桜木さんの本を読むのは「ホテルローヤル」以来かな。
ホテルローヤルが、凄く良かったし、桜木さんの渾身の一作って気がしたので、その後の作品を読むのが、ちょっと怖かったというか、がっかりしてしまいそうな予感がして、なかなか手が出なかったんですよね。
でも、図書館に行った時に、たまたま棚にあったので、読んでみました。
ホテルローヤルの次の作品だったそうです。舞台は、いつものように北海道の東、釧路です。
読んだ感想としては、なかなか面白かったです。4つ★位かな。
長編ということで、じっくり腰を据えて読むことが出来ました。
中でも、秋津夫婦のお互いの深い心の中の描写が凄いです。こんな風に思っているのか・・っていうのが、凄くリアルです。
全体的に暗いですが(桜木節というか)ぐいぐい引き込まれます。
登場人物は、札幌から来た、図書館を任されている林原、25歳だが幼い子供の様な妹の純香(書道の才能があり、贋作の天才)
書道家の秋津(なかなか大きな賞を取れずに、細々と書道教室を開き、かつて書道の大家であった母を自宅で介護している。)
秋津の妻、高校の養護教諭の伶子。
主要な登場人物は、この5名。
純香を書道教室や自宅に招き入れた絵秋津家。
そして、林原と伶子はメールのやり取りから、少しづつ接近していくようになり・・・
★以下ネタバレ★
なんと、書道教室に長年通っていた少年が、純香を橋から突き落として殺してしまうとは! この少年は幼い頃より、母から芸術家になるよう強要され、勝手に期待されて、もう限界だったのでしょうね。とはいえ、何故純香を殺してしまうに至ったのかは謎です・・。
その後、想像した通りに、林原と伶子はそういう関係になる。でも1回だけで、その時の描写は、桜木さんにしては珍しく書かれていませんでした。
何より一番この小説でホラーなのは、半身不随であるはずの母が、どうやら本当は治っているらしい・・・という事。
少々認知が進んでいるらしいけれど、それも嘘なのかも。
息子におむつの交換をさせ、身の回りの事を全部してもらって・・・。どうして、ふりをしているのか・・?
途中で息子がそれに気がつくのですが、だれにも言わずに、そのままにしているんですよね・・。
「雅印が上手く彫れない、このままでは賞の締め切りに間に合わない・・・」と切羽詰まっていたのを見かねて、どうやら母が彫ったのですが、その彫りは全く腕が衰えてない素晴らしいものだったらしいし。
そして、いよいよ、長年欲しかった、墨龍展の金賞を秋津が受賞しました! でも、どうやら、それは純香が書いたものを使って提出していたようでした・・・。というところでお終いです。
一か所だけ、純香の心の声が書かれているところがあります。(死の直前 208頁)
そこで、秋津の母が「みんながびっくりするようなものを書いてくれたら、亡くなったおばあさんに、会わせてあげる」って、彼女に言っていたことが解ります。
そして、授賞式に車いすで参加していた母が、トロフィーを落とす処からも、やっぱり全てちゃんと解っていたことが伺えます。以上
あと、林原が伶子に貸す本とDVDが「シェルタリング・スカイ」ポール・ボウルズなのですが、何度もこの小説が登場してきます。
私もこの小説と映画は、結構好きだったので、嬉しかったです。
ちょっと釧路・桜木さんと、イメージ的に想像がつかない組み合わせでした。
無垢の領域 2013/7/31 桜木紫乃
内容(「BOOK」データベースより)
道東釧路で図書館長を務める林原を頼りに、25歳の妹純香が移住してきた。生活能力に欠ける彼女は、書道の天才だった。野心的な書道家秋津は、養護教諭の妻伶子に家計と母の介護を依存していた。彼は純香の才能に惚れ込み、書道教室の助手に雇う。その縁で林原と伶子の関係が深まり…無垢な存在が男と女の欲望と嫉妬を炙り出し、驚きの結末へと向かう。濃密な長編心理サスペンス。
桜木紫乃
無垢の領域
「星々たち」
ホテルローヤル
「ラブレス」「恋肌」
「氷平線」
ホテルローヤルが、凄く良かったし、桜木さんの渾身の一作って気がしたので、その後の作品を読むのが、ちょっと怖かったというか、がっかりしてしまいそうな予感がして、なかなか手が出なかったんですよね。
でも、図書館に行った時に、たまたま棚にあったので、読んでみました。
ホテルローヤルの次の作品だったそうです。舞台は、いつものように北海道の東、釧路です。
読んだ感想としては、なかなか面白かったです。4つ★位かな。
長編ということで、じっくり腰を据えて読むことが出来ました。
中でも、秋津夫婦のお互いの深い心の中の描写が凄いです。こんな風に思っているのか・・っていうのが、凄くリアルです。
全体的に暗いですが(桜木節というか)ぐいぐい引き込まれます。
登場人物は、札幌から来た、図書館を任されている林原、25歳だが幼い子供の様な妹の純香(書道の才能があり、贋作の天才)
書道家の秋津(なかなか大きな賞を取れずに、細々と書道教室を開き、かつて書道の大家であった母を自宅で介護している。)
秋津の妻、高校の養護教諭の伶子。
主要な登場人物は、この5名。
純香を書道教室や自宅に招き入れた絵秋津家。
そして、林原と伶子はメールのやり取りから、少しづつ接近していくようになり・・・
★以下ネタバレ★
なんと、書道教室に長年通っていた少年が、純香を橋から突き落として殺してしまうとは! この少年は幼い頃より、母から芸術家になるよう強要され、勝手に期待されて、もう限界だったのでしょうね。とはいえ、何故純香を殺してしまうに至ったのかは謎です・・。
その後、想像した通りに、林原と伶子はそういう関係になる。でも1回だけで、その時の描写は、桜木さんにしては珍しく書かれていませんでした。
何より一番この小説でホラーなのは、半身不随であるはずの母が、どうやら本当は治っているらしい・・・という事。
少々認知が進んでいるらしいけれど、それも嘘なのかも。
息子におむつの交換をさせ、身の回りの事を全部してもらって・・・。どうして、ふりをしているのか・・?
途中で息子がそれに気がつくのですが、だれにも言わずに、そのままにしているんですよね・・。
「雅印が上手く彫れない、このままでは賞の締め切りに間に合わない・・・」と切羽詰まっていたのを見かねて、どうやら母が彫ったのですが、その彫りは全く腕が衰えてない素晴らしいものだったらしいし。
そして、いよいよ、長年欲しかった、墨龍展の金賞を秋津が受賞しました! でも、どうやら、それは純香が書いたものを使って提出していたようでした・・・。というところでお終いです。
一か所だけ、純香の心の声が書かれているところがあります。(死の直前 208頁)
そこで、秋津の母が「みんながびっくりするようなものを書いてくれたら、亡くなったおばあさんに、会わせてあげる」って、彼女に言っていたことが解ります。
そして、授賞式に車いすで参加していた母が、トロフィーを落とす処からも、やっぱり全てちゃんと解っていたことが伺えます。以上
あと、林原が伶子に貸す本とDVDが「シェルタリング・スカイ」ポール・ボウルズなのですが、何度もこの小説が登場してきます。
私もこの小説と映画は、結構好きだったので、嬉しかったです。
ちょっと釧路・桜木さんと、イメージ的に想像がつかない組み合わせでした。
無垢の領域 2013/7/31 桜木紫乃
内容(「BOOK」データベースより)
道東釧路で図書館長を務める林原を頼りに、25歳の妹純香が移住してきた。生活能力に欠ける彼女は、書道の天才だった。野心的な書道家秋津は、養護教諭の妻伶子に家計と母の介護を依存していた。彼は純香の才能に惚れ込み、書道教室の助手に雇う。その縁で林原と伶子の関係が深まり…無垢な存在が男と女の欲望と嫉妬を炙り出し、驚きの結末へと向かう。濃密な長編心理サスペンス。
桜木紫乃
無垢の領域
「星々たち」
ホテルローヤル
「ラブレス」「恋肌」
「氷平線」
この作品は、長編なので、じっくり味わうことができました。
桜木さんはすごいなあ。
認知症のふりとか、できるものなんでしょうか?
こわい気がします。
桜木さん、心理描写が、とても上手な作家さんですよね。
長編だと、じっくり読めて良いですよね。
読み応えがありました。
認知症のふり、っていうのは、びっくりする展開でしたが、うーん、、そこらへんは、読者を驚かせる効果はあったと思うんですが、現実的には、下の世話を息子にしてもらうのとか、嫌だと思うし・・。
うーーん、、、どうなんでしょうか・・・。
桜木節でしたねぇ。
釧路湿原から漂ってくる濃い霧の中でさまようような物語でした。
秋津の母の、苛烈な愛情と妄執が怖かったですね・・・。
物語の終わりも、これから残された彼らはどう生きていくのか…と、心が重くなりました。
私の処も、今日は桜がもう散って来てます。
強風にあおられて、あっという間に・・。
確かに、釧路の寒々しい風景がぴったり来る作品でしたね。
たいがい桜木さんの小説は、道東を舞台にしているので、こういった雰囲気で、重いストーリーが多い印象です。
ラスト以後の彼らの人生を思うと、色々心配になりますね・・・