今村作品は『こちらあみ子』をとても面白く読んだものの、うっかり今村さんのその後の作品を読むのを忘れて何年か経ってしまっていて、『むらさきのスカートの女』を先日読みました。
そのうっかり忘れていた時期の作品を読んでみようと思って、まずは「あひる」を。
表題作「あひる」のほかに「おばあちゃんの家」「森の兄妹」が収録されています。
やっぱり面白かった!
「むらさきのスカートの女」よりも「あひる」の方が私は好きです。
注意 今日はネタバレで全部あらすじを書いています!
あひる
主人公のわたしは実家暮らしで、資格のための勉強をしている。
一階に両親が暮らしており、弟は結婚して割と近くに住んでいるが、まだ子供はおらず、母はいつも赤ちゃんが出来ますように・・と神棚で祈っているようだ。
父の同僚から譲り受けた「のりたま」というあひるを飼うようになってから、静かだった家が急に賑やかになった。毎日あひるを見に来る小学生などで、両親は嬉しそうだ。
しかし途中でのりたまはストレスの為か、死んでしまう。(死んだとは一言も言わず、隠している両親だが、微妙に違うので、私には解ってしまう)
それ以来、ぱったりと子供たちが来なくなり、静かになってしまう。
しかし、両親は病院から、のりたま元気になって戻って来たよー!と、、別のそっくりなあひるを購入して鳥小屋に入れるのだった。
そしてまた、子供たちが来るようになって、にぎやかになる。
しかし・・・また、次のあひるもまたストレスで死んでしまう(またそれを隠す両親 笑)のだが、今度は太ったあひるを買って来る。今度のあひるは、明らかに太り過ぎだったし、何でも食べる生命力の強い子だったっぽい。
でも、子供たちは前回の様にぱったり来なくなくなるわけではなかった。
というのも両親は、子供たちが宿題をする場所として自宅を開放し、彼らが喜ぶお菓子やらゲームやらを用意しているため、もう子供たちは、あひるがいなくても、この家に集うのだった。
そんなとき、弟が久しぶりに家に戻って来て、赤ちゃんが出来た事を報告する。
両親は大喜び、家を増築して、もうすぐ同居することになる。
以前の2羽は、過度な注目を受けたためのストレスがあった(子供たちが水浴びやら遊びの相手や世話をしてくれたり)だったが、3羽目のあひるは、放置状態が多く運動不足だったため、足にできものが出来て結局死んでしまう。
ラストシーンは、3羽目のあひるを庭に埋めていた時、小さな女の子に声をかけられる。
前の2羽も、そこに埋められているの?と言われるのだった(気がつかれてないと思い込んでいただけで、子供にも、ちゃんとのりたまは、それぞれ別だったことがバレていた)
そして「一番最初ののりたまが一番好きだったよ」と言われるのだった・・・
おばあちゃんの家
みのりは、家のすぐ横にある小さな小屋(インキョ)に住むおばあちゃんのところに、時々出入りしている。おばあちゃんとは血の繋がりがないが、ずっとこの家に住んでいるのだ(祖父の嫁だったのだが、子供は出来なかった)
おばあちゃんは、ニコニコと優しくて、いつも下を向いて手芸をしている。足がちょっと悪いので杖をついているが、かつてみのりが道に迷って泣いて電話した時には、竹林まで迎えに来てくれた。
それから何年か経って、みのりは中学生。
バトミントン部で活躍し帰宅も遅くなった。おばあちゃんちに行く機会も、めっきり減ってしまっていた。最近おばあちゃんが認知になって、独り言が多くなり、歩き回ったりと活動的になった・・・。
おばあちゃんしか使わなかった外のトイレは、もう誰も使わない。おばあちゃんは母屋のトイレを使うようになっている。
(どうやら、おばあちゃんの足が悪いは、ずっと突き通していた嘘のようだ。竹林で迷子になって両親が留守中なのに電話をかけてしまったら、おばあちゃんが結構すぐ受話器を取っていたことからも、それが解る)
森の兄弟
シングルマザーに育てられているモリオとモリコは、貧困家庭のようだ。
モリオは学校で、ちょっといじめられがちな様子・・・ 読みたい漫画の本も、手に汗をかいて濡らしてしまうし、妹が落書きしてしまうため、友達から貸してもらえなくなる。
そんな時、びわの木を発見、びわを取ってお腹を満たしていたら、木の側の小屋から、おばあちゃんが「ぼくちゃん」と声をかけてくれるようになる。
その後も、おばあちゃんに飴玉をもらったりするうちに、モリオはおばあちゃんの処に通うようになるのだった。
ラストは、モリオとモリコがおばあちゃんに会いに行くと、ちょうど誕生会をしていた様で(上記のお話にも、最後の方で、そのシーンがあります。その時なのね)お家の娘さん(みのり)に声をかけられて、また遊びに来てね!と言われるのだったが・・・
お母さんがモリオの大好きな漫画を全巻まとめて買って来てくれて、おばあちゃんちに行かなくなってしまう。
ストーリーだけ書けば、シンプルなのだけれど、「あひる」は、ちょっと可笑しみのあるお話で、「おばあちゃんの家」「森の兄弟」は、どこか物悲しくて、心に染みるというか・・・切なくなるお話でした。とても読みやすく、そして3つとも面白かったです。4つ★半
あひる 今村夏子 2016/11/18
今村夏子
「あひる」
「むらさきのスカートの女」
こちらあみ子
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます