神戸にお住まいだった岡田嘉夫画伯が亡くなって、神戸とは縁が切れたと思っていました。
先生がなにか「オモロイこと」を思いつくと、呼び出しがかかったものですが、そういうこともなくなりました。
神戸まで、大阪から阪急・阪神の特急やJRの新快速で30分ですが、大阪で大抵の用事は片付いてしまいます。東京に住んでいたらわざわざ横浜に行く必要もなく、その逆もまたしかり、という感じでしょうか。南京町も異人館も、メリケンパークもポートタワーも、何度も行くような場所ではないかなあ。南京町も、おいしいお店があるのでしょうが、観光客だらけで、ゆっくり食事をするという雰囲気ではありません。
しかしこの3月の終わりから、六甲山系、特に摩耶山の魅力に惹かれ、毎週神戸に通っています。指折り数えると、摩耶山に15回、六甲山最高峰に4回に登りました。ただしうち2回は摩耶山からなので、累計17回です。
営業時代、得意先の神戸本社や神戸支店がありましたが、電話やメールで用が済むので、年に数回のペースでした。
いまは人生最高に「神戸分」を吸収しています。
さて、ハイキングは、真夏の農作業に耐え抜く体力づくりが目標であるわけですが、神戸は涼しいのですね。今日の最高気温は、大阪32℃、神戸29℃です。いつも神戸のほうが大阪より３℃は涼しいですね。山に登るとさらに涼しい。
ここで思い出すのは、平氏が宋との交易で海洋国家樹立をめざした福原遷都です。
毎週、神戸に通ううちに、「福原京、ありではないか」と思うようになりました。
やはり「海陸風」の力は大きいなあと思います。昼は海から風が吹いて、夜は逆に山から風が吹いて。夏は涼しく、冬は暖かい。大阪・京都・奈良・大津と比べたら、はるかに人にやさしい住みやすい都になったのではないかと思います（大阪や大津にだって都が置かれたことがあったんですよ）。
同時に、なぜ福原京がうまくいかなかったのかも、歩いていてよくわかります。
以下、ウィキペディアの解説のつまみ食いですが、平氏は福原（現在の神戸市兵庫区）に行宮（あんぐう。仮の御所）を置き、隣接した和田（現在の兵庫区南部から長田区）に平安京と同じ条坊制による都城を建設しようとしましたが、和田は平地が少なく手狭だったため、計画が行き詰まってしまったわけです。そこで同じ摂津国の昆陽野（こやの：現在の兵庫県伊丹市）、さらには播磨国印南野（いなみの：現在の兵庫県加古川市）に新たな都を建設する話が浮上しますが、立ち消えになり、結局は京都に戻ることになります。
関西にお住みや、おいでになったことのある人は、神戸や芦屋、あるいは宝塚で、ほぼ崖の山の急斜面に住宅が鈴なりに建ち並ぶ奇観をご覧になったことがあるでしょう。
摩耶山も六甲山も、登山口にたどり着くまでの坂道が一苦労なのです。滑り台を登っているようなもので、気を抜くと、滑り落ちそうになります。
源平合戦の時代に、この急斜面に建築物を造るのは、技術的に不可能だったろうなあと思います。せいぜい棚田にできたくらいで（でも、急斜面は土が流れやすいので、土留めも難工事だったと思います）。兵庫区も長田区も、いまも坂の街です。兵庫区には「へこたれん坂」なる急坂があるんだそうです。
福原京、いいと思ったんだけれどなあ……。
あんなに夏暑く冬寒い、過酷な気象条件の京都が、どうして千年以上都を続けられたのかは、私にとって長年の謎でした。
最近、京都を本拠としなかった源義朝や徳川家康は賢かったなあと思います。
京都を拠点にした平家や足利氏や豊臣氏が、すぐに弱体化していったのも、あの過酷な気象条件にHPを削がれ、さらに美女やグルメや楽しい遊びでMPを浪費してしまったからではないか。結果として、平家や足利氏や豊臣氏は自滅していったけれど、気象条件への耐性を持っていた天皇や貴族は、延命を図ることができた側面が大きいのではないか。と、そんなふうに思うようになりました。密林にアメリカ帝国主義の弱っちいヤンキーを誘い込んで、さんざん振り回して、絶望の底に落とし、最後には殲滅して追い返した、南ベトナム解放民族戦線のようなもの？ これはちょっとほめすぎかな。
トップ画像は、摩耶山の峠茶屋跡展望台にある温度計です。神戸市が28℃のとき、この場所は19℃から20℃でした。8℃から9℃も涼しい。100メートル上がることに気温は1℃下がるといいますが、この地点は海抜400メートルから500メートルです。なぜこんなに涼しいのかはわかりません。地形が影響しているのでしょうか。
明日の神戸は曇りで、最高気温は29℃だそうです。明日も摩耶山に登ります。
私も水仙さんのブログの更新を楽しみにしています。
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