新・私に続きを記させて(くろまっくのブログ)

ハイキングに里山再生、れんちゃんとお父さんの日々。

ピーター・シスの闇と夢

2023年07月13日 | アート/ミュージアム
もう一か月経ってしまいましたが…

6月11日は、伊丹市立ミュージアムに、現代アメリカを代表する絵本作家ピーター・シスさんの個展に行ってきました…!

シスさんの作品は国際アンデルセン賞など数々の絵本賞で称えられ、世界中の人たちを魅了してきました…。私も魅了されたそのひとりです…はぃ!



伊丹市立ミュージアムにやって来ました…! 来るのははじめてです…!




これが展覧会のキービジュアルの『ハッピー・チルドレン』(1998年)です…!
チョウチョの形をした気球に乗った小さな人たちが、夜の街を飛んで行きます…。
このチョウチョの気球には、南の島が映し出されてぃて…


くじらさんが泳いでぃたり…


恐竜さんがぃたり…


宝箱がぁったり…とっても夢がぁります!

私、シスさんが『ロビンソン・クルーソー』をもとに描いた、自伝的絵本『ロビンソン』のぼうけんのせかいが大好きなんです…はぃ! 



これは、私が初めて父に買ってもらったピーター・シスさんの伝記絵本、『飛行士と星の王子さま サン=テグジュペリの生涯』の表紙絵です…はぃ!

父は、児童書の仕事をしてぃながら、『星の王子さま』は読んだことがなかったとぃいます。

父の母、つまり私の祖母が大好きな作品だったそうで、祖母が苦手な父は敬遠してぃたのだそうです…。「一卵性母子」とぃわれた似たもの親子で、けんかが絶えなかったようです…。

祖母が亡くなってからは、そんなわだかまりからも自由になったようです…。ドイツ出張の帰り、トランジットで寄ったパリ・オルリー空港で見かけた『星の王子さま』がプリントされたクッキー缶を見かけて、まだ小さかった私のぉ土産にしてくれました。クッキーもうれしかったけれど、私はたちまち『星の王子さま』に夢中になりました。小さな星のうえで、ひとりぼっちでぽつんと立ってぃる男の子がかわいくて…。話すのが苦手で、保育園でも友だちがだれもぃなかった孤独な自分と思い重ねたのかもしれません…。絵本を買ってもらい、この本も買ってくれたのです…。

私は、たちまち、『星の王子さま』にも、この『飛行士と星の王子さま』にも、すぐ夢中になりました…!

いまあらためて読み返すと、何度も飛行機事故に遭い、遭難しながらも、最後まで空への夢をあきらめなかったアントワーヌくんは、波乱万丈の人生を生きてきた父に、少し似てぃる気がしました…。





これは表紙絵の拡大図です…。

前部座席で、飛行機を操縦してぃるのが、おとなになったアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリさん…後部座席に座ってぃるのが、星の王子さまでぁり、まだ小さなころのアントワーヌくんです…!

サン=テグジュペリさんがきっかけになり、小さなころからピーター・シスさんの絵本に親しんできた私ですが、この日本初めての個展で、初めて名前を知った方々も大勢ぃらっしゃると思います…。

しかし、父と同年代、また年長者の方々は、一度はこの映画を観たり、ポスターをご覧になったことがぉぁりではないでしょうか…?


モーツァルトさんの生涯を描いた、1984年の映画、ミロス・フォアマン監督の『アマデウス』のポスターを手掛けたのが、チェコスロヴァキアからアメリカに亡命して間もないピーター・シスさんだったのです…!

『アマデウス』の監督のミロス・フォアマンさんは、1960年代後半に、チェコスロヴァキアの民主化運動「プラハの春」が、ソ連軍に「だんあつ」された後、アメリカに亡命した方です…。ピーター・シスさんと同郷で、ともにアメリカに亡命した、同じ経歴の持ち主でした…。


ピーター・シスさんのモーツァルトさんの伝記絵本『モーツァルトくん、あ・そ・ぼ』は、ミロス・フォアマンさんに捧げられてぃます…!

父は年譜をみて、感心してぃました…。

「1949年生まれって、ピーター・シスはまだ若いんだね。村上春樹と同じ年生まれだ。若いといっても、二人とも今年74歳で、れんちゃんから見たらおじいさんだけれど。私は、フォァマンと同じく、プラハの春の世代だと思いこんでいたよ」

シスさんは、「プラハの春」の1968年には、まだ19歳でした…。

シスさんは、今では絵本作家、イラストレーターとして高い評価を得ていますが、そのスタートは、アニメーターでした…。首都プラハや、留学先のロンドンでアニメーションを学び、ベルリン国際映画祭アニメーション部門で金熊賞を受賞するなど、高い評価を得ます。

当時の世界は、東側と西側に分かれ対立してぃましたが、「かべ」の隙間から浸透してくる西側のポップカルチャーは、学生時代のシスさんに大きな影響を与えたそうです…。

シスさんは、ロックにのめりこみ、髪を伸ばして友だちとバンド「ニューフォース」を結成し、大学在籍中はラジオ番組のDJや、音楽ジャーナリストとしても活躍したんだそうです…はぃ。そして、憧れのビートルズ、ローリング・ストーンズ、レッド・ツェッペリン、エリック・クラプトンなど、当時を代表するロックスターたちにインタビューを行い、ビーチ・ボーイズの公演ではMCを務めたとぃう、チェコスロヴァキアのロックシーンを代表する人だったのです…! すごいと思いませんか…?

「これだけで映画になるなあ」

父は、ハードロックが大好きな先輩が、その日久しぶりのオフだったことを思い出し、お誘いすればよかったなあと悔やんでぃました…。きっと、シスさんのアニメーションも絵も、喜んでぃただけたと思います…。

ピーター・シスさんは、ある意味、チェコスロヴァキアにおいて、宮崎駿さんや新海誠さんのような人だったとぇいるかもしれません…。

1982年には、チェコスロヴァキア・アニメの代表としてロサンゼルスオリンピックのアニメーションを制作するため渡米してぃます…。

しかし、1983年、ソ連や東欧諸国はロサンゼルス・オリンピックをボイコットします。祖国に帰国を迫られたときに、それを拒否し、家族を故国に残したまま、シスさんはアメリカにひとり亡命したのです…。




これは展覧会の会場入口で、アニメーションにされ上映されていた、シスさんの自伝絵本『かべ THE WALL』のクライマックスのシーンです…。

サーチライトや、パトカーのヘッドライトが、虹色の翼を持った人力飛行機を追跡してぃます…。しかし、その空に飛翔した飛行をもう追いかけることも、とどめることもできません…。

人力飛行機は、世界のはてまで、どこまでも逃げて逃げて…

最後のページは、

「時には夢がかなうこともある。1989年11月9日、ベルリンのかべ崩壊」

ということばで締めくくられてぃます。





チェコスロヴァキア時代のシスさんのアニメーション原画やイラスト、大好きです…!






この黒猫さん、好き…!


若いころ、「かくめい運動」のかたわら、「シュルレアリスム書道」に取り組んだとぃう父も、ひたすら感心しています。

「シスの絵はおもしろいね。西欧のプチブルのシュールレアリスム絵画のようでいて、スターリニズム批判の寓意もこめられている。これこそまさに民衆の無意識の発露だ。ブルドンやエリュアールが本当にやりたかったのは、こういう芸術だったのかもしれないね。ダリもマグリットも、芸術家ぶったいい気なプチブルのお遊びで、シスに比べたらつまらないね」

ぉ父さん、それは言い過ぎ…!

でも、私もシスさんの絵のほうが好きかもしれません…。親子だから似てぃるのかも…。




シスさんは「僕は検閲のなかで生まれた」といいます…。

しかし、その検閲のなかで、自由を勝ち取ろうとする姿に、父は共感し、関心をもったようです…。

『かべ ─鉄のカーテンのむこうに育って─』は、シスさんの自伝的作品です…。







これは、戦艦オーロラに乗った、左からレーニンさん、その頭の上に、下からフルシチョフさん、ブレジネフさん、その右がクレムリン宮殿にそびえ立つスターリンさんです…。

ブレジネフさんの目の前を飛ぶのがガガーリンさん、さらにその先がスプートニク2号に乗せられた犬のライカさんです…。

父が、マルクスさんやレーニンさんを、歴史上、重要な人物であることは認めつつも、批判してきたことは、このブログをご覧の方はご存知かと思います…。

父は『星の使者―ガリレオ・ガリレイ』の絵本原画を見て感心しています…。

「異端審問のシーンも、生涯、外出を禁じられて自宅に封じ込められるあの壁も、まさにスターリン主義の世界だね」



異端審問所での裁判のようすです…。




ガリレオさんのぉうちです…。ほんとうに「かべ」の世界です…。見えるのは空の月と星だけ…。




これは12世紀ペルシアの神秘主義の詩人アッタールさんの代表作『鳥の言葉』をビジュアル化した、大人むけの絵本です…。

「誰もが問題を解決してくれる〈リーダー〉を求める。でも最後には自分で解決しないといけないと知る」というこの本の教訓は、父の考えといっしょで、感動しちゃいました…。

でも、もっとびっくりしたのは、父の描く「へんな鳥」の絵と、シスさんの鳥の絵がそっくりだったことでした…。私は「しつぎょうしゃ」時代の父のつくったオリジナルの手づくり絵本を読んで育ちましたから…!
父はライターなのですが、ときどき描くヘタウマのイラストも、業界の方々に好評だったんだそうです…。



tibet:Through Red Box(1998)です…邦訳はまだ出てぃませんが、『チベットと赤い箱の秘密』の原画です…。

中国に調査に出かけたシスさんのぉじいさんが、遭難して、チベットに命からがらたどり着いて、いろいろ見聞した体験をまとめた絵本です…!

このチベットでの記録や蒐集品を、ぉじいさんは赤い箱に入れて、家族にも触らせなかったそうです…。「かべ」の外の世界の情報を許さない「しゃかいしゅぎ」の世の中だったので、だれかに知られることを恐れたのでしょう…。



これは、『コロンブス』の一幕です…!
コロンブスさんには、今はぃろぃろ否定的な意見がぁり、父も同意見のようですが、シスさんは自身の祖父や父と同じような「冒険家」として、高く評価してぃるようです…!


シスさんの海の絵や、海の生き物の絵、大好き…! このくじらさんの絵を見てください…!



今までは、アーティステックな、「おとな」も楽しめる絵本です…。
でも、シスさんは、『マットくんのしょうぼうじどうしゃ』をはじめ、小さな人たちのための絵本を多数手がけてぃるんですよ…!



これは、『わたしはバレリーナ』です…!
この作品は知りませんでした…。
小さなころにこの本に出会ってぃたら、バレリーナになりたいって、わがままぃってぃたかも…!

「れんちゃんのバレリーナ、かわいかったろうねえ。すぐプリマドンナになれたと思うよ。見てみたかったねえ。今からでも始める?」

まったく、親ばかの父です…はぃ。

「バレエの世界は、そんな甘いもんじゃ、ないんだからね…!」と、父を叱ってしまいました…はぃ。





私の大好きな『ロビンソン』のワンシーンです…!

左から、やぎさん、ねこさん、ねこさん、ロビンソンくん、うさぎさん、とりさん、きつねさんが、一緒にテーブルを囲んで夕食をしてぃます…!



旧社会主義国…父のことばを借りたら、社会主義の夢や理想を裏切った、人権抑圧の「スターリン主義国家」に育ったシスさんは、アムネスティの運動にも加わり、人権や平和の大切さを訴える作品も、数多く描いてぃます…!

これは、ナチスの突撃隊が中心になった、ドイツの反ユダヤ主義暴動『水晶の夜』を描いた作品です…!



最後にご紹介するこの作品は、『フライング・マン』(2011年)です…。

チェコスロヴァキアを民主化に導いたヴァーツラフ・ハヴェル元大統領を、同じころに取り組んでぃた「鳥の言葉」と関連させて描いた作品だそうです…。ハヴェルさんは、プラハ城を眼下に、青く澄んだ空を、鳥のように自由に飛んでいきます…!

自由と平和をめざして…!

夢はなかなかかないませんが、時には実現することもぁります…はぃ。

展覧会では、このほかにも、ここでは紹介しきれなかった、すばらしい作品がいっぱいでした…! 6月30日から8月31日までは、東京の八王子市夢美術館で、この『ピーター・シスの闇と夢』展が開催されます…! 東京や関東にお住まいの方々は、ぜひ八王子まで足を延ばしてください…はぃ!





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