凄く読みやすく、ヘビーな状況なのにもかかわらず、暗くなくて、変にコメディに偏ってる事もなく、TVドラマになりそうな感じの内容でした。
89歳の新平。88才の妻は認知症。3人の息子(長男は10代からずっと引きこもり、次男は女性に、三男は独身でアイドル等の事業を手掛けるも大赤字で親に借金2000万をしている)という、かなり悲惨な状況。
それでも、新平は、毎日のルーティーンをこなし、東京の建物めぐりや、お気に入りの喫茶店やレストランを巡ったりする暮らしを続けています。
妻との出会い、東京に出て来てから結婚、建築事務所が軌道に乗り、冨子という愛人がいた頃、長年の人生を振り返りつつ、日常の様子をあっけらかんと語る小説でした。
認知になった妻が、昔、夫に愛人がいて辛かった時期の事を思い出し、出かけようとしている夫に「どこ行くの」「冨子と会ってたんでしょう」とチクチクと夫に言ったり、夜中に泣いていたりするのが切なかったです・・・。
新平にも妻にも、それぞれ兄弟がいて、特に妻の姉妹には上京当時、とても世話になっていましたね。妻の姉が未婚で産んだ姪っ子と、その夫の高木などのエピソード等も有りました。
次男(長女)は結婚はしてないけれど、ちゃんと一緒に暮らす若いパートナーの男性がいて、お花関係の仕事もちゃんとやっていて、一番幸せなんじゃないかなあと思いました。
★以下ネタバレ★
妻が倒れて救急車を呼ぼうとする子供たちに、新平がそのままにして、死なせてあげようとする。救急車で運ばれたら、自然に逝くことが出来ず、無駄な延命治療で生かされてしまうから、って事で。
でも結果的には妻は病院に運ばれ、医者の見立てで長くはもたないだろうと言われ、胃ろうを断ろうとしていたのですが、相談の結果胃ろうを受け入れました。
その後妻は意識を取り戻し、実家に戻ることが出来て、現在は新平が妻を介護ケアしつつ、94歳になっている、というところで終わってます。
この後、どうなるのかは解りませんが、なんとかなるだろうと楽観的に思える小説でした。
でも、実際のところは、かなり大変だろうし、これはキツ過ぎる・・と思いますけれども・・。
建物めぐりや、カフェめぐりで、結構知っている建物やお店が出て来たのが嬉しかったです。
先日、このブログでアップした池袋の洋菓子・喫茶「タカセ」が何度も登場していました。
じい散歩 藤野千夜
2020/12/16
新平は散歩が趣味の健啖家。妻はそんな夫の浮気をしつこく疑っている。長男は高校中退後、ずっと引きこもり。次男は自称・長女のしっかり者。末っ子は事業に失敗して借金まみれ
藤野千代「願い」「夏の約束」
そうでしたか、途中で挫折されていたんですね・・。
まあ、確かに、ちょっとお気楽過ぎというか、、、何と言うか・・・
あ、コメント欄読んで下さったのね。
自分の終活とかも本気で考える今日このごろでございます
それより、コメント欄のお二人の会話に刺激を受けました
確かに!その通りですね。
全く意志を伝えてないよりは、自分の希望を明らかにしておく、ってだけでも全然違いますよね。
その時点では本人は意識が無いかボケてる状態なので、どうなろうと本人には関係ないのですがね。子供たちが判断する上で「何らかの助けになれば」くらいの感覚です。
そうなんですよ、かなりヘビーな要素がてんこ盛りな小説でした。
でも、あまり重くなってないのが不思議です。
年初からエンディングノート作り・改定ですか。大切ですよね。
私は若い頃から、リビングウィル的な念書は、家族のよく見える場所に貼っておいてます。でも、そういうのを書いてあっても、ダメみたいだとか聞きます。
段々医療界や救急車の方針も、そういった希望を受け入れてくれる様に変わっては来てるみたいですが・・・。
私の年初の仕事は、退職前に作成したライフプラン(金銭計画)とリビングウィル(終末医療事前指示書)を含むエンディングノートを改定する事。これまで父母と義父を看取ってきたので、その経験から子供らに無駄な負担をかけぬようにエンディングノートとリビングウィルを書きました。
年に一度見直すと、なかなか面白いものです。