上げたバイキング1号2号が相次いで火星表面に着陸し、鮮明なカラー写真を地球に送ってきていた。今から40年近く前のことだが、惑星科学はそこまで進歩していたのだ。

人類が初めて目にした火星表面のカラー写真
(写真クリックでこの翌日に撮られた写真を表示?)



宇宙の広がりを意識しだしたのもその頃だ。今では売られていない「全天恒星図」をたよりに星雲や星団に見入ったりして、宇宙はいったいどこまで広がっているのだろう?宇宙の果てというのはあるのだろうか?などと想像していた。

当時はまだハッブル宇宙望遠鏡(1990年に打ち上げ)やすばる望遠鏡(1999年観測開始)もなく、今よりずっと不鮮明な天体写真集しか手に入らない。だとしても天体観望会の双眼鏡で見るより、はるかに鮮明に大写しされたはるか彼方の銀河や星団の写真に心をときめかせていたものだ。

宇宙がビッグバンから始まったのは知っていた。ブルーバックスの相対性理論についての本を読んでいたので、宇宙空間は曲率によって「開いている」か「閉じている」か「平坦」かのどれかひとつであるということも知っていた。ただ、観測可能な宇宙の果てが何億光年離れているのかについては、知っていたのかどうか覚えていない。130億光年というのは当時から知られていた距離なのだろうか?

僕の「天文熱」は大学に入学するころまで続き、その後ほかのことに関心が移ってしまったので自然に消えていった。だから僕の天文学や宇宙の知識は1970年代から80年代初めで止まったままなのだ。持っている天文学の本も「とねの本棚(天文学)」をご覧いただければわかるように、当時のものが半分を占めている。

高校1年のときに6000円で購入した「現代天文学 第2版(1978年):A.ウンゼルト著、小平桂一訳」を見てみると、宇宙の年齢(観測可能な宇宙の果てまでの距離)は130億年で誤差は±5億年と書いてあった。この本で僕が宇宙論について得ていた知識を書き出すと次のようになる。

- ハッブルの法則により宇宙が膨張していることは知られていた。
- 宇宙の年齢(宇宙の端までの距離)=130億年で誤差は±5億年
- 世界最大の望遠鏡(パロマー山の5m望遠鏡)で光学的に確認できる宇宙は20億光年まで。
- 宇宙背景輻射は1965年以降、ノイズとして観測され、その温度は絶対温度で2.7度だとわかっていた。
- 曲率が正、負、ゼロの宇宙の3つの可能性があることが予想されていた。
- 宇宙がビッグバンで始まり、宇宙の晴れ上がりがあったことは予想されていた。
- ビッグバンの詳細は全くわかっていなかった。特異点で始まるという矛盾をかかえていた。

当時のビッグバンのイメージ(宇宙は点から始まる。)


曲率が正、負、ゼロの宇宙の2次元的なイメージ



今の高校生はどんなふうに宇宙のことを学んでいるのだろうか?

NHK高校講座 地学基礎」のページで動画を確認したところ、僕が学んでいたころの内容とほとんど違いがないことがわかった。

たとえば70億年前に始まった加速膨張の図示や解説はされていない。


インフレーションらしきものは先っぽに図示されているがその解説はなく、単にビッグバンとしてだけ紹介されているだけだ。宇宙の誕生も約140億年前と大ざっぱだ。


ただし「地学基礎」はすべての高校生が学んでいるわけではない。「科学と人間生活」,「物理基礎」,「化学基礎」,「生物基礎」,「地学基礎」のうち「科学と人間生活」を含む2科目,又は,「物理基礎」,「化学基礎」,「生物基礎」,「地学基礎」のうちから3科目を選択するように決められているからだ。「地学基礎」を選択している高校生は少数派だと思われる。


その後、1981年に科学雑誌Newtonが創刊され、天文関連の記事を僕はときどき見かけていた。そして1995年あたりから次のようなことが取り上げられるようになってきたのだ。

- 宇宙背景放射の精密な観測(COBE、WMAP、Planck 2013)
- インフレーション宇宙論
- 宇宙は「無」から始まった
- ダークマター(暗黒物質)、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)とその比率
- 130億光年彼方の宇宙の写真
- 宇宙の年齢は137億2千万年
- 70億年前から始まった宇宙の加速膨張
- 重力波の観測装置の建設、重力レンズ効果の精密な観測
- 人間原理、ランドスケープ問題
- マルチバース(多宇宙)

言葉とイメージを断片的に知っていたという程度で、それらにどういう意味があるのか僕にはよくわかっていなかった。中学生のころより「もう少し詳しく宇宙のことが解明されてきたのだろう」とういう程度の認識のまま現在に至っていたのだ。むしろ、探査機を実際に向かわせる惑星探査の進歩のほうがめざましいと思っていた。

でもそれが大間違いなのはもちろんで、「重力とは何か:大栗博司」の第4章「ブラックホールと宇宙のはじまり - アインシュタイン理論の限界」を読んだとき気がつかされた。この章には本書「宇宙が始まる前には何があったのか?:ローレンス・クラウス」で解説されていることのあらましが紹介されていたからだ。

つまり、わずか20年の間に宇宙論は劇的に進歩していたことになる。上記のキーワードであらわされる事柄が、いつ頃どのように解明されていったか筋道をたてて理解するためには本書を読むのがいちばんなのだ。これまでにもクラウス教授の本や青木薫さんの翻訳書は僕は何冊か読んでいる。その中でも宇宙論の入門書として特にお勧めしたい本なのだ。

章立ては次のとおり。

目次

まえがき 宇宙は無から生じた
はじめに 何もないところから、何かが生まれなくてはならない
第1章 いかに始まったのか?
第2章 いかに終わるのか?
第3章 時間の始まりからやってきた光
第4章 ディラックの方程式
第5章 99パーセントの宇宙は見えない
第6章 光速を超えて膨張する
第7章 2兆年後には銀河系以外は見えなくなる
第8章 その偶然は人間が存在するから?
第9章 量子のゆらぎ
第10章 物質と反物質の非対称
第11章 無限の未来には
あとがき リチャード・ドーキンス
訳者解説 青木薫

個々の事柄の論理関係を理解するのが大切だが、この20年で明らかになったことをかいつまんで説明すると次のようになる。


- 生まれて間もない高温の宇宙で発せられた光の残照、それが宇宙マイクロ波背景放射である。宇宙誕生の瞬間を見ることは不可能だ。しかし誕生から30万年後の姿は見ることができる。宇宙背景放射の精密な観測(COBE、WMAP、Planck 2013)が行われ、宇宙誕生時のプランクスケール(超ミクロなスケール)での量子力学的な不確定性原理による揺らぎが全方向について確認された。これは宇宙誕生時にインフレーション(劇的な膨張)がマクロな世界でも見れるほど揺らぎを拡大させたことを意味している。



COBE(1989年に打ち上げ):ウィキペディアの記事
WMAP(2001年に打ち上げ):ウィキペディアの記事
Planck 2013(2009年に打ち上げ):ウィキペディアの記事


- 宇宙誕生時のビッグバンとインフレーション、宇宙の晴れ上がりから現在までは次のような図で説明される。




- 130億光年離れた宇宙を撮影できるようになった。これは2006年12月に公開された写真。赤外線宇宙望遠鏡「スピッツァー」の観測画像を解析し、宇宙誕生後10億年以内の光だけを残すことに成功した。宇宙誕生後10億年以内の光だけを残した映像が左側の写真。




- 宇宙は「無」から誕生した。「無」から物質が生成するしくみは量子力学の「粒子の対生成・対消滅」、量子電磁力学の「仮想粒子」の理論が根拠とされる。その直後にインフレーションがおきた。また、宇宙背景放射は揺らいでいるものの、その揺らぎの量は小さく全体的には均一である。その均一性はその小さな「無」の領域が真空エネルギーで満たされていて相転移をすることで、指数的な膨張がおきたことを示している。宇宙背景放射のわずかな揺らぎとは「無」から生まれた物質と反物質のわずかな非対称から生じたのだ。

粒子の対生成・対消滅


仮想粒子


この「無」には2つの選択肢が候補として考えられている。1つはプランクスケール程度のサイズのあらかじめ存在している空間の中で何かが生じる場合。もうひとつは空間が存在しないところから空間が生じる場合である。これらの「無」は宗教や神学者が説くところの「無」とは全く異なるものだ。後者の「無」については本書では「まだよくわかっていない。」という立場をとっているが、現代の数学者や数理物理学者が考えている仮説は次の記事でお読みいただける。

時間とは何か、空間とは何か: S.マジッド、A.コンヌ、R.ペンローズ他
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/d80d021f4fba492bf0e3f47615289422


- 通常の物質とダークマター(暗黒物質)、ダークエネルギー(暗黒エネルギー)の比率はこのように予想されている。ただし本書では通常の物質は1パーセントだと紹介されている。




- ダークマター(暗黒物質)の存在やその量は重力レンズ効果の測定による銀河団の質量分布の解析や銀河の回転速度の精密な測定によって予想されている。ダークマターが何でできているかはまだ解明されていない。もっと詳しく言えば、ダークマターの存在を示唆する根拠は銀河の回転速度、弾丸銀河団のような銀河団による背景物体の重力レンズ効果、そして銀河および銀河団を取り巻く熱い気体の温度分布などの観測結果である。



ダークマターの概念図



- ダークエネルギー(暗黒エネルギー)は70億年前から始まった宇宙の加速膨張によって予想されるようになった。それが何なのかはまだ解明されていない。加速膨張はダークエネルギーの斥力的な重力による。70億年前から始まった宇宙の加速膨張は標準光度の超新星爆発を使った距離測定(ハッブル定数の測定)によって明らかになった。1998年のこと。




- 宇宙の曲率がゼロ、すなわち宇宙空間が大域的には平坦(曲率がゼロ)であることは1997年に南極大陸で行われたBOOMERanG実験による宇宙背景放射の「まだら」のサイズの測定によって明らかになった。宇宙空間の曲率が正だと「まだら」は大きくなり、曲率が負だと「まだら」は小さくなる。詳細は本書の説明をお読みいただきたい。






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2019年11月23日に追記:

次のようなニュースが飛び込んできた。宇宙は平坦ではない可能性がでてきたのだという。

「宇宙はまるい」説が浮上!宇宙理論が根本からひっくり返るかも
https://www.gizmodo.jp/2019/11/the-universe-may-be-round.html
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- 人間原理、ランドスケープ問題、マルチバース(多宇宙)の予想。この宇宙の物理法則が少しでも違うと物質をはじめ私たちは生まれてこなかった。これは偶然なのだろうか?それとももともといろいろな物理法則で成り立つ宇宙があり、たまたま私たちは現在の宇宙に生まれたのだろうか?超弦理論やインフレーション宇宙論は、そのような多宇宙が無数に存在することを示している。なぜそう予想されるのかは本書で詳しく解説される。

マルチバース(多宇宙)の一例



超弦理論(本書では超ひも理論と表記)について言えば、クラウス博士はかなり懐疑的だ。それは「超ひも理論を疑う:ローレンス M.クラウス」という本をお書きになっていることからもわかる。

しかし、博士は超弦理論を積極的に宣伝している物理学者ブライアン・グリーン博士とも親しく、理論に対して批判的、攻撃的な態度をとっているわけではない。やんわりと慎重な姿勢を求めているという感じだ。クラウス博士とグリーン博士の対談はYouTubeにたくさん掲載されている。お二人はとても仲がよい。

クラウス博士とグリーン博士の対談動画: YouTubeで検索する


本書ではこのほか、2兆年先の宇宙についても予想している。宇宙はどのように終わりを迎えるのだろうか?宇宙論はそのように途方もない未来を予測することができるのだろうか?


最後になるが、宇宙やその中で働く物理法則に「創造主」はいるのだろうか?

クラウス博士は明確にそれを否定している。もし創造主がいるとしたら、その創造主はどのように生まれたのだろうか?これは2000年以上前から投げかけられてきた矛盾であり、哲学者や神学者は神の永遠性を根拠にその正当性を主張してきた。本書でクラウス博士は神学者との対話により彼らが「無」についてどのように考えているか、彼ら考え方が矛盾に満ちたものであることを解き明かしている。安易に「神の数式」などと唱えてはならないのだ。また巻末には「著者との一問一答」が設けられ、一般的な読者が思いつくような質問に対してクラウス博士が回答を与えている。


本書を読むにあたって必要な相対性理論、量子力学などについては、必要最小限の事柄にとどめてクラウス博士は説明している。もし理解できないようならば大栗博司先生による入門書をはじめ、ブルーバックスなどで関連本をお読みになるとよいだろう。


今回の記事で紹介したのはこの本だ。英語版だとKindleでも読むことができる。

宇宙が始まる前には何があったのか?:ローレンス・クラウス」(Kindle版
A Universe from Nothing: Lawrence M. Krauss」(Kindle版

 

クラウス教授の著書をAmazonで検索する: 単行本(日本語) 単行本(英語) Kindle版(英語)


参考書籍:

インフレーション宇宙論―ビッグバンの前に何が起こったのか:佐藤勝彦
宇宙,無からの創生―138億年の仮説はほんとうか(Newton別冊)

 


参考書籍2

物理学の発展と宇宙観の変遷、そして斥力としての重力について、より詳しく知りたい方は次の記事で紹介している本をお読みになるとよい。この本も青木薫さんの訳書である。

宇宙を織りなすもの(上):ブライアン・グリーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/9a33e8f5ee79057972cf86c7b20c5218

宇宙を織りなすもの(下):ブライアン・グリーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/e7d60b8a36b423ef5d42df59458804b7


人間原理、ランドスケープ問題、マルチバース(多宇宙)について、より詳しく知りたい方は次の記事で紹介している本をお読みになるとよい。

隠れていた宇宙(上):ブライアン・グリーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/4a1abbca21c0188f43d7d72af39287f2

隠れていた宇宙(下):ブライアン・グリーン
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6e8b34dc9e4a3d21e82de47960f2a07d


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宇宙が始まる前には何があったのか?:ローレンス・クラウス」(Kindle版)(文庫版



まえがき 宇宙は無から生じた
はじめに 何もないところから、何かが生まれなくてはならない

第1章 いかに始まったのか?
始まりの一秒。百億度のプラズマ状態。陽子と中性子が結びついては、さらなる衝突のためにふたたびバラバラになる。ビッグバンモデルでさかのぼる原初の宇宙の状態とは。

第2章 いかに終わるのか?
「開いた宇宙」「閉じた宇宙」「平坦な宇宙」のいずれかで、終末のシナリオは3つある。この予想の鍵を握るのが、目に見えない大量の暗黒物質(ダークマター)だ。その正体を捉えることはできるのか。

第3章 時間の始まりからやってきた光
生まれて間もない高温の宇宙で発せられた光の残照、それが宇宙マイクロ波背景放射である。宇宙誕生の瞬間を見ることは不可能だ。しかし誕生から30万年後の姿は見ることができる。

第4章 ディラックの方程式
ミクロなスケールの世界を記述する量子力学。そこでは何もないところから仮想粒子が生成消滅する。特殊相対性理論と量子力学を結び合わせたディラックは、宇宙の始まりにも関係する重大な発見をする。

第5章 99パーセントの宇宙は見えない
エネルギーを含んだ空っぽの空間の中に、「暗黒物質(ダークマター)」の海があり、わずか1%の目に見える物質がその海の中に浮かんでいる。それが現在の物理学が到達した宇宙像なのである。

第6章 光速を超えて膨張する
われわれに観測可能な宇宙も、膨張の速度が加速し、やがて光速を超える。アインシュタインが課した制限速度も、空間そのものにはあてはまらない。

第7章 2兆年後には銀河系以外は見えなくなる
宇宙がこのまま膨張し続けると、2兆年後にはすべての天体が遠ざかり姿を消す。ビッグバンの手がかりも消えるだろう。われわれは宇宙を観測できる貴重な時代を生きている。

第8章 その偶然は人間が存在するから?
インフレーションモデルやひも理論によると、宇宙はひとつではなく無数に存在するという。とするとわれわれの宇宙は、人間が存在するのに適した宇宙に過ぎないのではないか。

第9章 量子のゆらぎ
現在の量子力学は、何もない場所に量子のゆらぎが生じ、あらゆる構造を生むことを説明する。つまり何もない場所が何らかのエネルギーを持つことができるということだ。

第10章 物質と反物質の非対称
量子力学と相対性理論によれば、物質に対応する反物質は必ず存在し、それらは打ち消しあう。しかしビッグバンの最初の状態では、わずかな非対称があった。それがわれわれを生んだのだ。

第11章 無限の未来には
何もない場所から、何かが常に生まれている。しかし、おそらく遠い未来には、無がふたたび宇宙を支配することになりそうだ。

あとがき リチャード・ドーキンス
訳者解説 青木薫
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Re: 宇宙項はゼロだった。アインシュタインの定常宇宙が正しかった様子ですよ。 (とね)
2018-01-26 09:39:26
大山宏さま
お久しぶりです。コメントありがとうございます。
今週の火曜あたりからインフルエンザB型にかかってしまい、体力を消耗しているところです。(まだ治る気配がありません。)
回復してから読ませていただきます。
さしあたり、いただいたコメントを公開させていただきました。
全国で流行しているようですので、大山様もご注意ください。
返信する
宇宙項はゼロだった。アインシュタインの定常宇宙が正しかった様子ですよ。 (大山宏)
2018-01-26 04:16:58
お久しぶりです。ブログ「光世界の冒険」の大山宏です。
「Laurence 村山斉」の検索キーで、とね日記さんのこの記事に行き当たりました。『お仕事をお持ちの中で、よくここまでの活躍ができるものだな』と感心してます。
 さて、「宇宙最大のミステリー」が解けましたよ。
宇宙項の実測は、「量子力学+アインシュタインの宇宙方程式」での理論予測値と比べると、10^56分の1?という「宇宙最大のミステリー」が解けましたよ。何のことはありません、それは、宇宙項の値が、10^56分の1=0.00000000000000000000000000000000000000000000000000000001 という値であった!というだけのことでした。宇宙項はゼロであることが(最新科学の粋を集めて天文観測をし、まとめてみると)証明されたという事でしょ。
 アインシュタインはついうっかり、宇宙方程式に宇宙項を加えたのですが、110年が経過してみると、その宇宙項の値はゼロだったことが証明されたことになっている様子ですね。
 これ、大変な事態だと思いませんか?
「暗黒物質+暗黒エネルギー」が宇宙項の内容ですが、この実測値が「ゼロ」だった!という意味を、利根日記さんの柔らかい頭脳ならご理解して頂けるように思いまして、4年前に書かれた貴方のブログにコメントさせて頂きました。
 私のブログの最新記事「10^56分の1はゼロ⇒宇宙項はゼロだと認めましょうよ」という記事を読んでみて頂けませんか?
 よろしく! 大山宏より、とね日記さんへ。
返信する
Re: インフレーション理論 (とね)
2017-01-17 10:38:52
中谷様
クラウス博士が知らないということも大いに考えられますね。
僕としては今後ブログに書くときは、佐藤勝彦先生のお名前を必ず書いておこうと思います。
返信する
インフレーション理論 (中谷昇)
2017-01-16 21:37:11
早速のお返事ありがとうございます。
興奮して書いたので、少し乱暴になりまして申し訳ありません。
きっと、クラウスさんは知らないんでしょうね。
全ての理論について、誰の業績かは覚えきれるものではないでしょう。ということにしておきます。
この本の内容は気になっているので、前回は図書館で借りたのですが、文庫本は買おうかなと思っています。
返信する
Re^3: インフレーション理論で・・・ (とね)
2017-01-16 19:34:20
中谷昇様

> 出版社も訳者ももっとしっかりして欲しい。

出版社や翻訳者は「クラウス博士にお願いして翻訳させてもらう立場」なので、原著にない訳文を付け加えることは難しいと思うわけです。
「訳者あとがき」に佐藤勝彦先生のことに触れるという手段も考えられますが、この場合もクラウス博士の許可が必要になるケースだと思います。センシティブな問題であるだけに現実的に考えるとこの件についてクラウス博士に交渉するのはは相当難しいと思います。
返信する
Re^2: インフレーション理論で・・・ (とね)
2017-01-16 19:28:11
中谷昇様

すでにお読みになっているかと思いますが、念のためウィキペディアの日本語ページで佐藤勝彦先生の項目の中に次のような記述があります。

日本側の見解の一例
インフレーション宇宙論に関しては、たとえば、JAXA宇宙情報センターは次のように記述している。「佐藤勝彦がインフレーション理論を発表したのは1981年である。佐藤とほぼ同時期にアラン・ハーヴェイ・グースも同じくインフレーション理論を発表しているが、論文の発表は佐藤のほうが先である」

指数関数的膨張モデルとインフレーション
事実関係として優先順位を知りたいというなら、以下の幾つかの文章が助けになるであろう。「インフレーション」という用語を初めて使用したのはA.グースである。佐藤は、最初は「指数関数的膨張モデル」という用語を用いていた。「私は当初、このモデルを『指数関数的膨張モデル』と呼びました。しかし、私の半年後に同様のモデルを発表したアメリカの宇宙物理学者グースが『インフレーション宇宙モデル』という巧みな名前をつけました。
返信する
Re: インフレーション理論で・・・ (とね)
2017-01-16 19:23:03
中谷昇様

貴重なご指摘をいただき、ありがとうございます。
本書を読んだときやNHKの宇宙白熱教室を見たときも佐藤勝彦先生のお名前は無視されていました。アメリカ人の書いた本では佐藤先生の功績だと書いてある本にはお目にかかったことがありません。

手持ちの本、3冊について調べてみました。

ワインバーグの宇宙論: 佐藤先生のお名前は無し
エレガントな宇宙:  佐藤先生のお名前は無し

新 天文学事典(ブルーバックス):「佐藤勝彦やアラングースによって..」と記述されていて、どちらが先かは書かれていない。

ちなみにウィキペディアの日本語ページでは「佐藤勝彦先生の提唱が先」、英語ページでは「アラン・グース先生の提唱が先」という記述がなされています。

本書は文庫化されたのですね。記事本文に追記させていただきました。教えていただきありがとうございました。
返信する
インフレーション理論で・・・ (中谷 昇)
2017-01-16 18:29:39
先ごろ文庫になったので手に取ってみましたが、
単行本のときと変わらず、インフレーション理論のところに佐藤勝彦の名前がでていません。訳者の注があるかと思いましたがそれもなし。このクラウスという人は、日経サイエンスに載っていたScientificAmericaの翻訳記事でも無視していました。こんな有名な教授なのに知らないとは考えられないです。出版社も訳者ももっとしっかりして欲しい。
返信する
ありがとうございます。 (サトシ)
2015-09-30 12:32:17
ありがとうございます。本当に助かりました。本当にありがとうございます。
返信する
Re: ローレンスクラウス教授の本を買いました2 (とね)
2015-09-30 11:59:02
サトシさん
高校の地学基礎、化学基礎の一部の知識があればよいと思います。

地学基礎については1学期の「第1編 宇宙の進化」をNHK高校講座でご覧になるとよいでしょう。
http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/chigakukiso/

化学基礎は1学期のぶんをNHK高校講座でご覧になるとよいでしょう。
http://www.nhk.or.jp/kokokoza/tv/kagakukiso/

それぞれ無料の動画で見れます。
返信する
ローレンスクラウス教授の本を買いました2 (サトシ)
2015-09-30 11:03:23
ローレンスクラウス教授の本を楽しく読みたいので、知っておくといい予備知識とかってなんか、ありますか?
あったら教えてください。お願いいたします。
返信する
宇宙が始まる前には何があったのかを買いました。 (サトシ)
2015-09-20 18:40:22
ローレンスクラウス先生の本を買いました。全部縦書きですが、読みやすいので、全文写しできそうです。
返信する
Re: お礼 (とね)
2014-06-23 22:00:38
はやぶささん

はい、平日は本業の仕事に集中しておりますので、できる範囲で調べることにします。
昨年日本語版として刊行されたワインバーグ博士の「宇宙論」を読み始めたところです。ふだん学んでいないジャンルなので新鮮な気持ちで読み進むことができますね。
返信する
お礼 (はやぶさ)
2014-06-23 19:11:42
いろいろとアドバイスいただき、ありがとうございます。

とねさんに色々調べさせることになってしまい、申し訳ございません。気の向くままで結構でございます。私の方も気軽に書き始めたつもりのものが、ついつい長々としたコメントを送ってしまいました。気になることはとことんのめりこんでしまう性格で、どうも悪い癖です。

ではまた。
返信する
Re: 曲率に関する用語 (とね)
2014-06-22 23:58:39
はやぶささん

考察とご意見をお書きいただきありがとうございます。
これらの件については、いろいろ調べてみる必要がありますので、今日のところはご返事できる部分のみ返信させていただきますね。

> 宇宙空間が有限か無限かを表現しているのではなく、宇宙の進化の最終段階(宇宙の終焉)について表現したものではないでしょうか?

「閉じている宇宙」、「開いている宇宙」という用語はすでに定着しているものだと思っています。それは幾何学的なものだと僕は思いますが、たしかに宇宙の進化の最終段階の違いにも関連付けた文脈で使われることが一般的ですね。

> 現にアマゾンの、この本の原書のページに書き込まれた日本語のレビューの中には、この本を読んで宇宙の形が「ディスク」形である、と誤解しているものもあります。

その誤解したレビュー投稿、僕も前から気がついていました。(笑)

> 一方、クラウス先生のように頭に’a’をつけると、複数ある’universes’の中の任意のone universeという意味になります。つまり、これだけで、我々の宇宙だけが唯一の宇宙ではなく、宇宙は他にいくつでもありうる、という立場を表すものになります。

鋭いご指摘ですね。英語版は持っていませんが、本のタイトルからして a universe になっていますね。

> このエッセーは、上記の宇宙空間の幾何と曲率の関係について、簡潔に解説しています。

教えていただき、ありがとうございます。読ませていただきますね。
返信する
曲率に関する用語 (はやぶさ)
2014-06-22 21:49:11
「閉じた」「開いた」「平坦な」宇宙、との記述は、誤解しやすいやっかいな用語ですが、これらの用語は、宇宙空間が有限か無限かを表現しているのではなく、宇宙の進化の最終段階(宇宙の終焉)について表現したものではないでしょうか? つまり「ビッグクランチ」や「ビックリップ」、「熱的死」などの仮説をイメージした用語です。

まず、本書(『宇宙が始まる前には何があったのか?』)の記述ですが、クラウス博士の原書ではそれぞれ、’a closed universe’, ’an open universe’, ’a flat universe’と記述され、青木薫博士の翻訳ではそれぞれ「閉じた宇宙」「開いた宇宙」「平坦な宇宙」と記述されているという事実があります。一般に書評では、評者の当然の義務として、これらの用語をそのままの形で引用する必要があるでしょう(読者の混乱と混同を避けるため)。

その上で読者の誤解と混乱を避けるため、評者が必要に応じて補足説明をするのが最良の方策ではないでしょうか。hirotaさんが危惧されているように、現にアマゾンの、この本の原書のページに書き込まれた日本語のレビューの中には、この本を読んで宇宙の形が「ディスク」形である、と誤解しているものもあります。こうした想定される誤解には出来るだけ対処する必要はあるでしょう。

次に、本書を始めとしたこのトピックで、これらの用語が意味するところは、hirotaさんが指摘されているとおり、単に宇宙空間の曲率(ガウス曲率)の値を表しているに過ぎません。つまり、物質密度定数オメガが1より大きい場合、曲率は正の値をとり空間は球面幾何的な3次元空間になる、オメガが1より小さい場合、曲率は負の値をとり空間は双曲面幾何的な3次元空間になる、オメガが1に等しい場合、曲率は0で空間はユークリッド幾何学的で歪みのない3次元空間になる、ということです。物質密度定数が関わっているということは、これら宇宙空間の曲率はアインシュタインの一般相対性理論に関係があるということでしょう。我々の宇宙空間に存在する物質およびエネルギー量の観測値が密度定数を大きく下回っているので、ダークマターやダークエナジーといった議論になっているということだと思います。

次に、これらの用語が物理学会ではどう記述されるかどうかですが、私は知りません。Wikipedia等ではクラウス博士が書いているような’a closed –‘や’a flat –‘、日本語訳では「閉じた」「平坦な」などと、本書の通りに書かれていますが、実際の学術用語はどうなっているのでしょう? とねさん、hirotaさん始め、詳しい方に教えていただければ幸いです。

ちなみに’universe’の頭につける冠詞ですが、宇宙が昔風の「定常的・永遠的な宇宙」という解釈であれば、(我々のこの)宇宙は1つしか存在し得ないため、’the Universe’となります。一方、クラウス先生のように頭に’a’をつけると、複数ある’universes’の中の任意のone universeという意味になります。つまり、これだけで、我々の宇宙だけが唯一の宇宙ではなく、宇宙は他にいくつでもありうる、という立場を表すものになります。

クラウス博士は、本書を上梓した際に、The Wall Street Journalに本書の内容に関連する短いエッセーを寄稿しています(http://online.wsj.com/news/articles/SB10001424052748703946504575469653720549936)。文中に出てくるホーキング博士が宗教界に巻き起こした「爆弾発言」は、同博士が2010年に上梓した”The Grand Design” 邦訳『ホーキング、宇宙と人間を語る』(佐藤勝彦博士訳)が巻き起こした論争のことを指しています。クラウス先生のこのエッセーは、上記の宇宙空間の幾何と曲率の関係について、簡潔に解説しています。
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Re: つっこみ (とね)
2014-06-21 16:06:22
hirotaさん

つっこみ大歓迎です。というか、いつもアドバイスいただきありがとうございます。

ご指摘の箇所を修正しておきました。「宇宙の果て」のところは「観測可能な宇宙の果て」とし、「空っぽの空間」という表現は使わないようにしました。
また「閉じた宇宙」、「開いた宇宙」という表現も誤解を招きますね。有限、無限という言葉は使っていませんが、そういう意味にとらえられかねません。曲率の値(正、負、ゼロ)という表現に書き換えました。
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つっこみ (hirota)
2014-06-21 14:44:34
>130億光年
宇宙年齢が130億年だからと言って宇宙の果ては130億光年じゃないですよ。
後退速度が現在光速の所は昔超光速だったんですから今は450億光年になってます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/宇宙
>閉じた宇宙、開いた宇宙
宇宙論で使っていた閉とか開は正曲率,負曲率の意味だけしかなく、宇宙サイズが有限,無限の意味にはなりません。
数学での多様体は負曲率,ゼロ曲率であってもサイズ有限の閉多様体が可能ですから誤解を招く用語は避けた方が良いでしょう。
>無から生じた
これは現在ただの仮説で膜宇宙の衝突によるビッグバンと同程度の信頼性しかありません。
データで裏打ちされたインフレーションや加速膨張と同列じゃないですね。
あと、空っぽの空間なんてありません。
常に量子場があり、量子場の一つの状態として時空間が存在したりしなかったりしてるんです。
ビレンケンの「無からの創生」では量子場が時空間存在状態になった時点が「時間の開始」ですが、ホーキングの無境界仮説では時間も丸く閉じてしまって時間開始点はありません。
まともな理論が出来てませんから、どれが可能なのか今の所分かりませんが…。
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