リートリンの覚書

日本書紀 巻第二十六 天豊財重日足姫天皇 十八 ・百済の建率の某と沙弥の覚従らが来日



日本書紀 巻第二十六 
天豊財重日足姫天皇 十八

・百済の建率の某と沙弥の覚従らが来日



九月五日、
百濟は、達率(だちそち)(名を欠く)の、
沙弥(さみ)の覚従(さみかくじゅ)等を
遣わして、来て奏して、

(或る本は云う。逃げて来て難(わざわい)を告げたと)

「今年七月、
新羅が力をたよりにして、
勢いを作り、
隣と親しくなりませんでした。

唐人の計画を引きいれて、
百濟を傾覆(けいふく)させました。

君、臣も総じて俘となり、
ほとんど残ったものはありませんでした。

(或る本は云う、今年七月十日、大唐の蘇定方(そていほう)は、船師(ふないくさ)を率いて、尾資(びし)の津に軍を進めました。新羅王の春秋智(しゅんしゅうち)は、兵馬(いくさ)を率いて、怒受利之山(のずりのむれ)に軍を進めました。百濟を挟み撃ちして、相戦うこと三日。我が王城を陥させました。同月十三日、始めて、王城を破りました。怒受利山は百濟の東の堺です)

ここにおいて、
西部(さいほう)の恩率(おんそち)の
鬼室福信(きしつふくしん)は、

赫然(かくぜん)として、
発憤(はっぷん)して、

任射岐山(にざぎのむれ)を
據(よりどころ)にしました。

(或る本は云う、北任敍利山(きたのにじょりのむれ)と)

達率の余自進(よじしん)は、
中部の久麻怒利城(くまのりのさし)を
據にしました。

(或る本は云う、都々岐留山(つつきるのむれ)と)

各々が一つの所で営み、
散った卒を誘い集めました。

兵(つわもの)は
前の役(えだち)ですベて費やしました。

故に棓(つかなぎ)で戦いました。

新羅の軍は破れました。

百濟はその兵(つわもの)を奪いました。

既に、
百濟の兵は翻(ひるがえ)し、
鋭(するど)く、
唐は敢えて入りませんでした。

福信(ふくしん)等は、
遂に、同国を鳩集(きゅうしゅう)し、
共に王城を保ちました。

国の人は尊んで、
佐平(さへい)の福信、
佐平の自進といいました。

唯、福信だけが、
神のように武の権を起して、
既に亡んだ国を起こしたのです」
といいました。



・沙弥(さみ)
出家した男
・傾覆(けいふく)
ひっくりかえること。 また、ひっくりかえすこと。 転覆。 転倒
・春秋智(しゅんしゅうち)
金春秋
・鬼室福信(きしつふくしん)
義慈王の父の武王の従兄
・赫然(かくぜん)
1・かっと怒るさま。 激怒するさま。 2・輝き、盛んなさま
・発憤(はっぷん)
精神を奮い起こすこと
・據(よりどころ)
よる、立て籠もる、頼る、縋る場所の意味を持つ漢字
・兵(つわもの)
兵器
・役(えだち)
戦争
・棓(つかなぎ)
ほう・木の棒。こん棒。大きな杖
・鳩集(きゅうしゅう)
寄り集まること



(感想)

(斉明天皇6年)

9月5日、
百済は、達率の出家した男、
覚従らを派遣して、来朝して報告して、

或る本は云う。
逃げて来て難を告げたと。

「今年7月、
新羅が力をたよりにして、
勢いを作り、
百済と親しくしませんでした。

唐人の計画を引きいれて、
百済を転覆させました。

君、臣も総じて捕虜となり、
ほとんど残ったものはいませんでした。

或る本は云う、
今年7月10日、
大唐の蘇定方は、
水軍を率いて、
尾資の港に軍を進めました。

新羅王の春秋智は、
兵馬(いくさ)を率いて、
怒受利之山に軍を進めました。

百済を挟み撃ちして、
たがいに戦うこと3日。

我が王城を陥落させました。

同月13日、
始めて、
王城を破りました。
怒受利山は百済の東の堺です。

この時、
西部の恩率の鬼室福信は、
激怒して、
精神を奮い起こして、
任射岐山を頼りにしました。

或る本は云う、
北任敍利山と

達率の余自進は、
中部の久麻怒利城を頼りにしました。

或る本は云う、
都々岐留山と。

各々が一つの所で営み、
散った兵卒を誘い集めました。

兵器は前の戦争ですベて費やしました。

こういうわけで棒で戦いました。

新羅の軍は破れました。

百済はその兵器を奪いました。

既に、百済の兵は
ひるがえし鋭(するど)く、
唐は敢えて入りませんでした。

福信らは、
遂に、同国人をより集め、
共に王城を保ちました。

国の人は尊んで、
佐平の福信、佐平の自進といいました。

唯、福信だけが、
神のように武勇の権謀を奮起して、
既に亡んだ国を起こしたのです」
といいました。

明日に続きます。

読んでいただき
ありがとうございました。


ランキングに参加中!励みになります。
ポチッとお願いします。

にほんブログ村 歴史ブログ 神話・伝説へ  

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

最近の「日本書紀・現代語訳」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事