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「 あずかりやさん 桐島くんの青春」感想

2019-12-29 | 小説・漫画他
『あずかりやさん』続編。
前作よりも、前の時系の短編集。

リニューアルカバーは、こちら
特に猫が一杯出て来るお話では無いのだけれど・・

本作の中で、語り手が机の「あくりゅうのブン」と、ガラスケースの中にあるオルゴールが語り手の「夢見心地」が好きでした。
やっぱり、この物が語るお話が、大好きだーー!


プロローグ
今、月に行く直前の男性が、自分が中一の時の国語の教師が、あずかりやさんに何を預かってもらうか?という授業を懐かしく思い出して話す短編

あくりゅうのブン
「小生は机である」という出だしからしてカワイイ。
芥川龍之介に憧れていて、友人から「あくりゅう」と呼ばれている。
実家の父は教師で、母から、そろそろ戻って来いとせっつかれる。
友人とあくりゅうは、質屋に文机を出そうと思って、あずかりやさんの前に行くのだが(質屋だと思い込んでいた)、店を始めたばかりの預かりやさんだったことが判明する。
あくりゅうは、お店の心得等を教示しつつも、店主の人柄に感銘を受けるのだった。
自分がお客さん第一号になると、ママからもらった2万円を全額つぎ込む。(取りに戻る気はなく、あずかりやさんにお金をあげたかったんだろうと推察)

★以下ネタバレ★
その後数年が経ち、ある日男性がお店に現れた。あくりゅうは、学校の先生になっていました(現実かどうかは解らないけど、きっとそうだろう)
以上

かつてのアパートの部屋では、ヒツ(万年筆)が一番で、次にブン、ユメ、センベイ・ジョー、センベイ・ゲ(このあだ名が可笑しい)というヒエラルキーがあったが、現在はみんな同じなチームあずかりやとして仲良くやっている。

青い鉛筆
主人公は中一、直樹という弟がいるが障害があって、お母さんは弟にかかりっきりだ。
ある日、金髪・青い目の美しい転校生がやってくる。彼女の筆箱に入っていた青い削っていない鉛筆を、取ってしまう・・。
現在祖母の家だった鎌倉に一人で住んで、ファミレスで働いている。弟が大好きだったのは「星の王子様」

夢見心地
語り手はオルゴール。
もともとはスイスのゼムスという職人によって丹精込めて作られたオルゴールで、妊娠中の妻にプレゼントした物だった。
妻はトロイメライ(夢心地)を毎日愛しんで聞いていたが、出産時赤ちゃんと一緒に亡くなってしまう。
その後、ずっとオルゴールを作らず時計職人だったが、55才の時にオーストリアの貴族が、病弱な娘の誕生日に是非とオルゴールの注文が入るのだった。素晴らしいオルゴールを作ったのだが、納品直前、火事で焼けてしまう。再度作り直し、今度は中に入れる音源を、あのトロイメライにと交換して持って行くが、直前に娘は熱で、聴覚を失ってしまっていました。

★以下ネタバレ★

それでも、音源の振動に感激し、手元に置いて毎日聞くようになる。そのオルゴールのせいで、段々と聴覚も戻って行って、元気な22歳へと成長したのでした。元気になってから彼女はオルゴールを聞くことは全くなくなってしまいました(ここらへんは、トイストーリー2の様で哀しい・・)すっかり忘れ去られていたある日、娘は好きな男性と駆け落ちする事に。その時あのオルゴールを抱えて持って行ったのは、質屋さんでした・・ 涙

買い取ったお店の主人は、J・Sの刻印を見て、希少価値の高い貴重なものだと言うのでした。
ボロボロになった部品などを修理して、お店に置くと、注目を浴びる様になり、何度もお金持ちが是非欲しいと言って来るのでしたが、店主は譲らずに時が経ちました。
そんなある日、慎ましい新婚旅行の夫婦が店にやって来て、店主は破格の安値で彼らに売ったのでした!
これが前作に登場した日本人夫婦で、何十年後か後、旦那さんが遺言書とともに、あずかりやさんに50年という期限付きで預ける事になる、という経緯なんですねー

日本に来てからのオルゴールは、奥さんに愛され、後に産まれた男の子の成長を見守り、やがて弱って亡くなる奥さんの側で息子さんが病室にまでもって行って・・・と、常にずっと側にい続け、幸せに暮らしていたのでした。
以上

前作を読んだ時に、なぜ、時々鳴らず事、という注文だったのか解らなかったのですが、こういう事だったんだ・・・と、かなりジーンとしてしまいました。
機械ってずっと動かさないままだと、さびたり、ダメになってしまうんですよね。

海を見に行く

店主の桐島君の高校時代のお話。
成績優秀で記憶力の凄い桐島君は、寮のある盲人学校で楽しく暮らしていました。東大法学部を目指してお勉強中。学校の同級生でピアノの上手な河合さんを密かに思っています。
その河合さんと相部屋になる新入生の石と交流することになる。
石の希望で鎌倉の海に行く羽目になる。
ラストは河合さんが弾くピアノ(トロイメライ)を聞きながら、自分が生まれ育ったあの家がよみがえって来て、あの家に戻りたい、あそこにいたい・・という気持ちが強くなり、進学は辞めて、お店を継ぐことを決めたのでした。

あずかりやさん 桐島くんの青春 – 2016/9/12
大山淳子

前作の感想 「あずかりやさん」


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