玄関を開ける
ジーっジーっ
あ!セミ
お地蔵さまに
お水を持って行く
冷たいのどうぞ
猫は
心地よい場所
探して
トコトコ
歩き回る
さて
わたしも探そう
心地よい場所
爽やかな場所
この街の中
家の中
アイスコーヒーの中
わたしの中に
人に会いすぎると
疲れるし
会わないと
寂しい
だから
わたしは猫になる
窓から見る
景色すき
ひとりになりたいときは
トコトコ
部屋へ帰る
高いところから
見下ろしたり
寝そべって
見上げたり
斜めに見たり
裏を見たり
自由なんだけど
ね
さいごは
見つめる
真正面から
玄関を開けると
通りすがりのご婦人が
挨拶くれた
「暑いね」
って
お地蔵様の
ところまで
行って
朝だというのに
もう今日という日に
感謝していた
帰って
ラジオを
つけた
「麦茶作っておいてね」
あなたは
出かけて
行った
梅雨の
晴れ間
失敗を恐れていた
あの頃
毎日は
綱渡りだった
失敗しないように…
失敗しないように…
身動きのとれない
あの日の
私よ
今言えることは
たくさん
あるよ
綱渡りのロープより
地上の方が
広いんだから
とっても
広いんだから
大丈夫
野花に
会えるよ
何かに
会えるよ
お稽古から帰って
冷蔵庫を開けたら
シュークリームが
入ってた
こういう
小さなプレゼント
嬉しいな
きっと
私ね
あなたにも
世の中にも
恩着せがましいこと
してたわ
そう
たまにね
シュークリームでいいの
缶コーヒーでいいの
お疲れ様
って