リートリンの覚書

日本書紀 巻第五  御間城入彦五十瓊殖天皇 十


日本書紀 巻第五  
御間城入彦五十瓊殖天皇 十

六十年、秋七月一四日、
群臣に詔して、
「武日照命(たけひてるのみこと)

一伝では、武夷鳥(たけひなとり)と。

又、一伝では、天夷鳥(あまのひなとり)
伝えています。

天から持ってきた神宝は、

出雲大神宮に蔵している。これが見たい」
といいました。

すぐに矢田部造の遠祖武諸隅(たけもろすみ)

一伝では、名は大母隅(おおもすみ)
と伝えています。

派遣して、献上させました。

この時、
出雲臣の遠祖出雲振根(いずものふるね)が、
神宝を主管していました。

たまたま筑紫国に行っていて、
(天皇の使者に)対応しませんでした

その弟の飯入根(いいいりね)が、
天皇の命を受けて神宝を、

弟の可美韓日狭(うましからひさ)
その子鸕濡渟(うかずくぬ)に付けて、
貢上しました。

出雲振根が、
筑紫国から還ってきて、
神宝を朝廷に献上したと聞き、

その弟・飯入根を責めたてて、
「数日待つべきであった。
何を恐れていたのか。
たやすく神宝の献上を許すとは」
といいました。

こうしてずいぶん月日は経ちましたが、
(振根は)なお恨みや怒りを懐に抱いており、
弟を殺そうと心に決めていました。

弟を欺いて、
「この頃、止屋(やむや)の淵に
(も)が沢山生えている。
共に行ってみて欲しい」
といいました。

すぐに兄に随行し出かけました。

これより先に兄は、
密かに木刀を作っていました。
その形は本物の刀に似ていました。

そのとき、兄自身、
それを身に帯びていました。
弟は本物の刀を帯びていました。

一緒に淵の岸に到着して、
兄が弟に、
「淵の水は清い水だ。
一緒に水浴びをしないか」
と願い出ました。

弟は兄に言う通りに
各々帯びていた刀を解いて、
淵の辺に置いて、水中に浴みしました。

兄が先に陸に上がり、
弟の本物の刀を取って、
身に帯びました。

後から弟が
驚いて兄の木刀を取りました。
互いに撃ちました。

しかし、
弟の木刀は抜くことが出来ませんでした。

兄は弟・飯入根を撃ち殺しました。
時の人が歌い、

八雲立つ 出雲の梟帥(たける)
身に帯びた太刀は
黒葛(くろかずら)がたくさん巻いたが
中身がなかったよ

さて、
可美韓日狭と鸕濡渟は、
朝廷に参上して、
事細かにその状況を奏上しました。

すぐに、
吉備津彦と武渟河別を派遣して、
出雲振根を誅殺しました。

出雲臣らは、このことを畏れて、
しばらく大神を祭りませんでした。

時に、
丹波の氷上の人の名は、
氷香戸辺(ひかとべ)といいました。

皇太子・活目尊に、
「我が子は、小さな児ですが、
自然にこう言いました。

玉藻を鎮める石
出雲人が祭る まことに美しい鏡
威厳のある 美しい御神
水底の宝・御宝の主
山河の水の中に隠れる御魂
鎮めはじめている美しい御神
水底の宝・御宝の主

これは小児の言葉とは思えません。
もしかすると
神託の言葉かもしれません。」

皇太子は天皇に奏上しました

(天皇は、)すぐに勅して
(神宝を出雲に帰し、)これを祭らました。



・筑紫国
福岡県

(も)
あさざ。多年草水草。


感想

今日のお話は、
出雲のお話ですね。

武日照命が高天原から持参した
神宝が見たいといいだした、天皇。

武日照命の詳細はこちら、

その命をうけ、献上した飯入根。

勝手に献上したことを怒った兄、振根は、
弟を殺してしまいました。

その報告を受けた朝廷は、
振根を誅殺しました。

討伐を恐れた出雲では、
しばらく出雲の大神、
大国主神を祀りませんでした。

そんな時、
丹波の氷上の子どもが、
意味深な言葉を話します。

おそらく神託であると判断したした
氷香戸辺は、皇太子・活目尊に奏上。

皇太子は天皇に奏上し、

天皇は勅命して、
神宝を出雲に返し、祀らせました。
とな。

しかし、天皇は何故、
出雲の神宝が見たと言い出したのでしょうか?

ちょっとワガママなんて
一瞬思ったのですが。

結果的に出雲のトップ振根が
朝廷側に反抗的だったことが
炙りだされました。

もしかすると、
振根が筑紫国に出向いていたのも、
朝廷に謀叛を企てていたのかも知れませんね。

だから、振根の死後、
出雲の人は討伐を恐れ、
結果大国主神を祀らなくなった。

子ども言葉は、

鎮めることで
美しい神になる大国主神が
祀られなくなっている。
危ないよ
との警告でしょうか。

歌や言葉は抽象的で難しい。

さて、今日はこの辺で。

明日に続きます。

最後まで読んで頂き
ありがとうございました。


ランキングに参加中!励みになります。
ポチッとお願いします。

にほんブログ村 歴史ブログ 神話・伝説へ  

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

最近の「日本書紀・現代語訳」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事