32年前の写真です。どれが私でしょう?
私は工業高校の出身です。 ご存じかと思いますが、ガラが悪いんです。
いろいろな中学から大勢の生徒が集まってきます。
入学と同時に勢力争いが始まります。そして友達も増えますが一様に、ワル(不良)のレッテルを貼られます。
まぁ、ビーバップ・ハイスクールのような感じですかね。
2年生になる頃には、他校のワル連中にも名を知られるようになるんです。
そうなると、先生たちの間では「鼻つまみ」的な存在なんです。
そんな2年生のときに担任になったのがT先生です。当時35歳くらいだったのかなぁ?
村野武範や中村雅俊みたいにカッコいい先生ではなかったですね。
身長150数センチで、いつも背広を着ててまるで金八先生です。
でも、その熱血漢ぶりは青春ドラマの先生そのものでした。
秋の文化祭のとき、クラスで模擬店をやることになり教室の飾り付けをしていた時の事、
突然、違う科の3年生が数人やってきて「○○はどいつだ」というのです。
私が進み出ると、「お前が責任者か!」「飾り付けのアイデアを盗んだな!」とか言いがかりをつけるのです。
それはただの口実で、名指しで来たとこをみると、狙いは私だったのでしょう。
「生意気で鼻につく」存在だったのでしょうネ!
私がその数人に囲まれてる時に、教室の戸が開いて「お前たち何してるんだ!」とT先生の声
私と3年生の間に割って入り、私を背中でかばうようにして
「こいつは、俺の生徒だ!文句があるなら俺に言え!!」って言ったんです。
180cmくらいある生徒を見上げながら、少しも怯まず見栄を切った姿はカッコ良かったなー!
3年生はスゴスゴ退散。
先生が私に向かって「○○大丈夫か?」って、少し声が震えてたような?
「先生、それはこっちのセリフですよ。」心の中でつぶやきました。
それから、月日は流れて3年生の秋、学校で大事件が起きました。
3年生の生徒が、服装検査で注意された事に腹を立てて、鉄パイプで先生を殴ったんです。
そいつは野球部員で、そんなにワルじゃなかったんですけど・・・
まだその頃は、校内暴力などは無く、「荒れる学校」などという言葉もありませんでしたから
新聞(中央紙全部)に学校名が実名で載り、大変な騒ぎになりました!
しかも、そろそろ就職試験が始まろうとする時期です。
学校内外が大騒ぎしてるある日、家に一本の電話がありました。
私が電話に出ると、聞き覚えのある声が・・・・T先生です!
先生は3月の移動で、他校へ転任されていました。
先生はいきなり、「新聞記事に出てる生徒って、お前じゃないだろーな!!」って怒鳴るんです。
「先生、俺がいくらワルでも、先生を殴ったりしませんよ」て言うと「本当だな!本当だな!!」
「てっきり、お前じゃないかと思って心配したんだぞ!」「よかった!よかった!!」って安堵の声で言われるんです。
そして、「もうすぐ就職試験だろ、ちゃんと勉強してるのか?」「ちゃんと就職して、お父さんやお母さんを安心させてやるんだぞ。」って
厳しいけど、やさしい口調で言われるんです。
私みたいな、「不良生徒」の事をこんなに心配してくれて・・・・
胸がいっぱいになって、ただ「はい」って応えるのがやっとでした。
「そろそろ、ツッパリも卒業かなー?!」って思いました。
その後、就職試験にも無事合格し、皆と一緒に卒業することが出来ました。
「T先生、ありがとうございました」「俺も、いっぱしの親父になりました。先生はお元気ですか?」
俺、先生の生徒であったことを誇りに思ってます。