宮下奈都さんは、やっぱり凄い・・・って改めて実感した本でした。
それと、この小説って、宮下さんご自身がモデルになっていそうな気がするけれど、ここまで書いてしまって大丈夫なのか?と、思わず心配になってしまいました・・・。(実際のご家族とか、友人関係とかに、何か影響が及ばないか?とか余計な心配をしてしまうのでした)
というのも、少し前に、王様のブランチに宮下さんが出演されていて、旦那様のことを、昔は凄く格好良くてもの凄く好きだった事や、運動会で息子が走らなかったエピソードもご自分の息子さんの実話だとおっしゃっていたし、ルックスも綺麗な人だし、上智大学を卒業された学歴と知性がありつつも、地方都市で長らく専業主婦されていたし・・・。そうなると、この小説のリリコとご本人とでは、かなり色々な面で同じ部分がありそう。
本作では、最初に読んだ宮下さんの作品である「短編集「コイノカオリ」の中におさめられていた「日をつなぐ」」での主婦の気持ちを、さらに強力にさらけ出したような処があり・・、それらがグサグサ来まくりました。世間の多くの30~40代の女性を代弁してくれているような箇所が沢山あります。宮下さんの文章力と、あちこちに散りばめられている鋭い表現に、ただただ脱帽。
タイトルから受ける印象は、妻と夫の話がメインなのかな?って思ったのですが、そういう感じではなかったです。妻の心の声を中心にし、子供や、友人、夫、一時恋仲になった男などへの思いや、自分の気持ちの変化や揺れ動きなどを丁寧に書いています。どれも凄くリアルに描かれており、特に子供に対しての心の声というか気持ちが、ホントに痛いほど解る!って処が沢山有りました。潤が走らなかった処とか、全くタイプの違う2人の子供をつい比較しそうになったり、それぞれの子供の特性を理解しようと努力するところとか。
その他、友人関係では、リリコが田舎に引っ越してから、東京で子供繋がりで友達だった人からの長文メールがどんどん届く様になった・・・(側にいたらうち明けられない事も、遠くに住む様になったら、話せるようになる)とか、実母や義母との関係、(実母が訪ねて来て、お受験とかが無い幼稚園や小学校に子供(孫)が進む事について話すシーンとか)
あと、印象に残った処
○弟のピアノを聞いた潤が言った「月の輪熊みたいだったね」「あの、バーンで鳴らした音、熊が伸びをして吠えたみたいだった」
○学校で一番好きな時間に、げこうと書いた潤。
○筒石さんが子供が生まれた記念に何か新しい事をしたくて始めたデコパージュ。私だって潤が生まれたときに何かを始めていたら今頃八歳だったのだ。リリコは0才だ。
○隣に住む塩原さんから「主役やりたい人は家にいたらつらいやろ」と言われた。
★以下ネタバレ 白文字で書いています★
紳士服店のモデルに、達郎とリリコ2人を引き合わせてくれた上司の藤沢さんもやっていたとは。
潤にはピアノの才能があるらしく、月に1回、東京の先生にレッスンを受けに行くことになりそうだ。
筒石さんは離婚。
ただ、芸能人の彼との部分だけは、な~んかしっくり来なかったんです・・。 2人で喫茶店で2時間とか話をする・・って、それが主婦側にとっては楽しい時間であっても・・・。それが2年間続いたというのも・・・。別に不倫反対!ってわけじゃないのだけど、相手が芸能人だったって処に、なんだか現実ばなれしちゃってる感じがしたんです。相手が普通の人の方が、しっくり来たかな・・。以上
そういえば、餞別に10年日記をもらうというのが出て来ましたが、私も子供が2才くらいの時に自分でですが、5年日記というのを買ったんです。2才未満までは、育児日記?とかいうのを、ミルク会社でただでくれるやつを書いていたんですが、それを使いきってしまったので、日記を買ってこようと思って。そうしたら、5年と10年のとが売られていて、さすがに10年はちょっと荷が重い・・と思い、5年を買ったわけです。でも全部埋まりませんでしたねえ・・・。5年の内の最初の3年くらいで止めてしまいました。
30~40代の田舎に住む主婦の人に是非読んで頂きたい本です。限りなく5つ☆に近い4つ☆半
「田舎の紳士服店のモデルの妻」宮下 奈都 2010-11
(内容・あらすじ)
竜胆梨々子は八王子生まれで首都圏でずっと暮らして来た。小学校からずっと王道を行く女子だったリリコ。クラスで一番ではないが2,3番目には優秀で綺麗で・・。会社の上司から紹介されたエリートに一目惚れして、彼をget!子供も二人いて、幼稚園ママとも上手くやり・・・順調に生活をしていた。しかしある日、夫のが会社を辞めると言い出した。うつ病になってしまっていたのだった。夫の実家である、北陸のどこにでもある田舎に引っ越すことになる・・。
宮下奈都
「太陽のパスタ、豆のスープ」
よろこびの歌
宮下奈都「新しい星」、恒川光太郎「夜行の冬」
「遠くの声に耳を澄ませて」
「スコーレNO.4」ネタバレ感想
王様のブランチですか?!(宮城県ではこの番組昼頃からあって、読書コーナーが割愛されているんです。YouTubeでも探してみます。)それは貴重なネタですね、ありがとうございます。
でも、私、自分は男だった…と思い知りました。この本、まずは女性に向けて書かれている本なんでしょうね。十分楽しみはしましたが。
王様のブランチ、宮城県ではブックコーナーを削っているなんて
ひどいですねー。私は王様のブランチは最初の25分(ブックコーナー)だけ見て、後は見てないというのに・・・。
確かにこの本は、男性が読むのは、ちょっと辛いかも・・・。女性に向けて書かれていると思います。多分同世代の女性(田舎に住む)の気持ちを、ここまで書いた本は他には知りません。(あるのかもしれませんが、読んだ事がないです・・)
角田光代さんも、以前「対岸の彼女」等で、煮詰まってる主婦を書いた事があって、それも素晴らしかったのですが、宮下さんのは、ご自身の体験から絞り出されたリアルな言葉だと思いました。
ところどころ、ここまで書いていいのかな・・・とハラハラしました。そこまでの覚悟と勇気を持って、田舎の主婦代表?として書いてくださったんだと思います・・・
こちらにも来てしまいました(笑)
なんと、運動会で息子が走らなかったエピソードって宮下さん自身の体験談でしたか
さらに梨々子の旦那に対する描写(昔は凄く格好良くて好きだった)も実際の宮下さんのことが結構反映されていたのですね。
塩原さんから「主役やりたい人は家にいたらつらいやろ」と言われたのは、私も印象に残りました。
梨々子が所々にのぞかせていたプライド、塩原さんにはお見通しだったんだなと思います(笑)
運動会の息子のエピソードは、とても印象に残っています^^
今まで、田舎で生きるということを題材とした小説といえば、私は、宮下さんオンリーだったのですが、先日読んだ山内マリコさんの「ここは退屈迎えに来て」も、すごく良かったので、はまかぜさんも機会があれば、是非!
宮下さんは、お勉強が出来て、そこそこモテて、やや綺麗な女子だけど、結婚やら事情により田舎に戻り、そこでモンモンとしながらも、そこでがんばる!という印象を勝手に私は持っていたりします。