おとぎ話の忘れ物 (2006年4月出版)
小川 洋子, 樋上 公実子 / ホーム社
これは、最高に良かった。樋上公実子さんという方の絵と、小川洋子さんの文が、上手い具合にマッチしていて、双方相乗効果?をあげていました。全部短編なので読みやすいし、誰でもが馴染みやすいおとぎ話に、ちょっと残酷なスパイスが入っているものの、そんなにエロ系グロじゃないし。
まずは、冒頭の、「スワンキャンディー」(ぶらぼ~~~!こういうのドツボ、大好き)と、忘れ物図書室(忘れ物保管室)のエピソードを読んだだけでも、こりゃ絶対面白いわ!!と思ったし、あとがきで小川さんが書いていた、小さい頃色々な色のキャンディーを弟と食べたエピソードを読んで、私もそうだったー!!って凄く懐かしかったな。
これならば子供にも読ませられるかも・・・と思って(自分ちの子はブラックな内容+少々のグロ系がOKなのを知っていたから)ちょっと「アリスという名前」から、まず読んでみて、ってお薦めしたら、他も一気に全部読んじゃって、気に入った!って言ってくれて、凄く嬉しかった。
「ずきん倶楽部」ずきんコレクション・マニアの・・・
「アリスという名前」アリスという名前での悲劇?ちょっと可笑しく、ちょっと気持ち悪い、私はかなり楽しかったお話。
「人魚宝石職人一生」人魚姫の世界。退化していく部分・・・のエピソードが、すごい。
「愛されすぎた白鳥」静まりかえった美しい風景が頭に浮かぶ様なお話。
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「凍りついた香り」発行1998.5月
う~ん、これは、今まで小川作品を、6つ読んで来た中では、あまりピン!と来なかった本かな・・・。調香師という職業的には、凄くゾクっと来るのだけれども。
出て来るパーツは、それぞれ、小川さんチックで良いのだけれど、どうもぴたっと繋がった感がしないというか・・・。プラハでのエピソードが、現実離れし過ぎていて、(いや元々小川さんの小説は、そういう処が面白い部分なのは解っているのだけど、今回に限っては、何故言葉が通じるんだろう?とか、そういう事がちょこっと引っかかっちゃった)
読み終えて思ったことが「この男は、何故主人公に色々な事を隠してたんだろう?」ということと、こんな隠しまくりの男と暮らしていたら、私なら悲しくてやりきれんぞ!と思ってしまった。
★ネタバレです★文字反転して下さい。
★天才的数学才能があるって処は、この後2003年に発表される「博士の愛した数式」で、開花されたんだろうな~って思いました。それにしても、端正なお顔立ち・容姿+天才的数学才能+スケートとサービス精神旺盛+穏やかで優しい性格・・・この男、あまりに才能に恵まれすぎてやいませんかね?w以上
(内容・あらすじ)
主人公はフリーのライター。パートナーがふいに自殺する。原因は全くわからない。存在さえ知らなかった「弟」と出会うことで、今まで自分が知らなかった、パートナーの別の一面、姿がどんどん露わになって来る。
プラハと日本を行ったり来たりしながら、話は進む。
先日「香水 ある人殺しの物語」パトリック・ジュースキント著を、読んだばかりだったので、同じ「調香師」ということで、ちょっと前者の「人殺し・・」の方が、もっと超天才的で凄すぎた?のも、後で読んだこの作品をかすませてしまう要因だったのかも・・・ こちらも後日感想アップします。映画感想は、映画倉庫でアップ済みです。
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「海」
2006年10月出版(2001年~2006年までの作品が混ざっています)
七つの短編・掌編小説集。 「海」 「風薫るウィーンの旅六日間」 「バタフライ和文タイプ事務所」 「銀色のかぎ針」 「缶入りドロップ」 「ひよこトラック」(2006年10月 この中で一番新しい作品) 「ガイド」(2001年 一番古くに書かれた作品)
どれも、小川さんらしい小説。「缶入りドロップ」は、ちょっといい話だナって思いました。「おとぎ話の忘れ物」に出て来たスワンキャンディーと同じく、色々なキャンディーが出てきてウキウキしました。
「風薫るウィーンの旅六日間」は、オチにビックリ^^ おばさんに付き合ってあげる主人公、優しいなぁ~。
小川さんの小説に時々出て来る、現在目の自分の前にいる老いた人が、かつては、輝く美しさだったり、恋愛をしていた人だったなんて、同じ人とは思えない・・・みたいな下りは、良く解る・・・。
私は、「とにかく遠い場所に、たとえ一瞬でも自分のことを想いだしてくれる人がいるなんて、うれしいじゃありませんか・・・」の一文が、かなり共感出来ちゃいました。
「バタフライ和文タイプ事務所」は、私が長年、「子宮びらん」っていつも言われるので、そうか~漢字では、こんな風に書くんだ、って知りましたw
その他小川さん作品の感想
「偶然の祝福」「博士の本棚」感想
妊娠カレンダー、貴婦人Aの蘇生、寡黙な死骸 みだらな弔い
薬指の標本 5つ☆ +ブラフマンの埋葬
「おとぎ話の忘れ物」と、「凍りついた香り」、「海」
「ミーナの行進」「完璧な病室・冷めない紅茶」感想
スワンキャンディーやっぱり惹かれますよねー!!
私は、海よりも、おとぎ話しの忘れ物の方が、より楽しめてしまいました。
latifaさんのオススメなら、読む価値ありかも。
キャンディの思い出ですが、子供の頃スーパーに行くと、200円でビニール袋に好きなキャンディを詰め放題というコーナーがあって、遠足で「お菓子500円」以内の制限があったときはよく利用しました。
小川さん、短編だとこういうアプローチをされるのですね。
「風薫るウィーンの旅六日間」は、なんだかほのぼのしてて、笑えましたね~。
「とにかく遠い場所に、…」の一文、私もかなり共感しちゃいました。
ん~お薦め!とは書いたものの(いきなり弱気になる・・・)少々女性向きかな・・・?という気も。
そういえば、前に、宮沢賢治のお話で、イラストのアップしようと思って、なかなか出来ないまんまになっちゃってましたな・・・。
子供の頃、デパートの地下に、グルグル回ってるキャンディーだのなんだのが売られてる(計り売り)コーナーみたいのがあって、あれが子供心に、非常にそそられました。最近は、全く見ないな・・・
藍色さんには、ミーナをご紹介受けて、でも順番待ちが酷すぎるので、待っている間に、他の作品もリクエストしたんです。たまたま最初に来たのが、薬指の標本でして。それがかなりズボっとはまって、色々読んでみよう!と思って、この3つを読むに至りました^^
またご紹介してくださってありがとうございます!
西加奈子「通天閣」
津原泰水「ブラバン」
この2名の作家さんは、全然知らなかったです。ブラバンは、今、ちょっとのだめカンタービレで、そういうのに興味があるので、読んでみたいな、って思いました。
桂望実「RUN!RUN!RUN!」
川上弘美「真鶴」、
絲山秋子「エスケイプ/アブセント」
桂さんは、「県庁の星」だけ。川上さんは2つ、つい最近読んだばかりなのです「溺レる」「ニシノユキヒコ」。もう下書きに感想文を殆ど書きかけているのがあったりします^^またお邪魔させてくださいね
すっかり、小川洋子作品集に没頭されてるようですね
一人の作家を片っ端から読むというのは学生時代以来やっていないので、ちょっと懐かしく感じました。
「凍りついた香り」というタイトルは面白い表現ですね。
そうなんです。結構ハマっちゃって、、割といつもこうなんです。作家でも映画でも、何か気に入った人がいると、立て続けに、見ちゃう性分で。
そろそろ、次に(別の人)行こうと思っているところです。読みあさって自分なりに満足した感じなのでw。
「とにかく遠い場所に、たとえ一瞬でも
自分のことを想いだしてくれる人がいるなんて、
うれしいじゃありませんか・・・」
素敵な言葉ですよね。
しみじみ。
小川さんのやさしさがさりげないところから感じられて、
とてもよい短編集でした。
TBとコメントありがとうございました
miyukichiさんのお陰で、久し振りにこの小説のこと思い出しました。
そんな素敵なセリフがあったんですよね。
最近忘れっぽくて困ります。
また、ふと、読み直したい気分になりました☆