とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

リー群と表現論:小林俊行、大島利雄(第2章:Fourier解析と表現論)

2011年09月11日 13時11分37秒 | 物理学、数学
リー群と表現論:小林俊行、大島利雄

第2章:Fourier解析と表現論

この章は12ページしかないので、すぐ読み終わった。僕の理解度も95パーセント。

工学や物理数学ではおなじみのフーリエ級数やフーリエ解析を群論の立場から紹介している。フーリエ変換とか懐かしいなと思いながら一気に読み終えた。

この章でフーリエ解析の原理に欠かせない調和振動子exp(√-1*ξt)はそれはトーラス群Tの既約ユニタリ表現と表裏一体になっていることが示される。

次に実数の可換群R^nの変換群としてアファイン変換群を考える。すると可換群R^nの表現としてはユニタリ表現L^2(R^n)は既約ではないが、アファイン変換群の表現としては既約になる。

さらに「群の作用のエルゴード性」についての話が展開される。エルゴード的という用語は「長時間平均は相平均に等しい」という統計力学におけるエルゴード仮説に由来していて、この章ではエルゴード仮説が満たされるような変換を数学的に厳密に定式化したわけだ。

エルゴード性についての箇所が、実感として僕にはよくわからなかったので、その分を差し引いて理解度は95パーセントになった。

本書における第2章の役割は、後の章の解析的な部分の理解を深めるためのウォーミングアップである。特に第2章で説明している内容は本書の前半部のハイライトであるPeter-Weylの定理(第4章)の原型となっている。

第2章を理解するのに必要な前提知識は次のとおり。必須な項目とできれば知っておいたほうがよい項目に分けて推薦本を紹介すると次のとおり。

必須な分野

1) 群論:「群論への30講:志賀浩二」(位相群についての章もある。)
2) フーリエ展開、フーリエ変換の入門書:工学系の教科書でもいいし「解析概論:高木貞二」はお勧め。
3) アファイン変換群、半直積:「線形代数と群の表現 I :平井武」、「線形代数と群の表現 II:平井武

できれば知っていたほうがよい分野

4) 関数解析:「関数解析 共立数学講座 (15):黒田成俊 von Neumannの定理
5) 測度論、ルベーグ積分:「ルベグ積分入門(新数学シリーズ3):吉田洋一」、「ルベーグ積分入門:伊藤清三


第2章の目次詳細と「要約」は次のとおり。

第2章 Fourier解析と表現論
 §2.1 Fourier級数
  (a) トーラス上の調和解析
  (b) 表現論から見たFourier級数論
 §2.2 Fourier変換とアファイン変換群
  (a) Fourier変換
  (b) アファイン変換群とFourier変換
(c) エルゴード性と既約性
 要約

(要約)
2.1 古典的な解析の立場からのFourier級数論やFourier変換の復習
2.2 可換群T(トーラス群)やR(実数の加法群)のユニタリ表現L^2(T)やL^(R)の既約分解定理として、Fourier解析を表現論的な立場から解釈できる。
2.3 可換群Tのユニタリ双対T^の分類と調和振動exp(√-1*nt)のL^2-完備性には深いつながりがある。
2.4 アファイン変換群Aff(R^n)はL^2(R^n)上に既約なユニタリ表現として作用する。この表現をAff(R^n)の部分群に制限したときの既約性は、作用のエルゴード性という幾何的な条件で記述される。
2.5 (用語)Fourier級数展開、Parseval-Plancherelの定理、可換群の既約表現、畳み込み、Fourier変換、逆Fourier変換、アファイン変換群、エルゴード的な作用


リー群と表現論:小林俊行、大島利雄



関連記事:

読み始めた。:リー群と表現論:小林俊行、大島利雄
https://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/6f89fddb08dc3141e6753249891523b9


応援クリックをお願いします!このブログのランキングはこれらのサイトで確認できます。
にほんブログ村 科学ブログ 物理学へ 人気ブログランキングへ 




リー群と表現論:小林俊行、大島利雄

まえがき
理論の概要と目標
第1章 位相群の表現
 §1.1 位相群
 §1.2 位相群の表現
 §1.3 種々の表現を構成する操作
 §1.4 Hilbertの第5問題
第2章 Fourier解析と表現論
 §2.1 Fourier級数
 §2.2 Fourier変換とアファイン変換群
第3章 行列要素と不変測度
 §3.1 行列要素
 §3.2 群上の不変測度
 §3.3 Schurの直交関係式
 §3.4 指標
第4章 Peter‐Weylの定理
 §4.1 Peter‐Weylの定理
 §4.2 Peter‐Weylの定理の証明
  (その1: Stone-Weierstrassの定理を用いる方法)
 §4.3 Peter‐Weylの定理の証明
  (その2: 関数解析を用いる方法)
 §4.4 有限群論への応用
第5章 Lie群とLie環
 §5.1 Lie群
 §5.2 行列の指数関数
 §5.3 Lie環
 §5.4 Lie群とLie環の例
 §5.5 Lie群の解析性
 §5.6 Lie群とLie環の対応
第6章 Lie群と等質空間の構造
 §6.1 普遍被覆群
 §6.2 複素Lie群
 §6.3 等質空間
 §6.4 Lie群上の積分
 §6.5 コンパクトLie群
第7章 古典群と種々の等質空間
 §7.1 いろいろな古典群
 §7.2 Clifford代数とスピノル群
 §7.3 等質空間の例1: 球面の種々の表示
 §7.4 等質空間の例2: SL(2,R)の等質空間
第8章 ユニタリ群U (n)の表現論
 §8.1 Weylの積分公式
 §8.2 極大トーラス上の対称式と交代式
 §8.3 U (n)の有限次元既約表現の分類と指標公式
第9章 古典群の表現論
 §9.1 古典群のルート系とWeylの積分公式
 §9.2 Weyl群の不変式と交代式
 §9.3 有限次元既約表現の分類と指標公式
第10章 ファイバー束と群作用
 §10.1 ファイバー束と切断
 §10.2 ベクトル束と主ファイバー束
 §10.3 主束に同伴するファイバー束
 §10.4 群作用と切断
 §10.5 G -不変な切断
第11章 誘導表現と無限次元ユニタリ表現
 §11.1 Frobeniusの相互律
 §11.2 無限次元表現の構成 
第12章 Weylのユニタリ・トリック
 §12.1 複素化と実形
 §12.2 Weylのユニタリ・トリック
 §12.3 等質空間におけるユニタリ・トリック
第13章 Borel‐Weil理論
 §13.1 旗多様体
 §13.2 Borel‐Weilの定理
 §13.3 Borel‐Weilの定理の証明
 §13.4 Borel‐Weilの定理の一般化
現代数学への展望
参考文献
演習問題解答
索引
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 心配ご無用:衛星の破片、落... | トップ | CASIO DATA BANKが復刻してい... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

物理学、数学」カテゴリの最新記事