れんちゃんへ
入院前にメールありがとう。れんちゃんが将来の夢にむかってがんばっていること、それがいちばんのクスリだよ。
いよいよ明日が入院日になってしまった。9月30日の大腸内視鏡検査で大腸がんの告知を受けて、あっという間の1か月だった。
胃カメラ、造影剤CT、心エコー検査、採血、肺活量検査、呼吸器用のマウスピースの作成に歯のおそうじ、手術や麻酔の説明と、手術に向けた検査や準備が続いた。毎月の糖尿病の診断、年1回の脳神経内科のMRI、ついでに歯医者さんで抜歯と、週3日ペースで病院通いだった。
一方で、会社の仕事も通常どおりこなしながら、組合大会の準備と運営もあった。自分でもどこが病気なのか、さっぱりわからない。
今日は病院の帰りに、お山に登った。先週の金曜からお酒を断っているから、足取りも軽快だった。マヤーと遊んでいた時間を除けば、標準タイムで行けたよ。帰ってから片付けものをしたり、入院の支度をするうちに、こんな時間になってしまった。
そう、先週土曜には会えなかったマヤーに、きょうは会えた。あいかわらずのツンデレだけれど、きょうは帰りも待っていて、呼んだら来た。もうおなかいっぱいで、お父さんに用はないはずなのに、「マヤー」と呼びかけたら、いつもどおり「まやー」と返事をして、近くに寄ってくる。かわいい。
ちゅーるをあげながら、「お父さん、しばらく来られないけれど、みんなに甘えて、ごちそうにありつんだよ」と話しかけていたのに、何か感じるものがあったのかな。
こっちに来たり、あっちに行ったり、「ばいばい、また来るから」と声をかけると、駆けてくきて、帰してくれない。10月もおわりなのに、里では25℃超えの夏日が続いているけれど、山は冷える。さびしいのかもしれないね。夏にあじさいが咲くあたりで、毛づくろいを始めたので、「また来るから」と呼びかけて立ち去ると、毛づくろいをやめて、私のことをじっと見上げていた。後ろ髪ひかれながら、山を降りた。
退院したら、まっさきにマヤーに会いに行こうと思った。もちろん、傷口が完全に塞がらないうちは、バスとケーブルで。ケーブル駅からマヤーの遊び場まで約300メートルだけれど、階段が69段ある。旧天上寺の石段の2割ほどだとはいえ、手術を終えたばかりの病み上がりの身にはつらいかもね。術後はリハビリと体力回復に励みたい。
そういえば、れんちゃんの出発前にも、地元のクロも、お山のマヤーも、会いに来てくれたね。
クロはれんちゃんと一緒に会って以来、しばらく見なくて、心配していた。しかし、ご隠居宅の庭には、あいかわらず出没しているようだ。これから寒くなるから心配だね。クロママのSさんにも連絡をとろうと思う。
二丁目の原っぱのあさがおも、れんちゃんが旅立つのに合わせるかのように7月24日に開花した。あさがおは朝早くに見に行かないとだめだね。山賊さんと一緒に数を数えていたけれど、どんどん増えて、いつもより30分早く自宅を出るようなった。あさがおの花は一時は1000に迫る勢いだった。しかし10月2日の昼、ついに草刈りが入ってしまった。この日の朝にも681咲いていて、山賊さんは、ほんとうにショックだったろう。来年にはマンション建設が始まるのかもしれない。
しかし、あれだけ刈られても、まだ生き残っている株がある。今日も花が13(かれん風には13にん)さいていた。
あすも病院にはあさがおを見てから行くつもりだけれど、この調子ならまだ咲いていそうだね。れんちゃんがあのあさがおを見つけたのは、2年前の10月26日だった。
2年前は、あさがおは12月はじめまで咲いていたけれど、今年はどうかな。ひょっとすると、退院する11月には、まだ咲いているかもしれないね。
庭の夏花火は終わりかけだけれど、ニチニチソウは、また新しいつぼみをつけていた。ペンタスのつぼみは、なかなか花開かないね。あした入院で、花が咲いているところを見られないのは、残念。自動水やり器もセットしたし、帰ったら、ニチニチソウもペンタスも花を咲かせていてくれるかな?
術後、水を飲めないのと、食事が再開しても重湯から始まっておかゆが続くのは、考えるだけ憂鬱だね。傷面積の少ない腹腔鏡手術で済むのだから、贅沢をいってはいけないが。しかし、考えるのは退院してからのことばかりだけれど、入院だって小旅行のようでちょっと楽しい。
旅行といえば、この夏は、れんちゃんといろいろな場所に行ったね。またどこかに一緒に行けるのを心から楽しみにしています。元気になって帰ってくるからね。おやすみなさい。
お父さん